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平手康司(名古屋青年会議所 副理事長)と大村秀章(愛知県知事)。前列左から森口佳音、辻はぐみ、野村有美、中野康介、真鍋卓人(名古屋ビジュアルアーツ)。※撮影時のみマスクを外しています。

名古屋において「修練」「奉仕」「友情」という三信条のもと、「明るい豊かな社会」の実現を目指し、率先して行動する青年経済人の団体。それが公益社団法人名古屋青年会議所だ。激動の2021年を振り返り、また未来へと力強く歩き出すために、同会議所の副理事長を務める平手康司が愛知県のトップである大村秀章知事と対話した。また「これからの名古屋を一緒に考える」というテーマのもとで今年一年、名古屋青年会議所とさまざまな活動を共にしてきた専門学校名古屋ビジュアルアーツの学生たちが大村知事に熱い質問をぶつけた。




今回は、第1部が名古屋青年会議所の平手副理事長と大村愛知県知事、第2部が名古屋ビジュアルアーツの学生たちと大村知事という2部構成となる。第1部は、まだ避けては通れないCOVID-19の議題から始まった。最初のテーマは「新型コロナウイルス感染拡大防止対策およびコロナ禍での活動について」。21年、名古屋青年会議所はミッションとして「名古屋の再始動」を掲げ、コロナ禍対策事業と並行して、昨年はコロナ禍で停滞していたイベントのリアル開催を行ってきた。

平手康司(以下、平手) 今年の3月に名古屋青年会議所が行った「効果的な防災・防疫を対策する事業」では名古屋市にも協力していただき、有識者や多くの企業の皆さまと協議する場を設け、防疫対策の知見を得ながら地域を活性化させる事業を再始動し、地域が許容するイベントの枠組みを模索しました。青年会議所内でも賛否両論はありましたが、正確なエビデンスを待つより、アジャイルで進めていくことを選択しています。大村知事は、青年会議所がコロナ禍で市民に向けて講演会やワークショップなどを開催することについて、どのようにお考えでしょうか。

大村秀章愛知県知事(以下、大村) かつて、私も青年会議所のメンバーでした。さまざまな社会課題の解決に向けて、市民の皆さんと認識や価値観を共有しながら活動していくのは素晴らしいことです。コロナ禍においては多くの意見があったかと思いますが、マスク、手指消毒、密を避ける、換気するといった基本的な感染防止対策をしっかりと講じていただければ、感染は広がっていかないと実証・確認されています。

愛知県では8月末に感染者が2,339人となりましたが、9月に100人くらいまでに減り、10月に2桁、11月には1桁に転じました。入院患者も一時は1,000人を超えていましたが、現在は10人前後です。つまり、積極的に社会と経済を回していくフェーズに入っています。引き続き、名古屋青年会議所の皆さんもしっかりと感染防止対策をしていただいたうえで、活動を進めるのがいいのではないかと考えます。感染防止対策を取りながら、日常を取り戻していく工夫が必要です。名古屋青年会議所の皆さんにも、この工夫をお願いできればと思っています。

平手 ありがとうございます。青年会議所には満20歳から満40歳までの男女が集まり、この名古屋青年会議所にもさまざまな職業で働く青年経済人が参加しているので、日々、多様な意見が生まれています。活発な議論を続けながら、日常を取り戻していく工夫を積み重ねていきたいと思います。

ふたつめのテーマは、「ICT社会の推進について」。コロナ禍の緊急事態宣言下ではオンライン授業の必要性が叫ばれたが、日本の未来を支える子どもたちに向けたICT教育の取り組みは喫緊の課題だ。

平手 名古屋青年会議所では、教育の分野で名古屋市教育委員会との協働を続けています。GIGAスクール構想が提言されたことから、今年度はICT体験型課外授業に加えて、ICT教育を行う人材を育成するために教育プログラムの作成と導入を行ってきました。これは、対象生徒の親世代が多い青年会議所内でもホットなトピックスでした。5月には、名古屋市立小中学校PTA協議会の鬼頭恵助会長、愛知教育大学創造科学系の磯部征尊准教授を招いたパネルディスカッションを開催し、ICT教育のメリットと普及の障害要因について議論してきました。そのなかで、ICTの具体的な活用について理解できたという回答が得られた一方、現在の教職員の方々が充分にICTを活用できていないことやICT機器の活用による効果が伝わりづらいといった問題点も浮き彫りになりました。

