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2022.02.28

【医療アクセスの向上 × SORA Technology】 医療アクセスの向上を目指して、ドローンで医療物資を運ぶシステムを構築。アフリカ、アジアで “共に歩む”産業づくりを 〜「ポストコロナ時代のヘルスケア・パラダイムシフト」#4

いま、グローバルヘルスの課題解決に向けて、非医療領域の企業がそれぞれの叡智を結集させて新たな可能性を導き出そうとしている。そのひとつが、インフラの整っていない新興国で検体や医薬品を運ぶシステムを開発するSORA Technologyだ。同社はドローンを活用し、物流・配送システムの整備されていない場所で、医療へのアクセス向上に貢献している。

同社を率いるのは、ドローンベンチャーや国立研究開発法人に所属していた経歴をもち、長年ドローンや空飛ぶクルマの開発に携わってきた金子洋介だ。彼らが実現しようとしている、ドローンを活用した真のグローバルヘルスへの貢献とはどのようなものなのだろうか。

当連載では、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(以下、MURC)が、ヘルスケア業界に変革をもたらすと期待する国内外の企業・団体にスポットを当て、「グローバルヘルス」「プラネタリーヘルス」といった視点からポストコロナ時代のヘルスケアに迫っていく。



宙(そら)を生かし安全で豊かな社会を実現する


SORA Technology創業者兼CEOの金子洋介は、コンサルティングファームの戦略部門マネージャーだったころ、新しいテクノロジーを使った社会改革という課題を抱いてアジア、アフリカを踏破した。そこで実感したのは、ドローンが一部産業を除いて、社会実装されていないという現実だった。

「新興国では『ドローンが人の役に立つのか?』とたくさん聞かれました。ドローンは人の手が及ばない部分での測量や観測といった分野では活躍していたものの、長距離移動や物資配送には課題があり、活躍の場が限られていたのも事実です。技術的には確かな自信がありましたが、ニーズに応えきれていない部分がありました。そのもどかしさから、『ドローンを使って社会を豊かにしたい』という思いが強くなったんです」(金子)


グローバルヘルスへの貢献にドローンを活用する、SORA Technology 創業者兼CEOの金子洋介

金子がドローンベンチャーの最高戦略責任者となり、ドローン活用の新たな道筋を思案しているとき、生物学・医学研究で名高いフランスのパスツール研究所から、“天恵”ともいえる1通の電子メールが舞い込む。そこには、アフリカの僻地まで行き、ドローンを活用した産業開発に一緒にチャレンジしてくれる企業を探している旨が書かれていた。

「『これはやるしかない』という直感を信じて、2018年にパスツール研究所の協力のもとアフリカを訪問しました。そこで政府関係者や医療関係者らにヒアリングを行ったところ、医療現場でのドローン活用を強く願っていることを知ったんです。道路事情が悪く、空からでないと運べないという環境と具体的な現地のニーズを目の当たりにしました。

実はGDPが先進国の10分の1程度と、圧倒的に経済規模の小さい途上国でも、物流にかかる輸送費は先進国と大差がありません。物流網が未整備のため、コストが上がってしまうのです。検体や医薬品などの輸送であれば、重量的にもドローンで十分対応できます。大きなマーケットとチャレンジする価値、そして社会的ニーズが揃ったアフリカでの事業なら、ドローンがグローバルヘルスの領域に貢献できる証明になるだろうと、腹が決まりました」(同)

金子は2020年にSORA Technology株式会社を設立し、パスツール研究所やフランスの大手電気通信事業者オレンジ社とともに、フランスとの関係が深い西アフリカからドローンを使ったヘルステック事業の展開に乗り出した。



先進国でのモデル構築を途上国でのサービス事業に還元


SORA Technologyのドローンによる配送事業は2021年、西アフリカのセネガルとシエラレオネで最初の一歩を踏み出した。使われるドローンは一般にイメージされる回転翼機(マルチコプター)ではなく、ラジコン飛行機のような固定翼機。ペイロード(運搬能力)は3〜5kg、航続距離160~200kmに及び、運用や整備の利便性からバッテリーで駆動する。

