一方で、200年余の伝統を持ちながら、常に革新的なものづくりで時代をリードしていくシャンパーニュ・メゾン「ローラン・ペリエ」。独創的な製法でフラッグシップ「ローラン・ペリエ グラン シエクル」を生み出し、かつて100位にも届かなかった小規模なメゾンから、世界トップクラスのメゾンへと成長させた屈指のシャンパーニュ・メゾンである。
21世紀の京都府宇治市と20世紀のフランス・シャンパーニュ地方、時空を超えて出会った両者がいま共鳴する、チャレンジ・スピリッツとは?
慣習や既存の概念を当たり前としない“非常識”へのチャレンジ
溶接される鉄から火花が散る暗い金属加工場という、いままでのステレオタイプなイメージを一新し、ポップなピンク色の機器が置かれた室内でロボットが働く無人の空間。工場というよりラボのような雰囲気を漂わせるのは京都府宇治市に拠を置くHILLTOPだ。
山本勇輝氏は祖父が創業した金属加工業を三代目として事業を継承したものの、安価な商品を大量生産するビジネスモデルに閉塞感を覚えたことかから、日本のものづくりへの信頼度を武器に単身渡米。見本市に出展するなどしてディズニーやNASAなどの大口クライアントの発注を得ることに成功した。同時に、熟練した職人技に頼りすぎていた社内の慣習を一新せんと、職人の知見やスキルをデータ化するプログラム開発により24時間無人稼働の生産システムを実現させた、いま話題の人である。
「ふくらむ味わいと長い余韻が印象的ですね」と、「ローラン・ペリエ グラン シエクル」の印象を語る山本氏。
「極端な話、入社したばかりの社員でも、20年勤務したベテランと同じものがすぐ作れるシステムを構築しました。それは、業績の改善という点で大きな効果をあげましたが、同時に、社員のモチベーション低下にもつながってしまいます。そこで、(代表取締役社長である)私が取り組んでいるのは、AIによるオートメーション化が進んでなお、人でしかできないこと(仕事)を作り続けていくこと。それは、人には常にクリエイティブな領域が残されていると信じているからです」
一般に、日本の製造業は仕事が丁寧で高品質と言われる。これは、生真面目な日本の職人気質に依るところも大きいだろう。しかし、その職人の手技に頼らないという、“非常識”ともいえる大胆なシステム改革により、HILLTOPは高クオリティを担保しながら、コストを抑え、納期を短縮化することができた。
「金属加工業における製造は、職人の手技に頼っていた時代もありました。ですが時代が進んだ現在、人の想像力や感性をもってしか成し得ないモノやコトは他にもあるはず。時代の変化を先んじて読み、チャレンジし続けていくことが大切だと考えています」
シャルドネ約55%、ピノ・ノワール約45%をアッサンブラ―ジュ(ブレンド)した「ローラン・ペリエ グラン シエクル」750ml 28,500円(税抜・カタログ価格)/サントリー
一方で、「ローラン・ペリエ」もまた“非常識”に挑戦してきたシャンパーニュ・メゾンである。創業は1816年と、200年余りの歴史をもつが、転機が訪れたのは1950年代に入ってから。「プレステージ・シャンパーニュは単一ヴィンテージ(同じ年に収穫されたブドウのみで醸造)であるべき」という考えが定説であり、慣習ともなっていた時代に、前当主のベルナール ドゥ ノナンクールが、特筆すべき複数のヴィンテージをブレンドし、それもさまざまなクリュ(畑)から厳選した白ブドウと黒ブドウをブレンドするという、当時の常識をくつがえすようなシャンパーニュづくりに挑んだのだ。
そうして誕生した「ローラン・ペリエ グラン シエクル」は、力強い骨格と洗練された繊細さ、放たれる華やかな香りと長い余韻という、一見相反する要素を絶妙なバランスで同時に含むハーモニーの傑作。異なるヴィンテージのワインをブレンドさせる“マルチ・ヴィンテージ”は、「ローラン・ペリエ」の長い歴史のなかでもゲームチェンジャーとなる、革新的な技法でもあった。
