日本企業のサステナビリティ活動をリードする金融機関へ。挑戦を続けるMUFG 新CSuOの思い

三菱UFJフィナンシャル・グループ
CSuO 銭谷美幸

金融のチカラで
カーボンニュートラル実現を目指す

2021年4月に「世界が進むチカラになる。」を自社のパーパスに据え、環境・社会課題解決への貢献にコミットするサステナビリティ経営を進めるMUFG。同グループはいま、中期経営計画(2021〜23年度)で位置づけた「挑戦と変革の3年間」の、ラストイヤーを迎えている。

変革の中心の一つが、21年に掲げた邦銀初となる「MUFGカーボンニュートラル宣言」だ。なかでも、顧客とともに行う「2050年までに投融資ポートフォリオのGHG(温室効果ガス)排出量ネット・ゼロ」への取り組みは、意欲的と言えるだろう。金融グループとしてMUFGは、GHG排出量削減に積極的な企業を、ファイナンスを通じて支援しているのだ。

30年度までに累計35兆円という目標を掲げている環境・社会課題解決に向けた「サステナブルファイナンス」では、国内外の再生可能エネルギープロジェクト(洋上風力発電やメガソーラー等)などに対し積極的な支援を行い、19〜22年度上期までの3年半で、実行額累計19.4兆円に達する順調な進捗(しんちょく)を見せた。

同時に、多様な顧客ニーズに対応するために、他社との協働も推進している。銀行はGHG排出量算定・可視化クラウドサービスを提供する「ゼロボード」との業務提携を実施。ゼロボードは2,000社を超える企業のGHG排出量の可視化を支援。

また、昨年11月、東京海上日動火災保険との連携ではTCFDに基づく気候変動によるリスク・機会等の情報開示コンサルティングサービスも開始。今後「Codo Advisory」を加えた3社の提携により、脱炭素移行戦略の策定を支援する新たなサービス提供を予定している。

22年には、日本の地域特性・産業構造の特徴(素材・電力)や産業間の連関性等を踏まえたトランジションの必要性を、国際的に発信するため、英文で「MUFGトランジション白書」を発表。そのなかで、日本と欧米では、(1)エネルギー源(主なGHG排出源、既存インフラ、再生エネポテンシャル等)、(2)他国との接続性、(3)エネルギー安全保障、(4)社会政治的要因等の前提条件の違いから、ネットゼロに向けたトランジションのとらえ方が異なることを整理。そのうえで、日本そしてアジアにおいて必要なトランジション戦略を打ち出した。このような考えに基づき、GFANZ(グラスゴー金融同盟)や、NZBA(GFANZ傘下の銀行同盟)等でグローバルなルールメイクに向けた議論に積極的に貢献している。

また、COP27(国連気候変動枠組条約第27回締約国会議)にも参加、公正で秩序あるトランジションへの課題や、日本のカーボンニュートラルの道筋がアジアの青写真となる可能性について発信している。

三菱UFJフィナンシャル・グループ CSuO 銭谷美幸

キャリアのなかで得た
サステナビリティへの思い

もちろんMUFGの改革は現在進行形である。そして、より変化を加速する推進力として、22年10月に外部から招聘され、三菱UFJフィナンシャル・グループ/三菱UFJ銀行 チーフ・サステナビリティ・オフィサー(CSuO)に就任したのが、銭谷美幸だ。

銭谷は前職の第一生命ホールディングスのグローバルサステナビリティ推進と事業戦略の統合を推進した人物。国内外のSDGs/ESG関連での公職や講演も多い、サステナブルファイナンス推進の第一人者だ。

三菱UFJフィナンシャル・グループ CSuO 銭谷美幸

まず、銭谷のSDGsの視点がどのように養われたのかを聞いた。

「きっかけは一つではなく、自分の子ども時代からの体験の積み上げだと思っています。きっかけの一つを例にお話しすると、00年ごろ、私は再就職支援ベンチャーで働いていました。当時はCSR(企業の社会的責任)が叫ばれ始め、いまでは珍しくない大企業の希望退職募集が始まったころです。そこで行っていたのが、再就職時の雇用不安のサポート。ソーシャル・サステナビリティに対しての感覚が養われる経験の一つになりました」

