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2021.12.24

【Pregnant women's safety×メロディ・インターナショナル】 日本が誇る世界最高水準の周産期医療技術を遠隔システム化。年間200万人の亡くなっている赤ちゃんを救うために 〜「ポストコロナ時代のヘルスケア・パラダイムシフト」#3

新型コロナウイルス感染症の拡大による「医療崩壊」という言葉が飛び交うようになった。しかし、それより以前から、「医療崩壊の危機」に直面している領域がある。それが、産科・周産期領域だ。

日本は、同領域で“世界一”とも称される医療技術を持つにもかかわらず、専門医不足に悩まされ、医師たちの激務、妊産婦たちの待ち時間の問題など、課題が山積みだ。

そんな課題を軽減すべく、IoT型胎児モニター「分娩監視装置 iCTG(以下「iCTG」)と周産期遠隔医療プラットフォーム「Melody i」を開発したのがメロディ・インターナショナル。同社のCEO・尾形優子はいま、「世界中のお母さんに、安心・安全な出産を!」と、世界中を駆け回っている。

当連載では、三菱リサーチ&コンサルティング(以下、MURC)が、ヘルスケア業界に変革をもたらすと期待する国内外の企業・団体にスポットを当て、「グローバルヘルス」「プラネタリーヘルス」といった視点からポストコロナ時代のヘルスケアに迫っていく。



医療崩壊のプロセスに入った産婦人科医療を救う


日本は、妊娠22週以降の死産率と早期新生児死亡数を合わせた「周産期死亡率」が3.2、「妊産婦死亡率」は3.3。いずれも、世界トップレベルの低さを誇っており、日本が周産期医療において“世界一”優れているといわれていることをご存じだろうか。逆にいえば、日本はお母さんたちが安全に出産を終え、赤ちゃんたちが無事に生まれてくることができる、母子にとって最も安心な国ともいえるだろう。

ところが、医療関係者の間では、日本の産科・周産期領域は「医療崩壊の危機」という段階を超えて、すでに「崩壊のプロセス」にあると認識されている。その背景にあるのは、産婦人科医の激務と訴訟リスクだ。2010年に始まった医学部定員の増加で医師の数は毎年400人ほどのペースで増え続けているが、産婦人科医師はここ20年間でほとんど増えていない。

この状況に危機感を抱いていたメロディ・インターナショナル(以下、メロディ)CEOの尾形優子は、「医療関係者との出会いを通じて遠隔医療が産科・周産期領域再生の鍵を握る」と確信し、創業を決意したという。

「前職の電子カルテ事業で岩手県の周産期ネットワーク事業に関わっていた06年頃、遠野市長から『市に産婦人科医が一人もいなくなった。いくら募集しても来てくれない』という話を聞いたことが、メロディを立ち上げる直接のきっかけです。

私たちの技術で助けになれることはないかと考えているとき、周産期電子カルテの開発でお世話になっていた香川大学の原量宏教授が、実は分娩監視装置の基本原理を発明された先生だと知りました。原先生は『胎児の状態を見ることが大事』であると、その原理を広く提供していきたいと考えておられました。分娩監視装置を遠隔で管理できるシステムを製品化できれば、赤ちゃんとお母さんを救うことができると、開発に着手したのです」(尾形)


タイから帰国したばかりで、自主隔離中のなか、取材に対応してくれたメロディ・インターナショナルCEOの尾形優子

分娩監視装置とは、お母さんのお腹に固定した2つのトランスデューサーで胎児の心拍と子宮の収縮状態をキャッチし、胎児心拍数曲線と陣痛曲線を2本のグラフに記録する装置のことだ。母体側からは陣痛(おなかの張り)、胎児側からは心拍数を連続して監視できる装置であり、安全に出産を終えられるよう見守ってくれる。これまでは妊婦の通院時や入院時に医師が観測していたが、尾形はそれを遠隔でも可能にしようと試みたのである。

メロディが香川大学と産学連携により共同開発したシステムの構成は、極めてシンプルだ。手のひらサイズのIoT型胎児モニター「iCTG」を妊婦の腹部に装着し、センサーが胎児の心拍数と陣痛の予兆となる子宮の収縮度を測定、それを医師や助産師が周産期遠隔医療プラットフォーム「Melody i」を通じてスマートフォンやタブレットなどの端末で確認する。