大村 このコロナ禍でオンラインによるICT教育が必須となりました。アフターコロナにおいてもICT教育は世界の潮流として必然だと思います。ICT教育の普及に向けての論点は、ふたつあると考えます。ひとつは、ハードです。愛知県では、国のGIGAスクールの補助金を活用して市町村が小中学校の児童生徒に1人1台の情報端末を配布しています。高校においては、来年度から全県立高等学校でBYOD(Bring Your Own Device=自前のタブレットを持ち込んで授業で活用する方式)、またはCYOD(Choose Your Own Device=対象機種を絞って選択肢のなかから各家庭で端末を購入する導入方式)により、1人1台の情報端末を活用した教育を実現するように指導しています。

このようにしてハードが整っても、ソフトが充実しなければICT教育は機能しません。もうひとつの論点は、教員の指導力向上です。外部の有識者からなる義務教育問題研究協議会では、昨年度から「ICT機器を活用した教育活動の在り方について」をテーマに協議を進めています。ICT機器を活用した教育活動の指針となるリーフレットや、授業における効果的な活用を示した事例集を作成し、県内の市町村教育委員会に還元することで各学校におけるICT教育研修に役立てています。また、小中高のモデル校で公開授業研究会を開催するなど、ICTを活用した授業実践の成果や知見について県内の教員への普及・啓発を図っています。また、現在は県が予算を確保して、私立を含めた県内の高校生全員に無料でスタディサプリを使えるようにしています。

平手 名古屋青年会議所が、ICT教育の普及に向けて何かご協力できることがありましたらお聞かせください。



大村 名古屋青年会議所には建設、医療、法律などのさまざまな業種から、会社員、フリーランス、経営者などの多様な青年経済人が参加されていますね。そうした各分野の専門家の皆さんに講義や実技指導をしていただけたらと考えています。例えば、小学校から高校までの各レベルに合わせたプログラミングのご指導をいただけるとありがたいです。

最後のテーマは、「都市ブランドイメージから考える名古屋の魅力について」。いかにして名古屋の魅力を市外、県外、国外に発信していくか。アフターコロナで観光客が戻ってくるときに向けて、希望となり得るニュースはあるか。

平手 名古屋市が発表した「都市ブランドイメージ調査」では、全国主要8都市のなかで「最も魅力に感じる都市」を尋ねたところ、名古屋と答えた人は3.5%で最下位でした(1位は札幌市の22.8%)。名古屋青年会議所では、市民の感じる「名古屋の魅力」が市外の人にとって興味を惹くものとなっていないことや、魅力が充分に伝わっていないことが最大の要因だと分析しています。そのため、名古屋の魅力を再認識し、発信することを目的に活動を展開してきました。7月には、名古屋のシンボルのひとつであるMIRAI TOWER周辺で、音楽噴水ショー、イルミネーション、メッセージピラーを実施しました。

多くの市民の方にご参加いただき、直接の参加者だけでなく、通りがかりの市民に対しても名古屋の魅力を再認識していただける結果となりました。また、名古屋市観光文化交流局や名古屋観光コンベンションビューロー、名古屋の観光系の学生と協力したAIチャットボットの作成と発信、名古屋の夜の観光スポットを発信するナイトタイムエコノミーの発信も行っています。未来に向けて、愛知県としては観光客の誘致についてどのようことをお考えでしょうか。

大村 よそに住む人が名古屋に魅力を感じるかどうかは、「自分が観光に行ってみたいかどうか」で決まると思います。名古屋には全国的に知名度のある観光スポットがたくさんあるわけではないので、そこが調査の結果に現れているのでしょう。愛知には産業力・経済力があり、県民ひとりあたりの所得は東京に次いで2位です。グローバルな企業があり、仕事があり、地域に勢いがある。名古屋圏を中心に愛知は暮らしやすいと感じてくださる県民は多いと思うのですが、観光地としての魅力となるとまた別ですね。

しかし、そうした状況も22年には変わります。愛・地球博記念公園内に「ジブリパーク」がオープンするからです。まずは22年秋に3つのエリアが開業し、さらに概ねその1年後に2つのエリアが開業する予定です。日本が世界に誇るスタジオジブリのコンテンツが注ぎ込まれるパークですから、開業後は人の流れが変わると思います。経済波及効果は大きいでしょう。また、25年夏には名古屋市の名城公園北園内に「愛知県新体育館」がオープンします。建築デザインは隈研吾さんで、世界でもトップクラスのスマートアリーナになる予定です。こけら落としには、NBAのレイカーズを呼びたいと考えています。

平手 「ジブリパーク」のオープンは、本当に待ち遠しいですね。国内だけでなく、アフターコロナで海外からの観光客が戻ってくれば、人の流れが著しく変わりそうです。名古屋市にも波及効果でいい波が押し寄せてくると思います。「愛知県新体育館」は、愛知県と名古屋市が共催する26年夏季アジア大会のメインアリーナになると聞いています。名古屋青年会議所も愛知県との協業で、何かお役に立てることがないかと考えているところです。