「ドローンによる配送のイメージは、大きく2つです。一つ目は、地方の病院で検体を採取し、ドローンに載せて中枢の病院に運んだり、中枢の病院から地方の病院に医薬品などを運んだりする拠点間の配送です。新興国では、片道1、2kmの平坦な道のりはバイク便を利用したほうが安く済みますから、移動がしにくい山間部の医療機関や、中距離の移動を伴う配送ではドローンに優位性が出てきます。

二つ目は、病院から僻地などに医薬品や輸血用血液を運ぶ片道配送です。固定翼機というと滑走路など小規模な空港インフラが必要かと思われますが、カタパルト(射出機)で離陸し、パラシュートで着陸・投下しますので、新たにインフラを整備する必要はありません」(同)


SORA Technologyが自分たちで開発まで行っている固定翼のドローン


飛行試験は、福島県南相馬市にて行われた

とはいえ、実際にはドローン配送の前にいくつもの壁が立ちはだかる。その最たるものが法規制だ。発展途上国といえども航空法が整備されており、規制をクリアしないことにはドローンを飛ばすことができない。だが、それらの壁こそが、SORA Technologyに唯一無二の競争力を与えている。

「例えばシエラレオネは、航空局が『危ない』との理由でドローン配送を解禁したくない一方で、保健省はドローン配送を早く導入したいという利害が一致していない状況にありました。ですから、私たちは航空法をどのように改正すれば安全なドローン配送ができるのかについて政府関係者に説明し、先進国のルールをベースとした法制度の設計を提案したのです。

それと同時に、ドローン配送データを活用した在庫管理システムやドローンの運航に必要な電力・通信インフラの構築、万が一ドローンが墜落した場合の保険、ドローン操縦者の育成など付随したサービスもパッケージ化しました。ドローン配送にあたっては、それらを網羅した全体パッケージの構築が前提となりますが、これができるのは日本での経験を積んだ私たちだけだと自負しています」(同)

SORA Technologyの事業について話を聞いてきたMURC ソーシャルインパクト・パートナーシップ事業部マネージャーの成沢祐梨は、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)(※)の観点から次の通り指摘する。

「UHCを達成するには、物理的・経済的・社会慣習的アクセスの改善が求められます。SORA Technologyによるドローン配送事業は、道路インフラなどが貧弱な新興国・途上国での物理的アクセス改善に大きく貢献するとともに、大きなインフラを構築せずとも効率的かつ迅速なオンデマンド配送ができるため、経済的アクセスの改善にも寄与していると考えます。

それだけではなく、SORA Technologyは弊社が事務局を務める、グローバルヘルスの課題解決を目指す日本企業のイニシアティブである『WELCO Lab』にも参加し、ドローン配送の意義を発信されています。日本の政府開発援助(ODA)で保健医療領域の占める割合が5%程度と他の先進国に比して低いなかで、このような情報発信は国内でグローバルヘルスに対する人々の関心を集め、関連活動の機運醸成に一役買っているといえます」(成沢)
 

MURC ソーシャルインパクト・パートナーシップ事業部マネージャーの成沢祐梨

(※)ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)とは…「すべての人が、適切な健康増進、予防、治療、機能回復に関するサービスを、支払い可能な費用で受けられる」状態を指す概念。SDGsにおいてもゴール3(健康と福祉)の中でUHCの達成が掲げられている。

日本のレジェンドを味方にする


SORA Technologyが展開を目指すのはアフリカだけではない。アジア圏においも、ブータンでのドローン配送の実現に向けてすでに動き始めている。金子はアフリカ諸国、そしてブータンの政府関係者らと話すうちに、「彼らが話を聞いてくれる根底には、日本という国への信頼感がある」ことを感じたという。

