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2023.03.27

「ひとりでも多くの患者を救済したい」 強い信念がゲノム・ビジネスを加速させる

遺伝子の配列を精密に編集できる「ゲノム編集」は、打つ手のない遺伝性・難治性・希少疾患治療に光明を与える先端技術となるのか。グローバルで加速するゲノム・ビジネスのまっただなかで、国境を越えて手を組んだ2つの企業が描く未来とは。



従来の医療では治療が困難な遺伝子変異による遺伝性疾患やがんなどの難治性疾患、さらには、薬の開発が進みにくい希少疾患への治療法として、グローバルで研究が進むゲノム編集技術。疾病のもととなる遺伝子配列を直接改変することで、原因の根絶を目指す試みだ。しかし意図した遺伝子配列以外を選択・編集してしまう(オフターゲット効果)可能性が大きく、実用化には程遠いとされていた。

その流れを変えたのが、特定の遺伝子配列を高精度で選択可能にした「クリスパー・キャスナイン」(2020年ノーベル化学賞受賞)の登場だ。この技術は現在、世界中の研究室で頻繁に使用されている。それでもなお、意図した特定の遺伝子配列以外を選択してしまう「オフターゲット効果」は、完全には避けられない。ゲノム編集の研究開発は、再び暗礁に乗り上げてしまうように見えた。

今回はそうしたゲノム・ビジネスのまっただなかで、未来のため、国境を越えて手を組んだ2つの企業、遺伝子医薬開発を行う日本のバイオ製薬企業アンジェスと、遺伝子配列選択の精度を高める技術開発を行う米国の遺伝子編集企業・エメンドの各トップに、ゲノム・ビジネスがもたらす希望について聞いた。

ゲノム編集技術の限界を超えられるのか

「ゲノム編集技術の研究が、世界中で進められていますが、その技術はいまだ医療の現場では、実用化されていません」

そう前置きしたのは、アンジェス代表 山田英だ。もともとは研究者だったが、三菱ケミカルで肝細胞増殖因子の事業開発に従事したことをきっかけにビジネスの重要性を痛感したという。「どんな研究も事業化できなければ終わってしまう」。アンジェスの社長に就任したのはそんな思いからだった。

「遺伝子治療には、第1世代のプラスミドDNA技術、第2世代のウイルスベクター技術がありました。それらは患者の遺伝子配列に新たな配列をプラスして疾病を治療するという挑戦です。アンジェスは、第1世代の製品開発を行っていましたが、安全性の問題が潜む第2世代の製品開発への移行には躊躇していました。そんななかで出合ったのが、ゲノム編集技術です。大きな希望を感じたのですが、同時にクリスパー・キャスナインでも解決できないオフターゲット効果の可能性を拭うことができなければ、新たな進展は望めないとも思いました」

誤って意図せぬ遺伝子を改変してしまい、異形のクローンを生むホラーストーリーの可能性を完全に排除するための、山田の模索が始まった。

エメンド社が提示したブレイクスルー

模索の果てに山田は、米国の遺伝子編集企業・エメンドとの出合いを果たす。同社のCEOのデイビッド・バラムは、ノーベル化学賞受賞歴のあるアダ・ヨナス教授のもとで研究を重ねてきた。バラムは研究者であるだけではなく、アントレプレナーとして数社を立ち上げた実績も有していた。「問題を見つけ出し、技術的に正しいソリューションを提供する、そのために会社を設立する。私にとってアントレプレナーであることは、ごく自然なことでした」

私にとってアントレプレナーであることは、 ごく自然なこと。 デイビッド・バラム

私にとってアントレプレナーであることは、ごく自然なこと。エメンドバイオ CEO デイビッド・バラム

そんなバラムが立ち上げたエメンドは、武田薬品工業をはじめ数多くの大企業から続々と支援を受けて成長してきた。山田は、最初は投資先のひとつとして同社にアプローチしたという。

「2018年にイスラエルでデイビッドと出会いました。そしてエメンド独自の『新たなヌクレアーゼ(遺伝子切断酵素)発見プラットフォーム』によって、ゲノム編集の障壁となっているオフターゲット効果を回避するアイデアを聞いて、大きな衝撃を受けました。私はその方法こそがゲノム編集技術のブレイクスルーになると直感しました」

バラムもまた、ゲノム・ビジネスには強力なライバルが多いことを常々感じており、米国で臨床開発を進めるためのノウハウを求めていたタイミングだった。目指すゴールは同じだ。エメンドは先端ゲノム編集技術をもとにした遺伝子治療用製品の開発力を提供する。一方アンジェスは20年来の遺伝子治療用製品の開発経験で培った国際的規制を踏まえた前臨床、CMC(化学製造管理)、臨床開発のノウハウ、およびGMP(医薬品製造・品質管理基準)のノウハウなど、商業化に必要な知見全般を提供する。しかし、2社が手を組んだ理由はただそれだけではなかった。

限界を迎えていたゲノム編集技術に、 ブレイクスルーが起きる。 山田 英

限界を迎えていたゲノム編集技術に、ブレイクスルーが起きる。(代表取締役 社長 山田 英)


先端技術をより多くの人に届けたい


「同じ研究畑出身ということでデイビッドに親近感はありましたが、対話を重ねるうちに、“革新的な技術を開発し、より多くの人々がアクセスできる状態にしたい”というビジョンが、私が長年考えていたことと一致していたことに驚きました」

山田がそうした思いを胸に秘めていた背景には、希少疾患を抱えた小児患者の記憶があった。

「治療に必要な薬が欧米では手に入るのに、日本では未承認で手に入れることができませんでした。お子さんの両親は米国経由で薬を購入するために、街頭募金で多額の寄付を集めざるをえない状況だったのです。これはおかしい。たとえ国内に数人の患者しかいないとしても、困っているのなら助けたい。私はすぐにその薬の日本への導入を決意しました。

『こんな希少疾患に対してよくやってくれました』と感謝する親御さんの姿。その光景はいまも私のパワーの源です」

バラムも共感しつつ、自らの体験を語り出す。

「遺伝子疾患がある赤ちゃんの父親が、国境を越えて突然、オフィスに現れたのです。彼は『子どもの病気を治療ではなく、治癒できる方法を開発してほしい』と訴えてきました。そこから私は、一生続ける治療ではなく、一度受ければ二度と発症しない“治癒”を、ゲノム編集で実現すべきだと考えるようになったのです」

アンジェスとエメンドは、20年に合流した。そこには企業同士の利害関係だけでなく、『ひとりでも多くの患者を救済する技術を生み出す』というミッションの深い共鳴がある。

「私はデイビッドとともに戦いたい」

そう宣言する山田に、バラムも呼応する。「私も山田さんと戦いたい。あとはプランを実行するのみですね」

山田はほほ笑みながらバラムを見つめ、力強くうなずいた。

アンジェス
https://www.anges.co.jp



デイビッド・バラム◎2009年にノーベル賞を受賞したアダ・ヨナスのもとで研究を重ね、高精度なゲノム編集技術をもつ米国企業・エメンド(EmendoBio Inc.)を創設、最高経営責任者に就任。

やまだ・えい◎三菱化成工業(現・三菱ケミカル)入社。米国ジェネンテック社などとの事業開発にかかわる。タカラバイオ取締役を経て、2002年アンジェス社長就任。

Promoted by アンジェス / text by Ryoichi Shimizu / photographs by Shuji Goto / edit by Akio Takashiro

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