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2021.11.02

「京阪神スタートアップ アカデミア・コアリション」キックオフ・カンファレンス 「未来をつくるU30が語る。なぜ挑むのか collaboration with Forbes JAPAN 30 UNDER 30」

いま関西エリアでは、スタートアップ育成の機運が高まっている。15の大学と産業界や金融界から41の機関が参画する広域プラットフォーム「京阪神スタートアップ アカデミア・コアリション(KSAC)」が立ち上げられ、大学間のネットワークや経済団体、自治体との連携を強化することで、社会変革や課題解決につながるスタートアップが持続的に創出される体制づくりを目指している。

9月29日には、同コアリションのキックオフ・カンファレンスとしてオンラインイベント「~未来をつくる~ 様々な分野で活躍する、未来をつくる人々が大集合!」が開催された。そのなかから「未来をつくるU30が語る。なぜ挑むのか collaboration with Forbes JAPAN 30 UNDER 30」の模様をお伝えする。


社会課題に立ち向かう3人の若き起業家たち


「なぜ挑戦するのか」--モデレーターを務めたMIYACO代表取締役の中馬一登からそう問いかけられると、Forbes JAPANの「30 UNDER 30」に選出された3名の起業家たちは、それぞれ熱い想いを語った。

ストレス評価法とセルフケアサポートを提供するイヴケア代表取締役社長CEOの五十棲(いそずみ)計は、ウェルビーイングの追求を理由に挙げた。

「これまでの医療や健康に対する考え方は、悪いものをゼロにしようというのがほとんどですが、いまの状態をよりよくしていくことがウェルビーイングです。例えば社会で問題になっている生産性も、ウェルビーイングが欠けていると上がっていかないというデータがあります。もっとみんなが自分らしく生きることで社会の成長につながる世の中にしたい。そんな課題感をもって、事業を行っています」


五十棲 計 イヴケア代表取締役社長CEO

外国人のビザ取得をサポートするone visa代表取締役の岡村アルベルトは、幼少時にペルー人の友達が強制送還された原体験が起業のきっかけになっている。

「外国籍の方は、いやでも自分が外国籍であることを意識させられるタイミングが数年に1度あります。在留資格の更新のときに、自分がこの国にいていいのかを審査されるのです。人は、生まれる場所も家庭も選ぶことができません。生まれた場所によってどういうふうに生活していくかがある程度形成されてしまい、先進国と発展途上国ではどうしても差があります。自分が住みたい土地に移住できる世の中をつくりたいと思い、これまでやってきました」


岡村アルベルト one visa代表取締役

IT分野のジェンダーギャップの解消を目指すWaffle代表理事の田中沙弥果は、AIが女性差別や人種差別などマイノリティに不利益が起きた米国の事例も示しながら、国内のIT業界では女性技術者が2割程度しかいないなかで、ジェンダーギャップの解消がこれからの社会を豊かにすると考え起業したと話す。

「国内の大学の現状を調べてみると、日本では工学部の女性比率が15%で、シミュレーション上では、これが50対50になるには117年程度かかると言われています。でもそんなに待っていられません。社会基盤がIT技術に支えられる世の中では、それらを男性だけでつくっていくのではなく、多様な人たちの声が反映される社会であるべきだと思います。マイノリティの一部である女性を取り巻く環境を改善していくことがその第一歩だと思っています」


田中沙弥果 Waffle代表理事

当日、別のセッションでは、神山まるごと高等専門学校(仮称)クリエイティブディレクターの山川咲が「起業をあたり前の存在にしていきたい」という決意を表明した。中馬はその発言を引き合いに出し、起業を当たり前の選択肢にするにはどうしたらいいかを問題提起した。

母親の影響で小さい頃から起業が選択肢にあった岡村は、大学に入り、「起業は難しくてリスクが高いもの」ととらえる人が多いことに驚いたという。そうした多くの人が抱えているイメージが、若者の起業を阻害している。その状況を変えるには、早い段階での啓発が必要だと岡村は主張する。

「起業したいと思っても、社会的にリスクがあると分類されてしまうと、どうしてもその選択肢をとりにくくなるのが現状としてあります。社長の仕事は多岐にわたりますが、具体的に何をするかを噛み砕いて子どものうちに説明していけば、社会的に認知され、選択肢のひとつと考えてもらえるのではないでしょうか」

五十棲も起業するにあたり、「親に反対されなかったことが大きかった」と岡村の発言に同調した。子どもたちが社長やユーチューバーになりたいと言ったときに、メリットとデメリットをしっかりと説明できる教育者の存在の必要性を説いた。