「UHCの観点でドローン配送を見ると、潜在的なニーズは大きいのですが、現状では顧客ニーズに比してビジネス規模が小さい割りに、クリアしなければならない課題は山積みの状況です。ある現地の政府関係者が、『ドローンをはじめいろいろな商品を売り込んでくる国もあるけれど、一緒に産業をつくってはくれない』と話していたことがありました。当然、ドローンを売ることだけを考えるなら、余計なことはやらないほうがいいのです。しかし、ドローンでグローバルヘルスに貢献するためには、その前提となる制度の構築からしていかなければなりません。だからこそ、よほど信頼できる相手でなければ任せられないという、参入障壁もあるのです」(金子)

先述の通り、航空当局がドローン解禁に消極的な理由には、ドローンが攻撃兵器や偵察機にも転用でき、テロの危惧はもとより、製造・運用元の国や企業が上空から自国のさまざまなデータを収集することも可能である、という安全保障上の懸念もあるだろう。

「アフリカと同じニーズのあるブータンでは、今後5年間で法改正からドローン産業の育成、ドローン操縦の試験・登録・管理、人材育成までをやっていくビッグプロジェクトを検討しています。ブータン政府関係者と話したなかで特に印象深かったのが、日本への信頼感です。彼らは、安く良いものを提供することができて、かつ共に歩んでくれるパートナーを求めています。若い私たちと検討を進めてくれる背景には、日本がODAなど国際協力で培ってきた信頼があるのだと実感しました」(同)


「ブータンでのデリバリー拠点となる山岳地域のホームステイ先家族との写真です。現地の方々と山奥におけるアクセシビリティの悪さ、ドローン物流の必要性についてお話させていただきました」(金子)

SORA Technologyのように非医療領域の企業がグローバルヘルスに参画し、日本への信頼感を土台にして活躍している状況について、成沢は「新たなプレイヤーの登場でこれまで解決できなかった問題が解決できる」と期待を寄せる。

「WELCO Labの参加企業の取り組みをはじめ、昨今のグローバルヘルスに関する企業の活動を俯瞰すると、必ずしも最先端の技術を適用した事例ばかりではないと捉えています。ハイテクを追い求めるだけがイノベーションではありません。目の前の課題を解決するために、既存の技術や製品をいかに活用できるかという企業の発想転換と粘り強く社会実装に取り組む意志の強さがイノベーションそのものだといえます。SORA Technologyは、ドローン技術というより、強いコミットメントによって、現地の信頼を獲得し競合優位性を形成している好事例と思います。WELCO Labのような場に新たなプレイヤーが参加し、いままでにない発想やコミットメントが喚起されることでイノベーションが起こることに期待が寄せられます」(成沢)

“失われた10年”以降、日本の地盤沈下は誰もが実感しているところだ。だが日本には、“枯れた技術”と例えられる、“完成された信頼性の高い技術”が分厚い層を形成している。信頼と実績という日本レジェンドと若い力がフュージョンしたとき、グローバルヘルスに大きなうねりが起こる。



金子洋介(かねこ・ようすけ)◎SORA Technology 創業者兼CEO。大学卒業後、総合コンサルティング会社に入社。同社のストラテジーマネージャーを経て、ドローンベンチャーへ。同社では最高戦略責任者を務める。その後、国立研究開発法人にて主任研究員を務め、2020年に愛知県スタートアップ推進課の支援を受けSORA Technologyを設立。自社で開発したドローンや空飛ぶクルマを活用したヘルステック事業、コンサルティング事業、また、スマートモビリティ販売事業を行う。

SORA Technology 
https://sora-technology.com/

連載「ポストコロナ時代のヘルスケア・パラダイムシフト」はこちら

Promoted by MURC / Text by Kazuya Takahashi / Photo by Tadayuki Aritaka / Edit by Miki Chigira

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