Forbes BrandVoice!! とは BrandVoiceは、企業や団体のコンテンツマーケティングを行うForbes JAPANの企画広告です。

2022.11.17

Future of Cities──人間中心でまちをリデザインし、新たなスマートシティを展望する

2022年11月2日、 『Forbes JAPAN 9月号別冊 Future of Cities〜新スマートシティ宣言』の出版を記念したトークセッションがForbes JAPAN主催、デロイト トーマツ グループの協賛により開催された。登壇したのは、スマートシティ事例で注目を集める「前橋市」の取り組みをリードした株式会社ジンズホールディングス代表の田中仁、日本通信株式会社代表の福田尚久、デロイト トーマツ グループCSOの前田善宏。Forbes JAPAN Web編集長の谷本有香がモデレーターを務める中、3人はスマートシティの現在地からプロジェクトを成功に導くためのヒントを論じ、都市の未来を描く思いを熱く語った。



世界的に都市化が進み、日本が人口減少社会に突入する中、ICTなどテクノロジーを最大限に活用し、最適化したまちづくりを進めていかなければならない。スマートシティへの期待は高まる一方だ。しかし、世界のスマートシティランキングを見れば、日本の都市のトップである東京すら84位にとどまっており、未来都市に向けた取り組みはさらなる加速が期待されている。

別冊『Future of Cities』は「人間中心のまちづくり」に重点を置いたスマートシティの最新動向、先進的なまちづくりを進める都市のケーススタディを紹介した。そこで注目されるのが、デジタル田園都市国家構想推進交付金(TYPE3)が採択され、日本におけるスマートシティのフロントランナーとして躍進する前橋市である。

田中、福田は仕掛け人としてプロジェクトをリードし、民間の力をドライバーとして進むモデルを創り上げてきた。プロジェクトを支援する前田は前橋市×スマートシティにおけるふたりの稀有な存在感を語る。

「私はプロジェクトマネジメント、企画実現の支援に携わってきましたが、前橋市のまちづくりは田中さんという起業家と、福田さんという経営者が起点になって進んできたのが大きな特長です。行政のみが主導するのではなく、民間の力をドライバーとして、街のバリューを高める取り組みが進んできました」

起業家が仕掛け、デジタルに精通する経営者が起点となり、前橋市には多くのクリエイティブ人材が集い、注目すべきアクションが次々に生まれてきた。取り組みを語るセッションでは、スマートシティの現在、そして未来まで照射していく。


田中 仁(ジンズホールディングス 代表取締役 CEO)

求められているのは「人間中心のまちづくり」


今、スマートシティの取り組みが求められているのはなぜか。セッションのTopic#1は「スマートシティの現在地」と題し、未来都市に求められる要素を語り合った。福田は従来のスマートシティ観を整理し、次のように語る。

「私がスマートシティの第1号案件として把握しているのは、フランスのパリです。街灯の電球が切れているかどうかを作業員の目視で行っていたところ、センサーを取り付けて交換のタイミングを速やかに把握できるようにしたもの。つまり、IoTを活用して都市運営のコスト削減を図ったのがスマートシティの始まりです。

こうした、従来のスマートシティが目指してきた『コスト削減』という観点では、日本の各都市は後れを取ってきたかもしれません。しかし、前橋市の事例には、新たなスマートシティで日本が先頭に立てるという期待があります」(福田)

前田は「スマートシティでは次世代交通システム「MaaS」、高速大容量通信インフラの「5G」など、先端テクノロジーが注目されがち」と解説した。そこで、前橋市が目指すのが「人間中心のまちづくり」である。

「前橋市が定義するスマートシティとは、政府がデジタル社会の実現に向けて掲げた『誰一人取り残されない』に通ずるものです。人が技術に寄り添うのではなく、技術が人に寄り添う街を目指したい。人間らしい生活、つまり住む人のWell-beingがもたらされる世界観を創っていきたいと考えています」(田中)

コストや効率性に重きを置いた運営から、人間中心のまちづくりへ――世界の都市がそれぞれのスマートシティ像を模索して試行錯誤する。それがスマートシティの現在地だ。ここで福田は、日本ならではの優位性を指摘する。

「戸籍と住民票があること――日本に住んでいるとごく当たり前のように感じますが、アメリカ大統領選挙で『誰が投票権を持っているのか』という課題が可視化されたように、世界的に見ると稀有な制度です。こうした基盤があるからこそ、一人ひとりのデータを有機的に活用した、利便性の高い都市が視野に入ってくるのです。こうした優位性を生かせば、人を中心に置いたスマートシティを目指す都市間レースにおいて、日本はフロントランナーになり得るでしょう。特に前橋市は、そのモデル地域として先頭に立っています」(福田)


福田尚久(日本通信 代表取締役社長)

