「Viva Insights/Learning/Topics/Connections/Goals」に加え、22年6月には「Sales」、7月には「Engage」という新しいモジュールを追加し、Vivaの拡大に意欲的だ。なぜ今EXなのか、同社でViva製品マーケティングを担当する加藤友哉氏が日本企業の「働き方」の課題を語った。
近年、HRの領域において議論が始まった従業員エクスペリエンス(EX)。従業員が企業で働くうえでのすべての経験を指し、キャリアパスやスキル習得、福利厚生や評価などさまざまな要素が含まれている。EX向上が叫ばれる背景として、人材の流動化、労働人口の減少、働き方改革が挙げられるが、加藤はもう一つの要因を挙げる。
「私が最大のモメンタムだと感じているのが、2018年に国際標準化機構が発表したISO30414(人的資本に関する情報開示のガイドライン)です。企業価値において人的資本が重視されることが国際的に認められ、ガイドラインが制定された意義は大きい」
ISO30414の発表は約5年前。遅ればせながらいま改めてISO30414の意義が見直される要因に、加藤はコロナ禍で必然的に推進されたDXを挙げる。
「コロナ禍で多くの企業がさまざまなデジタルツールやリモートワークを導入し、DXはもはや目標でなく、定着しつつあるものになりました。それにより、人事データを含めて今までは存在しなかったデータが蓄積されるようになったのです。そういったデジタル基盤が整ったことで、人的資本に関しても、働き方とパフォーマンスの関連性などこれまで感覚値でしかなかった事象が可視化され、数値による説得力が持てるようになった。それが、EX市場が醸成されつつある一番の背景ではないでしょうか」
もう一つ、EXの重要性が広がった背景として加藤が挙げるのが、ウェルビーイングの広がりだ。コロナ禍でリモートワークが普及したことで、働き方を見直す動きが加速。Microsoftが31カ国の3万1000人を対象に行ったリモートワークに関する調査「2022 Work Trend Index」によると、従業員の53%が「仕事よりも自身の健康や持続可能な幸福(ウェルビーイング)を優先する」と回答し、42%の従業員が企業に望むこととして「メンタルヘルスとウェルビーイングに対する利点」を挙げているという。労働におけるメンタルヘルスやウェルビーイングは、モチベーションとは切り離せない。
「この調査によると、従業員の40%がSense of Purpose and Meaning(企業の目的と自分のパーパスが合致できているか)に重きを置き始めています。従業員の関心が、これまでの給与や対外的なブランディングより、“働く価値のある会社”であるのかに向かっているのでしょう」と、ワーカー側の大きな変化を分析する。
人的投資が長年の課題から抜け出せない理由
EXが重視される近年だが、人への投資の重要性は長く言われ続けてきたことである。具体的な施策としては動き出せず、“概念”に留まってしまう理由はどこにあるのだろうか。
「最大の要因は人への投資=コストセンターという“誤解”です。ビジネスに直接つながる投資を最優先してきた結果、企業の成長曲線が停滞している。そのブレイクスルーこそが、実は人的投資です。従業員エンゲージメントの高い組織は、そうでない組織に比べて収益性が21%高く、従業員エンゲージメントの高い従業員は、そうじゃない従業員に比べて職場の定着率が12倍高いとの調査結果が出ています。これらのファクトは、EXとビジネスがダイレクトにつながっていると示しています」
数値として可視化し、生産性の高い働き方を支援
日本マイクロソフト株式会社マーケティング&オペレーションズ部門プロダクトマーケティングマネージャーの加藤友哉氏
このようなさまざまな課題を持つ日本企業におけるEX向上について、Microsoft Vivaはどのようなアプローチができるのだろうか。
「Vivaにはさまざまなモジュールがあるのですが、現在最も反響が多いのが、業務時間や働き方の傾向、コラボレーション相手などを可視化できるViva Insightです。チームのリーダーやメンバーなど階層ごとに工夫されたビューが用意されています。匿名性は担保されつつ、リーダーはメンバーがどれだけ勤務時間外に業務に携わっているのか、どれだけ遮られずに作業が出来ているのかなど働き方の傾向を把握できる。それはトップによる管理・監視とは逆の発想で、働き方を可視化することによって、従業員が自由かつ生産性を高めて働くための支援を目指しています」
もうひとつ、EXを向上させつつ、日本の雇用制度の課題へのひとつのソリューションとなると注目されているのが、Viva Learningだ。
近年、リカレント教育や学び直しという言葉が知られるようになり、コロナ禍では社会人向けのオンライン学習/研修が一般化してきた。Work Trend Indexによると94%の従業員が「ラーニングやキャリア開発に投資してくれる会社で長く働きたい」と答えている反面、労働時間の中で新しいスキルを得るために使える時間は1%という調査結果も。意識と現実に大きなギャップが生じている。
「ラーニングはスポットで行うのではなく面で継続的に行うことが大事ですが、日本企業はメンバーシップ雇用で、なおかつジョブローテーションが非常に激しい。将来の配置が未確定な中ではなにをどう勉強すべきかわからないも多いでしょう。Viva Learningは業務に紐づくコンテンツ、同僚のおすすめコンテンツが表示されますし、業務の隙間や就業時間後の30分など、学びの時間も業務に包含する形でしっかりと従業員にコミットできるというのが強みです。より組織として有益なラーニングを体験できます」
個々のモジュールも魅力的だが、Vivaの最大の特長はプラットフォームであることだという。
「ビジネスチャットやビデオ会議アプリなどさまざまなビジネスツールを使っているワーカーも多いでしょうが、ワーカーは1日に25回以上業務アプリを切り替えて、集中力を切らす原因ともいわれています。Vivaは他のMicrosoftアプリやさまざまなコンテンツアプリとも連携しているので、一元管理が可能。例えば、ワーカーにお馴染みのTeamsやOutlookから『休息の時間を取りませんか?』とアラートが来れば確認しやすく、業務と連動して従業員コミニケションをつなげるきっかけにもなります」
Viva=企業のヘルスメーター
プラットフォームとして業務とEXをシームレスにつなぐVivaだが、加藤はその価値を最大化するには導入する企業の目的意識が重要だと語る。
「Vivaはいわば、企業にとってのヘルスメーター。乗れば組織がどういう状態かわかります。ただ、体重計に乗っただけでは何も変わりません。体を絞りたい、筋肉をつけたいという目標があって初めて、ヘルスメーターに示されるデータをアクションにつなげられる。Vivaも目標を実現するためのアイデアや意識を持った方がその価値を実感できます」
通常、Microsoft商品の導入には企業のIT部門が担当するが、Vivaに関しては顧客企業の複数の役員を交えることが多いという。
「人的資本への投資は、一つの部門だけで取り組めるものではありません。デジタル化、人への投資、ビジネスのベクトルがクロスした先に企業の目標があるはずです。複数の意思決定者と共に、企業のあるべき姿を定義していくことで、Vivaは現在地を示す正確な地図にもなり、目指すべき未来に導いてくれるコンパスにもなりうるツールだとお伝えしています」
Microsoftではその考えのもと、パートナー企業とEXに関する動画を作成。EXやHRに対する理解を踏め、日本企業の抱える課題や最前線の動きを把握できる内容になっている。
https://www.youtube.com/c/Microsoft365Japan