大村 これからも国内外から多くの人を呼び込む仕掛けづくりを進めて、愛知を盛り上げていきたいと考えています。名古屋青年会議所の皆さんの地域への想い、そして行動力は存じ上げています。ぜひ一緒に盛り上げていきましょう。よろしくお願いします。

平手 こちらこそ、よろしくお願いいたします。



ここからの第2部では、名古屋ビジュアルアーツの学生たちが大村知事に質問をぶつけていく。

——— 私たちは今年の名古屋市長選で、名古屋青年会議所が行った「センキョ割(飲食店などの協力により、選挙に行ったらお得なサービスが受けられる仕組み)」の協力店舗への取材を行いました。この体験によって若者の投票率の低さという社会問題が身近に感じられ、以前よりも政治のことを考えるようになりました。大村知事は、どうすれば若者の政治参画意識は高まると思われますか。また、そのために私たち学生は当事者としてどのような行動を起こすべきだとお考えでしょうか。

大村 確かに、オーストラリアのように投票に行かなかったら罰金があるような国は、投票率が90%を超えています。しかしながら、日本のいろいろな選挙もアメリカの大統領選挙も50%台だったりして、民主主義の国ではどこも投票率の低さが問題となっています。国や地域をつくっていくのは、一人ひとりの投票です。地域や社会にはいろいろな問題がありますが、まずは身近な問題から関心をもって、自分の頭で考えて、貴重な1票を入れていただくことだと思います。そのためにも政治家は時代に則した、わかりやすいプロジェクトを立ち上げて、皆さんにしっかりと語りかけていくことが大事だと考えています。

——— 今後、リニアの開通などにより、名古屋から東京や大阪に行ってしまう人が増えるかもしれませんし、逆に東京と大阪から来る人が増えるかもしれません。大村知事は、10年後の名古屋や愛知はどうなっていると思われますか。

大村 27年度にリニア中央新幹線の東京—名古屋区間が開通したら、両都市を40分で行き来できるようになります。40分といえば、東京では地下鉄の時間軸です。リニア開通には、東京と名古屋が隣町になるようなインパクトがありますね。日本のGDPを県別に見ていくと、製造業が占める割合の全国平均は2割です。それに対して、愛知は4割。しかも、付加価値の高い製造業として進化しながら生き残っています。東京—名古屋間が40分になると、そうした愛知の企業が東京のソフト人材を雇用できるようになります。東京に拠点を置かなくても採用が可能になるからです。これは、大きなメリットになると考えています。いまは、リモートワークも広がっていますしね。

それから東京の強みは、人が人を感動させるエンターテインメントがあること。エンターテインメントがあるところに人は集まりますから。愛知もジブリパークのようなエンターテインメントに注力していく必要があります。

いま、自動車産業も進化しているところです。23年にはトヨタ自動車の新研究開発施設が稼働します。24年にはスタートアップの創出・育成・展開・誘致を図るための中核支援拠点施設「STATION Ai」がソフトバンクによって開業する予定です。このような日本を代表する企業と複合的にプロジェクトを進めながら、化学反応を起こしつつ、リニアの開通とその先を見据えていきたいと思います。

——— 昨年来のコロナ禍で授業がリモートになったり、アルバイトも減ったり、入学前に思い描いていた学生生活を送れていない学生が多くいます。コロナ禍を過ごす学生にメッセージをお願いできますでしょうか。

大村 本当に大変なときにぶつかってしまったことを思うと、私も胸が痛みます。通常のキャンパスライフを送れていないがために、同級生と実際に会ってさまざまな活動をしたり、遊びに行ったりする機会が失われてきたこと。これについては、本当に胸が痛みます。しかし、ようやく第5波が収束しました。第6波がこれからくるかも知れませんが、いまのワクチンは効いているので第5波ほどの大きな波にはならないと思います。皆さんが、徐々にでも日常を取り戻していただけることを願っています。夜明けは近いと思いますので、それぞれの目標をもって、どうかがんばってください。




大村 秀章◎1960年、愛知県生まれ。愛知県知事。東京大学法学部卒業後、82年農林水産省に入省。96年の初当選から連続5期衆議院議員を務め、内閣府大臣政務官や内閣府副大臣などを歴任。2011年から現職。19年愛知県知事選挙の最多票となる177万4000票あまりを獲得した。

平手 康司◎1981年、愛知県生まれ。ビル関連工事、不動産コンサルティングを行うコウ・ファシリティズ代表取締役。2014年、公益社団法人名古屋青年会議所入会。21年には副理事長として、「名古屋の再始動」の旗印のもと、多くリアルイベントを名古屋で開催した。

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Promoted by 公益社団法人 名古屋青年会議所 / text by Kiyoto Kuniryo / photographs by Kiyoshi Hirasawa / edit by Yasumasa Akashi

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