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2022.10.18 16:00

DE&Iと健康経営の推進力となるフェムテック。なぜ総合商社が女性特有の健康課題に取り組むのか

女性特有の健康課題にテクノロジーを用いて解決を目指す「フェムテック(Femtech)」。2010年代に欧州で使われ始めた言葉は、世界的に急拡大を見せる市場として注目を集めている。累計ダウンロード数1,700万を超える生理日管理アプリ「ルナルナ」も、日本で生まれたフェムテックプロダクトの一つだ。

2021年7月、総合商社の丸紅、「ルナルナ」を運営するエムティーアイ、オンライン診療プラットフォームを運営するカラダメディカが業務提携し、女性の健康課題を会社として支援する法人向けプログラム「ルナルナ オフィス」がスタートした。

男性社会と見られている総合商社が、なぜフェムテック分野に積極的に取り組み始めたのか。同社ライフスタイル本部フェムテック事業チーム(兼)経営企画部国内事業推進課の野村優美に聞いた。


女性特有の健康課題に、なぜ企業が取り組む必要があるのか。その前提としては、企業が全従業員の健康課題の改善に積極的に取り組むことで、中長期的に見た業績向上、株価向上につながる、いわゆる「健康経営」への視座がある。

そのうえで女性への取り組みが特に注目されるのは、女性管理職の割合が諸外国に比べて低い日本において、女性の健康課題を改善することがDE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン/多様性、公平性、包括性)を促進し、国際社会における競争力の強化、企業価値の創出といった企業課題を解決する鍵になると捉えられるからだ。

日本企業の意思決定層の多数を男性が占めている。野村は、同質性の高い集団から生み出されるアイデアには限界があり、非連続な変化を求められる現代社会において国際的な競争力の低下をもたらすと指摘。多様な課題にスピーディーに対応できる企業風土を育てる手段の一つとして、DE&Iの促進は喫緊の課題だと話す。

「DE&Iが推進できない企業は成長が見込めない、国際的にそう判断される事態を行政も重く捉えています。経済産業省の試算では、フェムテックの活用によって働く女性の活躍が推進されれば、2025年に2兆円もの大きな経済効果を生むと見込まれています」

女性は生物学的に、自分の意思ではコントロールできない月経や更年期による不調、さらに妊娠など、特に労働生産年齢において男性よりも健康リスクを抱えやすい傾向にある。男性中心の組織では、女性特有の健康課題・疾患への理解度が低く、組織制度も男性中心に設計される傾向があり、女性が長く就労しにくい環境にあることが多い。

「実際に妊活での離職、月経によるパフォーマンス低下や更年期の不調を理由とした昇進辞退は少なくない。企業としても、貴重な人財が流出する損失は小さくありません。女性特有の健康課題への認識不足が、企業の成長を阻害し、企業の価値を最大限に発揮できていない現状を生んでいると言えます」

これまで、女性特有の健康課題は自己解決が求められることが多かった。働き続けられない女性が退職を選択し、人財の流出によって企業の成長にブレーキがかかる。加えて上層部の男性割合が多いことで集団の同質性が高まり、多様な社会問題への対応力がさらに低下する――。フェムテックは、そんな日本企業が陥りがちな悪循環を断ち切る手段になり得るのだ。

異例のスピードで事業化された背景


日本ではまだ黎明期ともいえるフェムテック事業。野村は海外企業との社外研修などを経て、さらなる企業の成長のためには組織の変化が必要だと感じ始めていたという。

「自分の中でも総合商社=男性社会が当たり前になっていましたが、世界的な企業が変わろうとしている中で、競争力を維持するには当社も変わっていく必要があると感じました。経営企画部に異動し、自分だからできる企画について考えたとき、フェムテック事業の創出は私が会社に貢献できるテーマの一つになると気づきました」

野村がフェムテック事業に取り組み、横断型のバーチャルチームが作られたのは2020年秋。翌21年7月にはエムティーアイ、カラダメディカと業務提携し、1年後には3社共同でLIFEM(ライフェム)が設立された。大企業としては異例ともいえるスピード感をもった動きの背景には、同社が変革を求めていたことが挙げられる。


丸紅・フェムテック事業チーム (兼)経営企画部国内事業推進課の野村優美

「当初は社内でどう受け止められるのか、不安もありました。会議室で『生理』と口にしていいのか、というような雰囲気もありましたが、会社としても健康経営、女性活躍推進という大きな潮流に取り組もうと改めて注力し始めていたので、経営陣からも大きな後押しがあったのです」

