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2021.11.16 16:00

【Insect food×エコロギー】 “昆虫食”が健康にも地球環境にも理想的な「プラネタリーヘルス」へとつながる 〜「ポストコロナ時代のヘルスケア・パラダイムシフト」#2

近年、食糧危機の解決策のひとつとして、 “昆虫食”が高い関心を集めている。環境面や健康面で多くの利点と可能性をもつ昆虫食には、世界中の起業家や投資家たちが熱い視線を注ぎ、このビジネスへの期待は高まるばかりだ。

海外では大手スーパーや食品メーカーが昆虫食の分野に参入するなか、日本でいち早く“コオロギ”に着目し、本場カンボジアで事業を立ち上げたのが昆虫食スタートアップ「エコロギー」だ。若き起業家、葦苅が目指す世界とは──。

当連載では、三菱リサーチ&コンサルティング(以下、MURC)が、ヘルスケア業界に変革をもたらすと期待する国内外の企業・団体にスポットを当て、「グローバルヘルス」「プラネタリーヘルス」といった視点からポストコロナ時代のヘルスケアに迫っていく。



栄養補助食品としての昆虫食の可能性


大学の模擬国連サークルで国際問題をディスカッションしていたひとりの青年が、現実の問題を解決するためのキーパーソンとして注目を集めている。国際連合食糧農業機関(FAO)は2013年、食品及び飼料における昆虫類の役割に注目した報告書を公表した。当時、早稲田大学の学生であったエコロギー代表取締役の葦苅晟矢は、報告書に刺激を受けて大学発のベンチャー企業を立ち上げた。社名の「エコロギー」には、コオロギをタンパク資源とする新たな食料生産システムへの思いが込められている。

「エコロギーは、未利用資源を活用する資源循環型の食料生産システムを確立して、地球上のすべての生物が健やかに生きていくことができる社会の実現を目指して起業しました。2019年から、昆虫食の文化があるカンボジアで、コオロギを新たなタンパク資源とするための事業を展開しています。

日本でもFAO報告書以降、昆虫食がプチブームになっていますが、いまだゲテモノ扱いでエンタメ的な要素が強いと思います。ですので、私たちはコオロギが持つ健康的・機能的な価値を日本、そしてグローバルに啓発して、おいしくて健康にいい昆虫食を普及させていきたいと考えています」(葦苅)


コオロギをタンパク資源とする新たな食料生産システムを構築するエコロギーの代表取締役 葦苅晟矢

日本にもイナゴや蜂の子の甘露煮があるように、実は昆虫食は身近な存在だ。FAO報告書によれば、食用されている昆虫は1,900種類以上で、世界で約20億人が昆虫を食べる習慣を有している。エコロギーが拠点を置くカンボジアの昆虫食文化はどのようになっているのか。

「カンボジアではコオロギや蚕などが屋台で普通に販売されていて、揚げコオロギをスナック感覚で食べています。ですが、コオロギがもつタンパク質やミネラルなど栄養面についてはほとんど認識されていません。だからこそ、栄養補助食品としてのコオロギ市場を開拓できる余地があると思います」(同)

グローバルヘルスの視点から見たコオロギの価値


エコロギーが目指す新たな資源循環型の食料生産システムについて、三菱UFJリサーチ&コンサルティング ソーシャルインパクト・パートナーシップ事業部副部長の長谷川裕は、ビジネスとグローバルヘルスの両面から期待を寄せる。

「昆虫食はFAO報告書の公表以降、健康意識・環境意識が高い欧米の消費者を中心に関心が高まり、2018年にEUが昆虫をノベルフードとして認めたことが市場拡大を後押ししています。市場規模は2019年度の70億円から、2025年には1,000億円規模に達するとの予測があり、新たなビジネスチャンスと見て多くの企業が参入している状況です。

そのなかでエコロギーは単なる食品メーカーとしてのポジションではなく、生産―加工―流通―消費―廃棄というフードシステムのあり方そのものの変革に、中長期目線で挑戦している印象です。また、グローバルヘルスの視点では、エコロギーの事業は新興国・発展途上国の栄養改善事業への取り組みに直結しているといえるでしょう」(長谷川)


三菱UFJリサーチ&コンサルティング ソーシャルインパクト・パートナーシップ事業部副部長 長谷川裕

実際、エコロギーが取り組む「低栄養妊婦の栄養改善プロジェクト」は2021年5月、グローバルヘルス分野に挑む若きリーダーを日本から発掘して支援するVision Hacker Awards 2021 for SDG3(NPO法人ETIC.が運営)でシード賞を受賞している。

「どのような人たちにコオロギを届けたら喜ばれるのかを考えたときに、カンボジアの妊婦の半分以上が貧血状態であり、タンパク質やミネラル、ビタミンなど栄養不足にあることを知りました。コオロギは妊婦に必要なタンパク質や鉄分、亜鉛の含有量が食品中トップクラスのため、妊婦の栄養改善にアプローチできると考えたのです。

