1997年の共同創業から組織をリードし、社員の働きやすさを追求し続けるなかで見いだした、ビジネスパーソンとストレスの付き合い方とは。
「楽観的な性格なので、ストレスがないんです」
現在抱えているストレスについて聞くと、こう即答した青野。しかし、過去には「死にたくなるほどのストレス」を受けていた。共同創業者の1人から引き継ぎ、2005年に社長に就任したことがきっかけだ。
「就任からの2年は、リーダーとして失敗の連続でした。当時の当社の離職率は28%。どれだけ採用しても4人に1人は辞めていく。僕にどれだけ人望がなかったのかと絶望しました。加えて、業績不振を挽回しようと1年の間に9社のM&Aを進めたところ、買収した複数の会社が大赤字を出し、全体の業績も傾き始めました。当時の売り上げは約30億〜40億円だったのに対し、損失額は10数億円。サイボウズも僕の人生も終わったなと思いました」
06年末には、役員の前でポロポロと涙を流しながら「僕に社長はできない。辞めさせてほしい」と告げた。しかし、社に残ってくれた社員の人生を放り投げて、自分だけ逃げるわけにはいかない。追いつめられるなかで読んだ実業家・松下幸之助の本が、青野に変化をもたらした。
「『真剣に志を立てよう』という一文に出合い、会社との向き合い方を振り返りました。それまではがんばっていればなんとかなる、と思っていたけれど、真剣に“命を懸けて”というほどの思いをもったことはなかった。これからは命懸けでやろうと心を決めました」
その途端、批判が気にならなくなった。
「生きるか死ぬかの覚悟で向こう岸まで泳いでいるときに、泳ぎ方を批判されても気にならないでしょう?」と笑う。
業績を上げるために全力を注ぐ。道が明確になれば、人は落ち着くという感覚を覚えた。まず取り組んだのは、退職を申し出た人から話を聞くこと。
「以前は、辞める側に落ち度があると考え、話を聞くこともなかった。しかし、社内を改善するという姿勢でいると、『問題が生じたら青野に言えばいい』と、社員が辞めずについてきてくれるようになったんです。今では“社員思いのいい社長”という文脈で取材されることが多いですが、全然そんなことはない。辞められると困るから、しかたなく要望を聞き始めただけです」
当時社内から噴き出したのは、「残業したくない」「週3日しか働きたくない」「出社したくない」「複業をしたい」(サイボウズでは副業を複業と表現)などの意見。
「昭和のモーレツサラリーマン」だった青野は耳を疑う。しかし、時短勤務や在宅勤務など、一つひとつ制度をつくって実現させていくと、社内の様子が変わっていった。
「『複業したい』という意見にも、当初は『その熱意をサイボウズに100%向けてくれたら』と思っていた。でも始めてみると、複業先の人脈をサイボウズでいかしたり、複業先に営業してサイボウズへの発注につなげたり、思いがけない効果が表れたんです。『会社が要望を受け入れてくれたから貢献しよう』と、社員に自主性が生まれた。アイデアを出し、ビジネスの幅を自ら広げていくメンバーが増えていきました」
社員の幸福度の高さを感じて満足する一方、業績自体は12年ごろまで横ばいが続いた。そしてサイボウズが主軸とするクラウド市場に、IT王者・Googleが参入。
青野は「もはやここまでか」とあきらめが頭をかすめたというが、社員はチャレンジを選んだ。アイデアを生み出し、その逆境で生まれたのが、いまやサイボウズを代表するサービスとなった業務改善プラットフォーム“kintone”だ。
「信頼と愛社精神があれば、社員はピンチのときにも解決のヒントを見いだしていくのだと感じ、心強かったです」
社員満足度の高い組織をつくり上げた青野。自身がストレスを感じたときは、書き出すことで「ストレスと距離を取る」ことを意識している。ただ感情を書くのではなく「起こった事象」に注目することが肝だ。
まず事実と解釈を分け、現実に対する理想を書く。腹が立つことがあったなら、怒りを引き起こした事実を書き出すと、実は大したことは起きておらず、自分が過剰に解釈していた可能性があると俯瞰できるように。さらにそれに対する理想を考えていくと、自分には複数の選択肢があり、未来は自分の手でつくれることに気づく。
するとストレスが軽減され、やるべきことが見えてくるという。
サイボウズではこの思考を組み込んだ「問題解決メソッド」を、入社3日目から学んでいく。業務や組織に不満や意見があれば、どんな事実、理想があり、そのために何をすべきかを提言させる。そうすることで必然的に「答えが見えているなら、あなたがその課題に取り組んでください」と“自分で動く”という選択になるという。
「これが自立の考え方であり、働き方の多様化を進めるなかで編み出してきた手法です。改革に乗り出した当初、社員からは不満ばかりで、『じゃあ、どうなると理想に近づくの?』と聞いても意見が出てこない。不満を改善と進歩につなげるには、代案を出すフレームワークが必要でした」
多様性を認め合うために、欠かせないのは一人ひとりの自立心だ。
「人によって自立度は異なり、分野の得手不得手があります。そこでサイボウズではシェアの文化を浸透させ、不得意な領域は、ほかの人が補ってくれる仕組みをつくっています。
例えば僕は仕事に対しては自立的だけれど、外見には無頓着。そこで、とある社員にコーディネイト企画を発案してもらいました。そんなふうに互いにサポートし合えれば、組織は強くなれるはずです」
もう一つ、青野がストレス軽減と睡眠の質向上によるパフォーマンス維持のために始めた習慣が、「Yakult(ヤクルト)1000」の愛飲だ。実は、この取材のために一定期間飲んだことで、飲用前との違いを体感。いまではパートナーの会社に立ち寄るヤクルトレディから「Yakult1000」を購入しているという。
それまでは午後になるとパフォーマンスが落ち、15分ほどの仮眠を取ることが多かったが、「飲み始めて3日で、日中に眠くなることがなくなりました。集中が途切れず、生産性は1.3倍増になったと実感しています。腸の調子も整ったのか、ランチタイムはいままで感じなかった空腹がはっきりとわかるようになった」と声を弾ませる。
これまで睡眠にまつわる悩みはなかったが、眠りが深くなったように感じ、パートナーからも「目覚めがすっきりしたようだね」と言われた。パフォーマンスにかかわってくる睡眠の質の高さは、経営者が求めるものだろう。
「1日1本で業務の生産性が上がり、健康面での幸福度も高まる。まさにビジネスパーソンのグッドパートナーですね」
Yakult1000
機能性表示食品(製品・成分評価) |
届出表示:本品には乳酸菌 シロタ株(L.カゼイ YIT 9029)が含まれるので、一時的な精神的ストレスがかかる状況でのストレスをやわらげ、また、睡眠の質(眠りの深さ、すっきりとした目覚め)を高める機能があります。さらに、乳酸菌 シロタ株(L.カゼイ YIT 9029)には、腸内環境を改善する機能があることが報告されています。
・食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを。
・本品は機能性表示食品です。特定保健用食品と異なり、消費者庁長官による個別審査を受けたものではありません。
・本品は、疾病の診断、治療、予防を目的としたものではありません。
ヤクルト本社
https://www.yakult.co.jp/
あおの・よしひさ◎サイボウズ代表取締役社長。大阪大学工学部卒業後、松下電工(現パナソニック)に入社。1997年に愛媛県松山市でサイボウズを共同創業し、2005年から現職。複業可などの働き方改革を推進しつつ、自身も3度の育児休暇を取得。