Well-beingに資するデータ連携のかたち


セッションが熱を帯びる中、Topic#2は「スマートシティ成功のためのヒントを探る」と題し、新たな都市の実現に向けた現在進行形のアクションを話し合う。田中が乗り越えた障壁は、官民が連携して一体となる「推進主体」づくりだったという。目指すべきビジョンを共有し、官民を含めたあらゆるステークホルダーが一体となって歩む前橋市。そこには、スマートシティプロジェクトを離陸させ、加速させていくための要諦がある。

「首長が替わればまちづくりの進路も一変する、といったケースが少なくありません。私たちは議論を重ねて前橋ビジョン『めぶく。』を定め、まちづくりを一貫して進めるよう、調整を重ねてきました。市長をはじめとして、行政のオープンな理解もあります。そして、民間の仲間たちも主義主張は違ってもまちづくりはノーサイドでいこう、という思いを共有できています」(田中)

スマートシティを目指すまちづくりの施策として、前橋市は「めぶくID」という独自の地域IDを立ち上げた。住民が安心・安全に交通、買い物などのサービスを利用できるIDとなる。都市には行政が保有する医療、教育などのデータ、民間企業が保有する交通、購買などの膨大なデータが集積している。「めぶくID」はこれらのデータを安心・安全に連携させ、住民の利便性や、Well-beingに資することを目指すものだ。

「前橋市では持病やアレルギーの情報、ワクチン接種状況などを横串で通し、緊急時に医療機関と共有できる仕組みを整えています。救急車が駆けつけ、現場の医療スタッフが顔認証を行うことで、急患のさまざまな医療データを把握できるのです。これはあくまで、命を救うため、住民のメリットをもたらすためのデータ連携、活用なのです」(福田)

「ICTの進展により、都市には無限と言っていいほどのデータがあります。それらを個別ではなく、連関して分析しなければ住民の利便性にはつながりません。たとえば、個人が持っているデータでも交通系IC、クレジットカード、マイナンバーなどのIDがバラバラになってしまっているのです。データプライバシーを担保するという大前提があってこそですが、有機的にデータを連携し、利便性に資する前橋市の事例は、先進的なケーススタディとして共有されるべきでしょう」(前田)


前田善宏(デロイト トーマツ グループ CSO)

スマートシティの現在地を見定め、成功の道筋を探ってきたセッションはTopic#3「スマートシティはどうあるべきか<未来>」に移り、各地でまちづくりに臨む有志への熱き思いが語られた。田中は前橋市の先駆事例からのヒントに言及し、福田はまちづくりを次代への橋渡しと捉え、想いとミッションの継承を強くメッセージし、前田は「社会実装」をキーワードに、多様な人材が加わるまちづくりへの期待を語った。

「前橋で取り組んで思うのは、0を1にするエネルギーを持った起業家の力は大きい、ということです。そして、起業家には自分以外にエネルギーを注ぐ利他の志が必須です。このマインド、ビジョンを民間、行政で共有できれば、力強く進める主体ができあがるでしょう。まちづくりははまると抜けられない沼です。だけど、自分以外にエネルギーを使うことって、こんなに面白いものなのか――そう感じる日々で。熱く、ワクワクしたい人生を送りたい方は、ぜひビジネスとまちづくりを関連づけ、取り組んでいただきたいですね」(田中)

「私には孫が4人いますが、現在の社会をそのまま孫の代に引き継ぐのは申し訳ない、という思いでいっぱいです。なんとかして変え、新たな世代にバトンを渡さなければ。変革のためには、徹底した破壊も求められるでしょう。その先には、新たなもの、仕組みがどんどん芽吹いていくのです。私の思いに共鳴してくださる方は、全国各地にいるでしょう。私は前橋市のアーキテクトとしてプロジェクトに臨んでいますが、新たな社会に変え、次代に渡すため、同じ志を持って、各地で取り組んでいきましょう」(福田)

「自分が生まれ育った街、住んだり仕事をしていたりして、関係のある街を好きでい続けてほしいと思います。そして、その街がどうあるべきか、何を改善すべきかに思いを巡らせてほしい。その先には、必ず一歩が踏み出されるはず。企画したり、ビジョンを描いたりする人がいれば、プロジェクトを形にして、社会に実装していく人もいます。一歩を踏み出すことで、同じ夢、考えを持った人が輪に加わってくるでしょう」(前田)

なぜ、私たちはスマートシティを目指し続けるのか。3人がセッションで語った前橋市の施策、ビジョンには未来都市「Future of Cities」のヒントがある。住まう人の Well-beingに資するイノベーションと、アイデアは今後も日本の各地で生まれ、着実に都市に実装されていくだろう。

『Forbes JAPAN 9月号別冊 Future of Cities〜新スマートシティ宣言』の紹介はこちら

Promoted by デロイト トーマツ グループ / edit by 佐々木正孝