現在、2025年までにカンボジアの妊婦の30%にあたる約11万人に安価にコオロギスナックを販売できる仕組みを整備しています。そして、ゆくゆくは離乳食から学校給食へと拡大して、コオロギの栄養素がゆりかごから墓場までのヒューマンヘルスケアに貢献できることを目指していきたいです」(葦苅)

タンパク質含有比率の比較


グローバルヘルス分野では各国政府やドナー、企業、NGOなどが協力して世界の栄養問題に取り組んでいる。エコロギーの事業は持続可能な開発目標(SDGs)の目標1「貧困をなくそう」、目標2「飢餓をゼロに」をはじめとする複数のゴールに向けて最前線でコミットしており、加えて、コオロギの生産はCO2排出や水、飼料の必要量が少なく環境にも優しい。まさしくSDGs時代の先進的なビジネスモデルだといえる。そこに長谷川は新たな概念である「プラネタリーヘルス」との親和性を見出す。

「2015年にロックフェラー財団と医学誌『ランセット』が提唱したプラネタリーヘルスとは、ヒトと生態系、地球環境が相互依存関係にあるとの前提で、すべての生態系と地球の健康を一体のものと考える概念です。国際社会で注目されつつあるものの、まだまだアカデミア寄りの概念だと感じます。

今後、企業がプラネタリーヘルスを掲げて活動することによって、新たなステークホルダーとつながったり、資金獲得のチャンスが得られたりと、事業が飛躍する可能性があるでしょう。日本でプラネタリーヘルスを掲げる企業はごくわずかですが、エコロギーの理念と事業はまさにその概念に合致しており、さらなる成長を期待しています」(長谷川)

エコロギーが夢見る昆虫食の未来


プラネタリーヘルスの概念からも先進事例として期待されているエコロギーだが、昆虫食がメジャーになるために乗り越えなければならない壁は決して低くはない。昆虫食を忌諱する感情がそれだ。エコロギーはその壁をどのようにして乗り越えていくのだろうか。

「今年12月7日、8日に開催される東京栄養サミットは、大きなチャンスです。私たちはコオロギを幅広い層に普及することを目的としていますので、味気ない栄養源ではなく、温かい食事としてコオロギを食してもらうことが大切だと考えます。その第一歩として、九州の会社と共同開発したコオロギの成分を含む醤油と味噌を年内に発売する予定です。

コオロギは旨味成分の素となるアミノ酸が豊富なので、おいしい出汁を含んだ醤油・味噌を堪能できます。『独立行政法人国際協力機構(JICA)中部』で私たちのコオロギを使った展示会が行われますので、ぜひとも体験していただきたいです」(葦苅)


対談はオンラインにて行われた。現在、葦苅はカンボジアに拠点を移し、コオロギ食の可能性を追求している。

エコロギーの戦略は、コオロギの健康的・機能的な価値を訴求しつつ、食の体験を提供することで普及につなげるというものだ。

「エコロギーは、生産から廃棄に至るフードチェーン全体を手がけていることに加え、アカデミアと共同して研究開発にも注力しています。エビデンスベースでコオロギの食品としての価値を高めようと取り組まれているところに、エコロギーの優位性の源泉があると感じています」(長谷川)

2025年には1,000億円規模に達すると予測される昆虫食の分野で成功するには、競合優位性も欠かすことができない。葦苅はエコロギーの差異化戦略を語る。

「エコロギーの競合優位性は、コオロギの生産から手がけていることです。日本でも昆虫食を取り扱うメーカーは増えていますが、ほとんどは原材料を輸入して商品開発しています。最上流の生産から手がけることによって、安全、安定、安価なコオロギを提供できることはもちろん、雑食というコオロギの性質を生かして機能性を強化したスーパーコオロギを生み出すことができます。与える餌を変えることによって、例えば、アスリートに必要なタンパク質や妊婦に必要なミネラルを増やすなど、目的に応じて機能性を強化できるのです。

そのために大学と共同でコオロギの機能性解析を行い、特定の栄養素がどの過程で濃縮されるかエビデンスを取り、さらに大規模な食料危機や将来のタンパク源の不足を視野に入れて、ゲノム育種型コオロギの開発も進めています」(葦苅)

葦苅は地球に眠るすべての未利用資源の活用に夢を馳せる。その第一弾がコオロギだ。グローバルヘルスからプラネタリーヘルスへと拡張する概念のなかで、エコロギーが果たす役割とそこへの期待も日増しに大きくなっている。
 


葦苅晟矢(あしかり・せいや)◎株式会社エコロギー代表取締役CEO。1993年生まれ。早稲田大学商学部卒業。早稲田大学大学院先進理工学研究科一貫制博士課程に進学後、早稲田大学朝日研究室にて昆虫コオロギの資源化、利活用に関する研究に取り組む。この研究成果をもとに2017年にエコロギーを設立。現在はカンボジアを拠点に事業開発に携わる。2016年文部科学大臣賞受賞。2019年Forbes 30 Under 30 Japan選出。

エコロギー
https://ecologgie.com/

連載「ポストコロナ時代のヘルスケア・パラダイムシフト」はこちら

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