その後、銭谷は地方銀行に職を転じ、経営戦略を担当。CSRをテーマにした投資信託を組成するなどのキャリアを重ね、企業再生の経験を経て、第一生命ホールディングスに身を転じている。

「当時はアベノミクス(12年〜)の大きな柱のひとつとして、機関投資家向けのスチュワードシップ・コードが広く知られるようになった時期です。これは株主が投資先企業に対して価値を高めるエンゲージメントを求める指針です。

それまで保険会社が投資先企業の事業戦略に口を出すことはほとんどありませんでしたが、そこからサステナビリティの思考を取り入れた戦略をつくっていただくようになりました。社会貢献ではなく、社会の変化をとらえ新たなニーズに応える事業戦略により収益を得、従業員にもきちんとした報酬を支払い、持続可能な企業になれるという視点でした」

一方で金融機関としてのリスクの視点は、グリーン・スワン報告書やIPCC(気候変動に関する政府間パネル、1988年〜)の気候に関するレポートを読むことで確信に変わった。

「そこには気候変動が一時的なものでなく、産業革命以降人間が経済活動した結果としての異常気象であると記載されていたのです。それと並行してESG投資やグリーンファイナンス(環境分野に特化した資金調達)の拡大もあり、環境と企業の関わりを、より重視するようになりました」

三菱UFJフィナンシャル・グループ

世の中が大きく変化すれば
産業構造も変化する

銭谷が就任したCSuOという役職はどのような役割を果たすのだろうか。

「CSuOはここ5年くらいで、グローバルに急速に広まった役職です。サステナビリティに対する社会の期待、ニーズを正しく測り、企業戦略を立案することが求められます。もはやサステナビリティの視点なくして企業成長が望めなくなってきている現状を、反映しているのだと思います。
もちろん企業、業界ごとにマテリアリティは異なります。金融機関としては、社会が求めるものをバイアスのない目で見極めることが求められていると考えています。なかでも、気候変動対応であるカーボンニュートラルはすべての企業に求められている課題であり、サプライチェーンにより相互連関性があるので、多くの企業と連携を図り、ファイナンスを提供し、トランジションをスムーズに進めたいと思っています」

三菱UFJフィナンシャル・グループ CSuO 銭谷美幸

最後に、CSuOとしての今後の方向性を聞いた。

「いまは世の中が大きくトランジション(変化)しているときです。念頭にあるのは、産業構造もまた大きく変わる可能性があるということです。予測は難しいですが、『歴史は繰り返さないが、韻を踏む』(作家マーク・トウェイン)といわれるように、過去に学べることもあると考えます。COP27でも注目されていましたが、気候変動に加え、生物多様性の問題が今後フィーチャーされるでしょう。それは単なる自然保護の問題ではなく気温上昇や化学物質の使用等の要因で生態系が変わり、食物連鎖も変化し、農作物の不作にもつながっている現実です。当然その先には食糧危機が待ち構えています。23年9月にはTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)の開示フレームワークが最終化されるので、そうした要素も考えたうえで、MUFGグループとしての戦略に落とし込んでいきたいと思っています」

MUFG SPECIAL MOVIE

「誰もがサステナブルしちゃう社会を、MUFGはつくります。」というコンセプトで制作された、MUFGのオリジナル動画。

銭谷美幸(ぜにや・みゆき)
三菱UFJフィナンシャル・グループCSuO兼三菱UFJ銀行CSuO。第一生命ホールディングスにてグローバルサステナビリティなどを推進、2022年より現職。環境・社会課題解決の取り組みを推進するとともに、国内外のSDGs/ESG関連の講演、寄稿等を通じ、サステナブルファイナンスの発展へ尽力。

MUFG(三菱UFJフィナンシャル・グループ)
https://www.mufg.jp

Promoted by MUFGtext by Ryoichi Shimizuphotographs by Shuji Gotoedit by Akio Takashiro