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2022.06.17 16:00

[グレートカンパニーアワード2022] 関家具 働く社員が誇りを感じる会社賞

船井総合研究所が教育性・社会性・収益性を備えた持続的成長企業を褒賞する「GREAT COMPANY AWARD 2022」において、「働く社員が誇りを感じる会社賞」を受賞したのが福岡県の関家具だ。創業者であり、代表取締役として会社を率いる関文彦は、統制と命令型のリーダーではない。専務や常務、営業部長なども含めて、社内のリーダーシップのあり方は支援型で統一されている。それが自律的に仕事を楽しむ社員の育成につながり、新しい事業が次々と生まれ、利益にも結実している。


519のアントレプレナーシップ、関家具プライドが53期連続黒字に結実


九州一の大河、筑後川が有明海に流れ込む河口の一角にある福岡県大川市。この地には古くからたくさんの舟が集まり、造船技術が発達した。腕のよい舟大工たちは、やがて指物(机や箪笥など)も手がけるようになる。大川の木工の祖と呼ばれる榎津久米之介は1536年にこの地に移り住み、下臣に指物をつくらせた。以来、職人の技と心意気が現代まで受け継がれている。

関家具の創業者である関文彦の父も腕のよい木工職人であった。関は小学生のころには父の弟子たちと材木を運び、中学生の時分にはノミとカンナを使いこなしていたという。

「実は、私は小さいころから『商売をしたい』『経営者になりたい』と考えていました。高校卒業後は久留米の寝具・家具店に住み込みで働きながら、福岡大学商学部の夜間部に通うようになりました。昼は仕事、夜は大学で簿記や会計の勉強です。その大学で先生から人生の規範として授かった6 つの教えがあります。それが、『盗るな、殺すな(=人を傷つけるな)、火を出すな(=迷惑をかけるな)、負けるな、嘘をつくな、弱い者いじめを許すな』です。私は、これらを片時も忘れることなく仕事に打ち込んできました」

1968年、関は大学卒業と同時にたったひとりで卸売業として独立。現在では「メーカー・卸売・小売」の垂直統合経営を実現し、社員はグループ全体で519名(2022年6月時点)を数えるまでになっている。長きにわたる経営者人生において転換点となったのは45年前、自身と会社を律するために「経営の心得13か条」を掲げたことだという。そのなかでも下記の第1条が、現在に至るまで関家具らしさを決定づけるステートメントとして機能してきた。

「楽しくなければ仕事じゃない、やりたいことを任す、失敗しても文句は言わぬ。責任はすべて社長が取るから思いっきり楽しんで仕事をやってください」

関は、この第1条への想いを次のように語る。



「関家具が永続していくためには経営環境の変化にいち早く対応し、適切に変化していくことが大事です。かつての私はワンマン経営により、大切な社員に会社を去られることも経験してきました。そして、ワンマン経営ではなく『社員に任せる経営』に転換し、社員が楽しく仕事をすることこそ企業が成長し続けるための条件だと気づいたのです。現場をもっとも知っているのは、社員ですからね。現場を知る社員は、私の先生です。社長は、先生の言うことに耳を傾けなければならないのです」

その「社員に任せる経営」の真骨頂が、社員の意欲的なアイデアを具現化する取り組みである。

「これまでに社員が発案した新規事業の数は60を超えています。社員のアイデアによって30以上のブランドが誕生してきました。天然木材の一枚板テーブルを手がけるアトリエ木馬、多様なジャンルのアイテムを組み合わせることで生まれるギャップやユーモアを楽しんでいただくクラッシュクラッシュプロジェクトなど、多くの稼ぎ頭が生まれています。また、家具と聞いて真っ先に思い浮かぶのは家庭用ですが、その領域に私たちはとどまっていません。オフィス向けやホテル・レストランなどの業務用、福祉・医療向けのメディカルファニチャー、商業施設向けの什器といったように商品のレンジは広がり続けています。これらもすべて社員が仕事を楽しみながら自身のアイデアをカタチにしていった結果なのです」

関家具の社員に雇われ精神はない。あるのは、起業家精神だ。つまり、関家具には519名ものアントレプレナーが在籍しているということになる。社内には、常にスタートアップの種が溢れている。これは、社長自らが常に豊かな土壌(=企業文化)を育む努力をしてきたことの成果だ。いや、途中経過だ。本当の果実は、社員発案の新規事業であり、その事業群がもたらす利益であり(2021年5月期の売上高は過去最高を記録)、そうした日々の働きによって社員のなかに生まれてくる自尊感情と愛社精神ではないだろうか。この自尊感情と愛社精神の総和が、「働く社員が明日を生きるための誇り」になっているのではないだろうか。

今回の「働く社員が誇りを感じる会社賞」の受賞を機に、関は社員に「現在、自社に誇りを感じているとしたら、それはどういったところだろうか?」というヒアリングを行った。社員に代わって、その答えのいくつかを関が読み上げてくれた。

「家具業界卸売で圧倒的に売り上げがいちばんであること」

「会社全体、例えば経営者、経営陣と一般社員との隔たりがなく、フラットで風通しがよいこと」

「やる気や実力を認められ、年齢や学歴に関係なく採用や役職、仕事をいただけること。そのため、さらにやる気が上がるという好循環が生まれている」

「社員が500名を超えても、社長が社員一人ひとりの名前や出身校や特長を覚えていて、電話や直接会ってコミュニケーションをとっていただける環境があること」

「地域社会で圧倒的に知名度があり、社名を言った際に『とても大きなよい会社に入社してるね』などと褒められたり、認められたりしていること」

「愛情のある会社であること。愛情のなかに厳しさと温かさの両面を含んでいること」

こうした想い、すなわち「関家具プライド」の数々が即座に社長のもとに集まってくるところに、常日頃からの社内コミュニケーションの濃度と深度が感じられる。

創業以来、54年間にわたって黒字経営を続けてきた関家具がグレートカンパニーであることは、まぎれもない事実だ。そして、「働く社員が誇りを感じる会社賞」に相応しい。もしも、関家具の社員が感じている誇りを日本中で働く人のすべてが抱くようになったとしたら、日本はどのような国に変わっているのだろうか。


関文彦◎1942年、福岡県大川市生まれ。福岡大学商学部を卒業した1968年4月、トラック1台で家具の卸売業として独立、創業。1982年11月に関家具として法人化。創業以来、日次決算を採用して即座に課題解決の手を打つようなスピーディーな経営を心がけ、さらには社員に任せる経営にシフトすることにより、現在まで黒字決算を続けている。

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Promoted by 船井総合研究所 / text by Kiyoto Kuniryo / photographs by Shuji Goto / edit by Akio Takashiro