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2022.03.15

「秘密計算でデータ連携は加速する」──AIモンスターと岸博幸が語る「データセキュリティ問題を乗り越え、日本が世界に勝つ方法」

創薬にかかる時間を短縮し、費用も10分の1以下に減らす。食品ロスを大幅に減少させ、物流における人手不足も解消――。

いまある課題を解決し、理想の未来の到来になくてはならないのが、ビッグデータの利活用。企業の垣根を越えてデータを連携させ、AIを活用した分析や展開が求められている。

しかし、そこで不安視されるのが個人情報や企業の機密情報漏えい。情報は保護したい、だが活用もしたい。そのジレンマを解消するのが「秘密計算」という技術である。

その斬新で可能性に満ちた技術について、業界のトップランナーである「イーグリス」代表取締役社長で、「AIモンスター」の異名でさまざまなメディアで紹介される今林広樹と、旧通商産業省で情報政策などを担当していた慶應義塾大学大学院教授の岸博幸が語った。




「秘密計算」が開く圧倒的可能性


DXにとどまらず、ソサエティ5.0に向けて社会が動き出しているいま、データの連携やビッグデータの活用はもはや止めようがない流れとなっている。しかし、データ利活用とデータ保護は相反するという課題をもち、変革が進みづらい。

2021年7月、EUにおける個人情報を保護する法律「一般データ保護規則(GDPR)」に違反するとして、アマゾンに約970億円の罰金が課せられたことは記憶に新しい。同年9月には、同じくGDPR違反でFacebook(現Meta)傘下のWhatsAppに約293億円の罰金が課された。Metaに対してはたびたび個人情報の収集や漏えいが問題視されている。 

日本では個人情報保護法があるが、個人を識別することができないよう個人情報を加工すればデータを利活用していいと定められている。 

「各企業ではデータサイエンティストが日々個人情報データを加工しています。データは社内のセキュリティルームにあるので、その加工のためだけにコロナ禍でも毎日出社している。データサイエンティストという生産性の高い仕事を行うべきポジションが、生産性の低い働き方をしているのです」(今林) 
 
今後、企業のDXや家庭のIoT化、メタバースの普及などが進めば、データ量は膨大になり情報管理もより複雑なものになるだろう。そこで効率のいいデータ活用の鍵となるのが「秘密計算」だ。データを暗号化したまま分析・検索・共有でき、セキュリティと秘匿性の両面を担保したうえで、社内外でのデータ連携・利活用を可能にするという技術だ。 

「データを秘匿した形のまま計算できれば、より使いやすくなりますね。このアプローチが広がれば、個人情報保護に対して過度にナーバスになる必要はなくなる。規制を厳しくすることだけが情報の機密性を守る手段ではありません。技術が解決してくれる場合もあるわけです」(岸) 

「おっしゃる通りです。秘密計算を用いれば細かなルール設計を設けなくてもデータを活用でき、消費者も安心できる。個人情報などのプライバシーの保護とデータ活用による社会への価値貢献を両立できる技術です」(今林) 


「AIモンスター」の異名をもつ「イーグリス」代表取締役社長・今林広樹

物流、医療、金融、「秘密計算」はすべてに変革を起こす 


では、具体的に秘密計算を用いたデータ連携にはどのようなメリットがあるのだろうか。

「例えば、サプライチェーンでは、リテール企業のPOSデータとメーカーや卸の持つ出荷・在庫データを、それぞれのデータの秘匿性を保ったまま連携できるようになります。サプライチェーンをまたいだデータ連携によって、従来より数段精度の高い需要予測や配送・生産計画を立てることができ、廃棄ロスの低減や配送・在庫効率化等が期待できます。さらに、データの中身が見られないからこそ競合企業同士の共同配送を促し、物流のコスト削減、省人化、環境負荷の低減なども実現可能です。

また、現在、国や大学の研究機関とも連携し、金融機関をまたいだ不正取引を検知するプロジェクトを進めています。これまでは各金融機関がそれぞれのデータをもとに不正検知のフィルターをつくっていました。しかしそれでは、A銀行で起こった不正と同じ不正がB銀行で起こっても防げない。危険性が高いうえに開発コストもかかります。この課題に対し、各銀行がセキュアにデータを連携、AIに学習させることで、A銀行で起こった不正の予兆をその他の銀行も検知することができるようになり、より強固なフィルターを開発できます。点で守るのではなく、面で守ることができるようになります」(今林) 

その他、商社、交通、医療など幅広い領域において課題を解決できる。 

「僕は官民の連携は本来必要最小限であるべきという考えですが、例外として、データ連携以前の規制が多い医療は官民が連携していくべきだと考えています。官が秘密計算を用いたデータの利活用を進めていけば、新しく高度なサービスを提供できるはず」(岸) 

「そうですね。医療機関のデータ連携ができれば、プライバシーに配慮しながら各拠点に散らばっているデータにアクセスでき、AIの活用による診断精度の向上と地域医療格差の是正や、一人ひとりの体質や病状などに合わせた治療方法を選択するパーソナライズドメディシン(個別化医療)も可能になります。特に希少疾患はリアルタイムなデータ提携が求められていますので、連携が可能になれば新薬開発スピードの加速材料になり得ます」(今林) 


慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授・岸博幸

アメリカでは国が支援している秘密計算、守りから攻めのセキュリティへ


秘密計算はいま、世界中の注目を集めている。アメリカでは私企業だけでなく国家としてもその重要性を認識し、積極的に技術開発に取り組んでいる。

「アメリカでは秘密計算技術を提供するスタートアップ・Duality TechnologiesがDARPA(アメリカ国防高等研究計画局)と契約し、資金提供を受けています。アメリカ中央情報局(CIA)もインキューテル(CIA In-Q-Tel)という投資ファンドをつくって秘密計算技術などプライバシーテックに出資。デュアルユース(軍民両用)を見据えて国として投資し、技術を進展させています。しかし、日本においてはまだまだ。直接的な予算もないし、CVCもなく、アメリカに比べるとギャップがあります。国が海外の動向を捉えて、もっとこの技術に理解を示して投資していく必要があると思っています」(今林)

「日本政府は大企業や一部のベンチャーからしか情報を集めていないので、最先端、最新の技術は理解していない可能性が大きいですね」(岸)

「『いいことだ』とわかっても、『お金をかけてまで開発すべきなの?』と思ってしまうところがあるようです」(今林)

「残念ながら日本ではセキュリティを『コスト』と捉えてしまいがちなんです。欧米ではセキュリティは前向きの投資。その点の感覚が違う。この20年間近く、日本企業はデジタル化、グローバル化という世界の潮流に乗り遅れ続けてきました。ようやくコロナ禍でDXが一気に進みました。これから個人情報を秘匿したままデータ連携をすれば、リアルビジネスでいろんな展開が可能なはず。後発の優位性が試される時です」(岸)

セキュアにデータ連携を行うことは、1企業だけの利益にとどまらない。産業全体、消費者、そして日本社会全体に広く革新的なインパクトが及ぶものとなる。

「例えば、創薬は開発に約500〜1000億円もの費用と、10〜20年の年月がかかると言われています。製薬業界が医療機関の保有するRWD(リアルワールドデータ:臨床で得た医療データの総称)や他製薬会社の治験データを連携し活用できるようになれば、コストを数十億円に削減できますし、開発期間も大幅に短縮できます。少数多品種の生産やパーソナライズドメディシンも可能になるでしょうし、ひいては国の医療費削減にもつながります。結果的に、1企業だけでなく業界全体の利益につながり、患者も助かる、社会も助かることになるわけです」(今林)

イーグリスは秘密計算ソフトウェア「DataArmor(データアーマー)シリーズ」を独自開発し製品化。クラウド上でのAI解析サービスのセキュリティレベルを飛躍的に向上させている。日本が国際競争力をもち、グローバルで勝ち抜くためにも、データ連携は待ったなしの状況。ビジネスチャンスを生かすか逃すか、この技術にかかっていると言っても過言ではない。

「いままで世界的にもデータを利活用するのはGAFAを筆頭に、オンラインビジネスの話だった。でも、ビジネスの観点で考えると、オンラインビジネスは世の中のごく一部です。データに関してもリアルビジネスのほうがボリュームが大きい。そこでの秘密計算を使ったアプローチは、強力な武器になり得るはずです」(岸)

「おっしゃる通り、GAFAなどオンライン市場のデータを握っているテックジャイアントに対抗するには、データ連携はマスト。データ量はオンライン市場で7%、残り93%はリアルワールドとされています。93%のデータを連携できれば、それが実質ビッグデータになる。特に日本はリアルワールドの産業が強いので、そのデータを生かせば国際競争力をもち、日本経済を好転させることができると考えています。その鍵がデータ連携だと思いますし、データ連携の障壁を取り除き、データを安全に利活用する社会の実現に貢献できる技術が我々の手がけている秘密計算技術だと思っています」(今林)

EAGLYS
https://www.eaglys.co.jp/company



岸 博幸◎1962年生まれ。一橋大学経済学部卒業、コロンビア大学ビジネススクール卒業。86年通商産業省(現・経済産業省)に入省し、産業政策、情報政策、通商政策、エネルギー政策などを担当。経済財政政策担当大臣、総務大臣などの政務秘書官を歴任し、不良債権処理、郵政民営化などの構造改革を主導した。

今林広樹◎1992年生まれ。早稲田大学大学院在籍中、アメリカでデータサイエンティストとして活動したのを契機に「AI・データ利活用時代」におけるデータセキュリティの社会的重要性を実感する。帰国後、科学技術支援機構の戦略的創造研究促進事業(CREST)研究助手を務めながらプライバシー保護ビッグデータ解析の研究に没頭。2016年大学院在籍中にEAGLYSを創業。

Promoted by EAGLYS / Text by Yukiko Anraku / Photo by Shuji Goto / Edit by Kaori Saeki

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