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2021.12.22 11:00

好きなことを貫き通して現在の仕事へ 挑戦を続けるふたりの原点

左:イノカCEO 高倉葉太  右:長岡市地域おこし協力隊 渡辺樹里

テレビ朝日の番組「挑戦者の原点~My Episode 0~」では、挑戦者たちの原点(=My Episode 0)が語られる。放送にあわせ、30 UNDER 30 JAPAN 2021受賞者でイノカCEOの高倉葉太と、環境に優しい養殖の普及を目指す渡辺樹里が互いの原点を語り合った。


サンゴを救って地球を救うか 養殖を広めて世界を救うか


渡辺樹里(以下、渡辺):今日はオフィスにお招きいただいて光栄です。すごいアクアリウムですね!

高倉葉太(以下、高倉):ありがとうございます。僕が代表を務めている「Innoqua(イノカ)」は、サンゴ礁を人工的につくるための技術を開発しています。だから神谷町のオフィスビルの中でサンゴ礁が育っているという、不思議な光景になっています。

渡辺:本当にびっくりしました。

高倉:サンゴを育てるための技術開発を大学などと一緒に進める研究事業と、サンゴをはじめとする海洋生物から、環境、社会までをテーマとする教育事業のふたつが、いまのイノカの柱になっています。

渡辺:高倉さんのサンゴの授業、受けてみたいですね。私は水産高校に入って以来、ずっと水生生物にかかわり続けてきました。大学では養殖を学び、JICA海外協力隊としてフィリピンに派遣され、ドジョウの養殖に携わりました。現在は地域おこし協力隊で新潟の長岡市錦鯉養殖組合に勤務しながら、新潟大学の大学院で、山間地での鯉の養殖について研究をしています。

高倉:長岡は錦鯉の名産地ですよね。

渡辺:山古志という地区で、江戸時代から錦鯉の養殖が続いています。稲作の棚田のような棚池で養殖が行われており、景観もとても美しいので、秋の池揚げの時期には海外のバイヤーさんたちもたくさんやってきます。

共通点は水生生物への興味


高倉:僕は、いまでこそ好きでよく行きますが、実は長い間海が怖かったんです。子どものころは、サンゴ礁のある海に親に連れていってもらっても、リーフエッジが 怖くて……。

渡辺:吸い込まれたりしますからね。そういう高倉さんが、どうしていまのお仕事に?

高倉:父が水槽で魚を飼うのが好きで、ものごころついたときから自宅に水槽がありました。それで僕も好きになって。最初はクマノミなど、かわいい魚から入ったのですが、だんだん飼育の難易度が上がっていき、高校生のときに、いちばん難しいサンゴを育て始めたことが、イノカの原点になっていると思います。

渡辺:私の自宅にも、アクアリウムがありました。私の場合は親ではなく、私自身が好きで、小学生のころに買ってもらったんです。

高倉:お互い、子どものころに夢中になったアクアリウムが現在の活動にもつながっていますね。僕は大学・大学院は工学系に進んだのですが、院の1年生くらいまで はエンジニアだったんです。IoT分野で物やアプリをつくっていたので、水生動物の世界からは一度離れています。でも、渡辺さんは……。

渡辺:ずっと好きなことを続けています。中学生のとき、魚を飼うという趣味をどうしたら社会で生かせるかと考えていたとき、テレビで漁業資源の枯渇問題を紹介していて、解決策は養殖だと。それなら自分にできるのではないかと考え、水産高校に進みました。そこで、日本はエビ消費大国だけれど、東南アジアの生産国では、養殖場をつくるためにマングローブの林が伐採されていると知り、環境に優しい養殖技術の海外普及をやろうと決心したんです。そして、大学で養殖を学んだ後にJICA海外協力隊としてフィリピンに赴任し、マニラから車で10時間以上かかる標高1,000m級の山の中でドジョウの養殖を始めました。

 
渡辺樹里 長岡市地域おこし協力隊 

高倉:ひとりでですか?