ハート型の機器とアプリが「iCTG」、クラウド経由で遠隔で診断できるようにするのが周産期遠隔医療プラットフォーム「Melody i」だ。(提供:メロディ・インターナショナル)



運用イメージ(提供:メロディ・インターナショナル)

「地方では産婦人科医不足でクリニックが減少したため、妊婦さんが長い時間をかけて遠くの病院まで通院しなければなりません。クリニックが『iCTG』と『Melody i』を導入すれば、妊婦さんは通院の手間を省くことができ、医師は遠隔で胎児の健康状態をチェックして、分娩のタイミングを予測することができます。胎児に異常が認められれば、緊急搬送の手配も可能です」(同)

コロナが気づかせた日本国内での需要


妊婦と産婦人科医の双方にメリットがあり、産科・周産期領域の課題を解決するポテンシャルを秘めたメロディのシステムだが、国内で利用を後押しするきっかけとなったのは、皮肉にも新型コロナウイルスの登場だった。定期健診などで通院する際、外出せざるを得ないことが妊婦たちの不安材料になっていることを受けた北海道大学病院は、20年3月、日本初のオンライン妊婦健診・診療を開始し、メロディのシステムを採用した。

「北大病院からメロディのシステムを使ったオンライン健診サービスに挑戦したいと連絡を受けて、すぐに北海道に飛びました。医師から求められたセンサー部分の流水洗浄のための防水性やアルコール消毒への耐性などをクリアし、香川に戻ってからすぐに『iCTG』15台を送りました」(同)

その後も日本各地で導入が進んだが、千葉県では21年8月にコロナに感染した妊婦が、入院先が見つからないまま自宅で早産し、乳児が亡くなるという悲しいニュースをきっかけに、産婦人科医と県庁がタッグを組んで導入を決定。「iCTG」50台を導入し、再発防止に取り組んでいる。現在では、京都府や奄美大島など、多くの自治体で採用されるに至った。

三菱UFJリサーチ&コンサルティングソーシャルインパクト・パートナーシップ事業部で副長を務める佐藤京は、産科・周産期領域での遠隔医療の意義についてこう分析する。

「これまで遠隔医療は、限定的な運用に留まっていました。ところがコロナ禍で通院が困難となり、一挙に運用が進んだのです。

『iCTG』は妊婦と医師が接触せずに健診できるという点で、大きなインパクトがあります。また、こうした分散型デバイスは、医療のリソースがさらに限定的な発展途上国において、ヘルス課題を乗り越えるための大きな武器になると期待されます。固定の電力や通信回線がなくても使うことができるのは、大きなメリットです」(佐藤)


三菱UFJリサーチ&コンサルティング ソーシャルインパクト・パートナーシップ事業部の副長、佐藤京

タイから始まったメロディの快進撃


佐藤が指摘する通り、事実、メロディのシステムは新興国・途上国でも広がりを見せている。そもそもシステムが最初に導入されたのは16年、日本ではなく、タイのチェンマイだった。

前出の原教授との出会いをきっかけに香川県と国際協力機構(JICA)が主導した「草の根技術協力事業」に参画したメロディは、「タイにおける妊産婦管理及び糖尿病のためのICT遠隔医療支援プロジェクト」に採用され、香川大学と親交の深いチェンマイ大学の病院にシステムを提供している。

「チェンマイは四国とほぼ同じ面積なのですが、そこにある公立病院は25施設で、うち19施設には産婦人科の専門医がいません。そのため、妊婦は遠くの病院まで通い、長い待ち時間を過ごさなければならない状況でした。

チェンマイ大学の医師にメロディのシステムの話をしたところ、ぜひ使ってみたいとの反応がありました。『iCTG』を導入して3カ月で1500件ほどのデータを取ってもらい、フル活用していただきました。うれしかったのは、システムのデータによって50人の妊婦が搬送され、10人の赤ちゃんの命が救われたことです。現地の医療従事者に『すごいね』と喜んでもらい、『タイ全域で広げたい』と言ってもらえたことが、海外活動を始める後押しになりました」(尾形)

タイから始まったメロディの海外活動は隣接するミャンマー、さらには南アフリカにも広がった。尾形は、「課題を持っている人はアンテナを立てて世界中を探している」と回顧し、周産期医療に課題を持つ人たちからのアプローチによって広がってきたと話す。