田中は五十棲の発言に同意したうえで、日本の教育現場に対してこう苦言を呈す。

「日本の学校現場は、いままで、さまざまな経験をもつ人たちが教える機会があまりありませんでした。特に地方などでは、さまざまな仕事が存在することを知らずに社会に出る子どもたちもいて、進路の選択肢を狭める一因でもあります。先生方もそうですが保護者も含めて、その方々の価値観や職業観を変えていくのはなかなか難しいと思います。大学で起業家を育成するといっても、なかには、実務経験のない先生方が教えているところもあり、起業したことがないのに、どうやって教えるのだろうと正直思うこともあります。起業するには何がハードルで、キャリアとしてどういうメリットがあるのかなどを、経験者が、学校現場で教えるのがいちばんの近道なのではないかと思います」

起業家の誰もが成功の果実を享受できるわけではない


起業家を育成する気運は高まっているが、誰もが成功できるわけではない。中馬は、投資家の期待に応えられないばかりにプレッシャーを感じて病んでしまい、事業を止めてしまった若者を多く見てきた。そういう姿を目にすると、「起業するのはどうなのかと思うこともある」と率直な気持ちを吐露した。


中馬一登 MIYACO代表取締役

それに対し五十棲は、自身もプレッシャーのなかで精神的に不安定になった瞬間があったという経験を打ち明け、「おすすめしない職業です」と断言する。

「起業家は、全部を自分で背負っていく職業だと思います。世の中を変えると手を挙げても、借金をするかもしれません。そういうすべてのデメリットを承知のうえで手を挙げるのは、なかなか勇気のいることだと思います。誰かにやめろと言われようが、どんなデメリットがあろうが最後までやり抜く。そういう人たちだけが目指すべきです」

一方、田中は、「日本の教育には学んだことを社会に還元するアウトプットが抜けている。自分が学び、課題に感じたことを解決する一つの手段として起業があるといいと思います」と述べた。

岡村は「起業家は誰でもなれるけど、重要なのは続けること」としながらも、失敗にも意義があると語る。

「起業家が増えるのはいいことだと思うのですが、全員が成功するわけではない。でも、失敗した方々が一般の企業に戻っていくことは、世の中的にもいいことだと思います。起業を経験して、起業を理解する人が増えれば、その次の世代は起業がより身近になるのではないでしょうか」

岡村の発言を受け五十棲は、失敗に対して寛容な社会の必要性を主張する。

「いまの世の中は、失敗したら本当にゼロになってしまうケースが多くみられます。そうならないためにも、失敗することがデメリットにならないような社会が必要であると思います。もう一度自分で起業するか、あるいは他の職をすぐに選べるような社会制度が構築できれば、起業を経験した方がそこで得た、知見やマインドがどんどん次の世代に広まるようになると思います」

解決すべき課題は地方に眠っている


起業に対する意識を変えていくべきという意見が多かったが、では、大学で起業家が生まれるような仕組みを構築するにはどうしたらいいのだろうか。中馬のその問いかけに対し五十棲は、自身が滋賀大学の出身であることから、地方の大学がもつ可能性について言及する。

「私は起業するうえでいちばん大事なのは、課題に出合うことだと思っていますが、地方のほうが課題ははっきりしている場合が多いです。例えば滋賀には琵琶湖に関する課題がいっぱい転がっていて、琵琶湖に興味がなくても課題が見つかることがあります。反対に都市の大学は、起業家を育てるノウハウをおもちです。地方で課題を発見して、都市にもち帰ってその課題の規模を大きくして事業として成り立たせるという循環があると、おもしろいのではないかと今日のお話を聞いていて思いました」

その意見に皆が賛同した。「起業家はおすすめしない」と発言していた五十棲だが、多くの若き起業家が現れることを願っているのかもしれない。最後に中馬が「起業家の幸せとは?」と問いかけると、五十棲はこう答えた。

「自分が知らなかった自分や、自分がわからなかった本当の夢というのが、どんどんクリアになっていく感覚がいま、私にはあります。行動しながらつくっていくと、自分が頭で思っていたのと違うものができ上がっていく。でもそれが形として見えたときに、自分がやりたかったことが逆にわかったり、これをベースに自分の思い描いていた夢をアップデートできたりします。常に何をつくるかわからないワクワク感を得られるのが、起業家の特典です」

自分がやりたかったことが見えてくる。それこそが幸せだと言うのだ。

中馬は五十棲の発言に同調したうえで、起業家を育成するためには、自分が信じている道を見せられるような取り組みが必要であると強調し、セッションを締めくくった。

「KSACや関西の大学がみんなで手を取り合って、一人ひとりに自分しか見えない世界を見せることができたら、あとは勝手に走っていくはずです。自走できる起業家がたくさん生まれると思うので、彼らの興味に寄り添ってあげるのが、先輩起業家としての役割だと思っていますし、起業家の育成を掲げる団体や組織は、それを意識するべきです」

京阪神スタートアップ アカデミア・コアリション

Promoted by 京阪神スタートアップ アカデミア・コアリション / text by Fumihiko Ohashi / edit by Akio Takashiro

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