渡辺:ドジョウの養殖はそれまで行われていなかったので前任者はいなくて、派遣されたのは私ひとりでした。

高倉:すごい。

渡辺:高倉さんはどうしてサンゴの世界に戻ってこられたのでしょうか。

高倉:IoTのエンジニアリングで会社をつくったりもしたのですが、イマイチしっくりこなかったんです。自分にしかできないことってなんだろうと悩んでいるときに、リバネスCEOの丸幸弘さんから「何か好きなことはないの?」と尋ねられたんです。僕の好きなことといえば、アクアリウムです。そこからいろいろな人に話を聞いてみたら、愛好家も研究者もそれぞれに困っていることがあることがわかりました。ここをマッチングさせたら絶対にうまくいくと思って立ち上げたのがイノカです。でも、最初のころは売れるものといったら水槽くらいしかありませんでした。一緒にイノカを始めたチーフアクアリウムオフィサーの増田直記とふたりで頭を抱えていたこともありました。だから、さきほど渡辺さんがフィリピンに前任者がいない環境にひとりで赴いたと聞いて、すごいなと思ったんです。

渡辺:最初は自分ひとりでも、話を聞いてくれる人、わかってくれる人、協力してくれる人が増えて、チームができていきます。同じ目標に向かって力を合わせて成果が出ると、本当にうれしいですよね。

高倉:うちのチームもそうやって大きくなってきました。今度はそのチームで外部に働きかけることによって、サンゴと海を救うことが、人間と地球を救うという話を理解してくれる企業が増えてきたこともうれしいです。

渡辺:よくわかります。私の場合は、JICA海外協力隊の任期を延長させてもらって、合計3年8カ月フィリピンにいました。その間に一度日本へ帰国したのですが、 再びフィリピンに戻ったときには、養殖場が現地の人によってきちんと運営されていたんです。さらに、評判を聞きつけた周辺の村の人たちにも、私が目指してきた環境に優しい養殖技術が広まっていました。先日、当時の同僚からメールが届き、養殖事業で新しく大きな建物を建てることになったと知りました。あのときみんなで頑張って本当によかったとあらためて思いましたし、いま、自分の目標に向かって頑張っていられるのは、あの体験が自分の原点になっているからだとつくづく感じています。

高倉:あきらめずにトライし続けること、そして、小さくてもいいから成果を出してチームで喜びあうこと。それがすべてだと僕も思います。諦めさえしなければ、次のステップへと移っていけますね。

 
高倉葉太 イノカCEO 

渡辺:私は去年までずっと養殖を海外に普及させる仕事をしてきたのですが、今年から新潟に移住して、山間地での養殖の技術を学んでいます。今後は、鯉の仕事に余裕ができる冬は途上国に出向いて、食用魚の養殖技術を伝えたい。それが次のステップですね。

高倉:イノカの場合、まだ都会で技術の開発をやっている段階で、その技術を社会に実装するまでにはもう何段階かステップがあります。世界的に生物多様性を重視する流れが強まるなかで、我々が技術をきちんと確立させ、沖縄やフィリピン、インドネシアなどで実装し、日本を生物多様性でイニシアチブを握る存在にしていきたいんです。

渡辺:社会への実装となると対象はサンゴに限らず、広がりそうですね。淡水魚の養殖にも……。

高倉:関係してきますね。渡辺さんとは今日初めてお会いしましたが、これからはいろいろな場面で出会うことになりそうな気がしています。

JICA海外協力隊公式ウェブサイト
https://www.jica.go.jp/volunteer/index.html


たかくら・ようた◎東京大学工学部を卒業、同大学院暦本純一研究室で機械学習を用いた楽器の練習支援の研究を行う。ハードウエア開発企業の設立を経て、2019年にAIとIoTで生態系を再現するイノカを創業。

わたなべ・じゅり◎JICA海外協力隊に参加後、開発コンサルタント会社に就職。東京大学大学院修士課程修了後、長岡市地域おこし協力隊として長岡市錦鯉養殖組合で活動中。

Promoted by JICA/ text by Hiroyuki Okada / photographs by Kenta Yoshizawa