丸紅では同時期に女性新入社員の採用比率の引き上げを宣言し、その後「女性活躍推進2.0」戦略を打ち出すなど、全社的にDE&I促進に取り組んでいることもフェムテック事業の大きな推進力となった。

働く女性に喜ばれる、すき間時間に手軽に受診ができるオンライン診療


21年7月、3社の業務提携で始まったプロジェクトが、働く女性が向き合う健康課題の改善を総合的に支援するサービス「ルナルナ オフィス」だ。法人全体のリテラシーを高める医師監修のセミナー実施、医療機関と連携したオンライン診療・相談プログラムの実施、健康状態の改善に繋がる薬剤の処方、それらによるQOL・生産性などの変化を分析・検証し企業へフィードバックする投資対効果検証、という4つのサポートが展開される。

「セミナーによって、男性も、女性自身も医学的な観点で女性の身体の仕組みを正しく理解することができます。また、オンライン診療は、体調に問題がない限り5分程度で終わるのでランチタイムに受診でき、薬の処方・配送までオンラインで完結可能です。病院に行く時間がとれない忙しい女性にも快適さを感じていただいていると思います」

「ルナルナ オフィス」では月経やPMS、妊活・不妊など女性のさまざまな健康課題を網羅しているが、中でも反響が大きいのが、更年期症状へのサポートだ。前述したフェムテック経済試算においても、経済効果として見込まれている2兆円のうち1.3兆円は更年期世代が担う。更年期を理由に女性が昇進を辞退するケースは多く、この課題が改善されるインパクトは大きい。

「更年期症状は、妊娠や月経と比較してもよりタブー視が強く、ケアされてこなかった分野です。実際に利用者からは、『更年期に関する悩みを声にしていいと気づけた』『正しい知識や対策を知ることで安心して働けるようになり、この知見を若い世代にも伝えたい』という反応が多い。実際、更年期症状の緩和により『新しいプロジェクトにチャレンジしたい』と意欲増加したケースも見られます。これまで誰にも言えずに我慢していた女性社員の支援につながっていると実感しています」

これらの取り組みは、女性のためだけの制度と捉えられがちだが、実際には男性社員も利用しており、反響も大きい。


オンライン診療の様子

「セミナーは性別や年齢、役職にかかわらず全員が対象ですし、『妊活相談プログラム』では、男性社員も対象となっています。女性社員の不調にどう対応するべきか、何に困っているのかわからずに悩む男性管理職の相談や、ご家族の体調不良への理解が深まったという声も。不妊や妊活などは男性も関わる領域。女性にも男性にも役立つようなサービス設計を進めています」

女性特有の健康課題への理解は、男性へもバリューが還元される


日本ではまだ始まったばかりといえる、企業におけるフェムテックの活用。実際の運用においては、サービスの安全性や信頼性への課題が挙げられる。

「健康に関わる分、安全性が確認できなければ企業はなかなか導入できない。その点『ルナルナ オフィス』は総合商社の丸紅とパートナー企業がそれぞれ構築してきたスキームやネットワークを使い、サービスとしても現役医師や大学病院が監修することで高い信頼性を確保。課題をクリアしていると認識しています」

加えて、女性の健康課題への企業の理解の普及、特に男性社員への啓発がハードルとして立ちふさがる。総合商社の丸紅がフェムテックに本腰を入れたインパクトは強く、旗振り役としての意義は大きいが、いまだ女性特有の健康課題は「個人の問題」と捉える企業が多いのが実情だ。

「これまで個人の課題として捉えられてきたものを企業が組織の経営課題として取り組む社会に変えていきたい。どうして女性だけ?と言われてしまうこともあるのですが、『女性特有の健康課題にフォーカスしているサービス』であり、『女性のためだけのサービス』とは捉えていません。我々は、女性の周りで働く社員も含めた全員がさらに働きやすくなるためのサービスだと考えています。結果的に競争力の強化、企業価値の向上にもつながります」

野村が「周りの男性の理解がないと、フェムテックは絶対に進まない」と語るように、女性だけでなく男性の協力も必要不可欠だ。周囲の従業員の健康に配慮する企業風土ができれば、男性社員も自ずと自身の健康状態と向き合いやすくなる。

「企業として取り組むことで、DE&Iの推進にもなります。企業が当たり前に女性特有の健康課題もケアするような世の中を、多くの企業のみなさまと一緒に作っていきたいです」



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