「皆が当然だと思っていた常識を疑い、“非常識”に挑むことで新たな手法を生み出すことの難しさ、タフさはよく理解できます」と山本氏。人は今いる場所を心地よいと感じ、日々の繰り返しに安心感を覚えるが、そのルーティンを打ち壊すことが新機軸の獲得につながることもある。日本とフランス、20世紀と21世紀、シャンパーニュと金属加工業……と、一見かけ離れているように見える両者の間には、“非常識”へのチャレンジという果敢なイノベーションで接点が生まれていた。
日々のチャレンジの連続が、振り返ればいつか伝統となる
「事業を継承した際、父からは『今あるものを無理に守ろうとするのはやめてくれ』と言われました。よく、伝統と革新という言葉は対極にあるものとして語られがちですが、私の認識のなかではほぼ同義です。というのは、どんな業界にあっても、昔のやり方をただ踏襲するだけでは、きっと廃れてしまうと考えているからです。日々何かしらの挑戦をし続け、アップデートし続けていったある日、振り向いたら後ろに‟伝統“という道ができていた……伝統と革新とはそのような関係性にあるものではないでしょうか。
自分たちのものづくりも、『イノベーションを興すぞ』と意気込んでいるだけではなにも起きませんよね。イノベーションとはあくまで課題の解決法ですから。日頃から、慣習だから、常識だからとあきらめていることをまず疑ってみる。そのうえで、あえて非常識に挑戦することにイノベーションの種が落ちているのではないでしょうか」
ローラン・ペリエの200年余という長い歴史のなかでも、職人技の継承だけに努めていたら現在の世界第5位のシャンパーニュ・メゾンという隆盛は望めなかったであろう。1年毎にブドウを栽培し、そのブドウからワインをつくる以上、どうしても良作・不作の年(ヴィンテージ)の違いが生まれてしまうが、その慣習・常識を当然のものとせず、複数のヴィンテージをブレンドすることから、常にパーフェクトのクオリティを目指すマルチ・ヴィンテージは生まれた。その200年余の伝統は山本氏の言うところの「日々の挑戦」の継続であり、「ある日、振り向いたら後ろに出来ていた道」なのであろう。
現在はEVに関連する新規事業も立ち上げ、非常に多忙な山本氏だが、オフの時間には京都や東京でフランス料理店をめぐるのが大好きだとか。
「シャンパ―ニュは日ごろ、会食の前に乾杯の1杯として飲むことが多いんですが、先日『ローラン・ペリエ グラン シエクル』をじっくり味わう機会があり、家でひとりで、もしくは家族とゆったり飲むのもよいなぁと、改めてその魅力に気づきました。実はいま、自宅の引っ越しを考えていて、新居のプランをいろいろ考えているんです。やっぱりセラーは大きいのが欲しいなとか、ホームバー的なスペースもいいな、とか。セラーにはやはり『ローラン・ペリエ グラン シエクル』を入れたいですね。メゾンのチャレンジ精神により培われた200年余の伝統に、私もおおいに励まされ、背中を押されるような気持ちになります」
現状に満足することなく、常に今の、その先へ。未来を見据える山本勇輝氏と「ローラン・ペリエ」──挑戦者のスピリッツは時空を超えて出会い、共鳴し続ける。
◎山本勇輝 HILLTOP代表取締役社長。1980年京都府城陽市生まれ。大学卒業後、広告代理店勤務を経て、2006年アルミ加工メーカーであるHILLTOPに入社。2022年7月より同社代表取締役社長に就任。
至極のヴィンテージをかけ合わせる、という非常識。
Laurent-Perrier GRAND SIÈCLE/ローラン・ペリエ グラン シエクル
グランクリュ(特級畑)の中から11の村、なかでも最良の区画から選びぬいたブドウが奏でるハーモニーの芸術品。750mlで10年以上熟成。グラン シエクル(偉大な世紀)という名前は、当時の仏大統領シャルル・ド・ゴールが命名した。
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