そしてその飛躍を今後さらに後押しするだろうと期待されているのが、国連調達の実績を得たことだ。国連調達とは、国連機関が新興国・途上国を支援するために物品やサービスを世界中の企業から購入することで、国連約40機関の調達規模は年間約2兆円に上る。一方で、技術的な水準だけでなく、国連サプライヤー行動規範の受諾を求められるなど調達までのハードルは高い。

「ブータンの日本人小児科医からデモを依頼されて、緊急でブータンを訪問した際、タイミングよく国内で唯一医師を養成する王立医科大学の創立5周年パーティーが開催され、その席で保健省の方にメロディのシステムの話をしました。そして産婦人科部長に『病院で使ってほしい』と『iCTG』のデモ機2台をお渡ししました。ちょうどその頃、王妃様がご懐妊されているという話だったので、王妃様にも使っていただきたいと申し上げました。

その場では、ブータン国内で誰も試してないシステムを王妃様に使うことはできない、との判断でしたが、なんと20年6月4日、王妃様のお誕生日に合わせて首相と保健大臣がメロディのシステムを国内全域で導入すると発表したのです。王妃様がご自分で『iCTG』を使われて、すべての妊婦に広めたいと希望されたそうです」(同)

保健省がメロディのシステムを導入するに至った背景には、ブータンの脆弱な産科・周産期医療体制がある。当時、同国には産婦人科医が15人しかおらず、しかもその半数が首都に勤務するため、妊産婦死亡率は日本の約8倍、周産期死亡率は約25倍にも上っていた。ブータン保健省がメロディのシステムを導入するに当たって国連開発計画(UNDP)に相談したことで、システムは国連のプロジェクトに採用され、UNDPとJICAから合わせて「iCTG」55台が提供されることになったのだ。

前出の佐藤は、日本のヘルスケアサービスが途上国で販路を拡大させていく上での課題について、こう補足する。

「ヘルスケア分野は規制産業ですので、販売に当たって一般のデバイスよりも一段階高いハードルが課せられます。ただ、見方を変えれば、規制がまだ整っていない途上国においてはそのハードルが低いともいえる状況です。よって、途上国での利用が進むことで、先進国に広がっていくというリバースイノベーションが期待できます。

一方で、分散型でないデバイスは歴史と信頼の観点から日本製やドイツ製が優位にありましたが、分散型デバイスの分野は中国の追い上げなどで非常に競争が厳しいのが実態です。メロディのシステムは国連調達を通じてブータンに導入されましたが、これは日本のヘルスケア産業が途上国で販路を拡大していく上での、ひとつの指針を示したといえるでしょう」(佐藤)

尾形はいま、世界一厳しい基準を課しているといわれるアメリカ食品医薬品局(FDA)の承認に挑戦している。果敢な挑戦を続ける先にどのような未来を見据えているのか。

「 国連児童基金(UNICEF)や世界保健機関(WHO)が共同発表した統計によると、年間200万人以上もの死産の赤ちゃんが報告されています。救えるはずの命をひとりでも多く救うためには、『iCTG』の大量生産は必須だと考えています。同時に、価格も下げていく必要があるでしょう。ただ、それによって性能が下がるようなことはあってはなりません。そのために日々努力し続けます」(尾形)

そう言い切る尾形の柔和な瞳の奥には、「世界中のお母さんに、安心・安全な出産を!」というメロディのヴィジョンが焼き付けられていた。



尾形優子(おがた・ゆうこ)◎メロディ・インターナショナル Founder & CEO。京都大学大学院工学研究科原子核工学専攻後、香川県に移住。アムロン、イノベイトにてITシステム開発等を行う。診療所向け電子カルテ開発(経産省事業)、四国4県電子カルテネットワーク事業(経産省事業)への参画を機に、2020年ミトラ(本社:香川県)を起業し、代表取締役に就任。周産期医療の抱える課題を解決するために、IoT胎児心拍計を使った遠隔医療プラットフォーム構築のため、メロディ・インターナショナルを2015年に設立。代表取締役CEO就任。

メロディ・インターナショナル
https://melody.international/

連載「ポストコロナ時代のヘルスケア・パラダイムシフト」はこちら

Promoted by murc / Text by Kazuya Takahashi / Photo by Tadayuki Aritaka / Edit by Miki Chigira

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