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2021.09.24 16:00

ミスミがAI活用で目指す“ものづくりの自動化”とは

PwCコンサルティング パートナー 矢澤嘉治 ミスミグループ本社常務執行役員 ID企業体社長 吉田光伸

日本経済を支えてきた製造業が、難しい局面に立たされている。生産年齢人口は加速度的に減少して人手不足が深刻化し、2000年に世界1位だった労働生産性は18年には16位となった。そこで生産性を高めるためDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が不可欠となってきたが、苦戦している企業が圧倒的多数を占めているのが現実だ。

そんな製造業にパラダイムシフトが起こりつつある。仕かけ役を担うのが、AIを活用したオンライン機械部品調達サービス「meviy(メヴィー)」。部品調達のリードタイムが長いのは製造業界の常識だったが、なんと従来比で92%の短縮に成功しているのだ。このイノベーションはいかにして成し遂げられたのか、そして次代の製造業はどう変わっていくのか。「meviy」を立ち上げたミスミグループ本社常務執行役員 ID企業体社長吉田光伸とPwCコンサルティング合同会社で製造セクターリーダーを務める矢澤嘉治パートナー、製造業に熱い想いをもつ二人の対話が製造業の目指すべきAI経営のあり方を浮き彫りにした。


FAX利用率98%、調達工程の“紙依存”脱却が製造DX実現のカギ


矢澤嘉治(以下、矢澤):まずは改めて、ミスミの会社概要についてお聞かせください。

吉田光伸(以下、吉田):当社はものづくりに必要な機械部品や工具、消耗品をカタログ販売という形式でワンストップ、かつ「確実短納期」でお届けするというスタンスを貫いている企業です。品揃えは世界最大級を自認していまして、商品数は3,000万点超、長さや太さといったバリエーションを数えると800垓(がい、1兆の800億倍)にのぼります。おかげさまで製造業界の中では「電気、ガス、水道、ミスミ」とインフラのひとつに数えられています。お客様の数はグローバルで33万社ありまして、海外売上と国内売上は半々といったところです(編注:20年度の海外売上比率は50.2%)。

矢澤:まさに製造業を調達の面で支えているわけですが、いまはオンラインでの調達サービスも展開されているそうですね。

吉田:はい、「meviy」と銘打ったオンライン機械部品調達サービスを展開しています。部品の設計データを読み込ませると、AIが価格と納期の見積もりをすぐ回答するようになっていまして、最短1日での出荷が可能です。また、製造プログラムを自動生成できるようにしていますので、設計データを読み込ませればシームレスに製造まで完了する仕組みとなっています。

矢澤:どういった問題意識から、このサービスを構想したのですか。

吉田:まず、日本の製造業が危機に直面しているという意識がありました。生産年齢人口は加速度的に下落し、人手不足が慢性化しています。加えて、働き方改革関連法の施行により、中小企業でも月45時間以上の残業は原則できなくなりました。これまでどおりの業務量に対応できなくなり仕事を断っている企業がたくさんあると聞きます。労働力も時間も減っているなかで、効率化できるところを見つけて生産性を上げていかなければならないのです。

ではそれはどこにあるのか。設計・調達・製造・販売という製造業の大きな流れのなかで、設計はCAD/CAE、製造はロボット、販売はeコマースとデジタル化が急速に進んでいます。最大のボトルネックとなっているのが調達領域で、いまだに紙とFAXが中心の世界なのです。昨年(20年)、当社が調査したところでは、製造業のFAX利用率は98%。3Dデータはデジタルで作成しているのに、わざわざ部品調達用に紙の図面を作成し、それを複数社にFAX送信して見積もりが返ってくるのを待っている企業が多いことが分かりました。

矢澤:FAX利用率が高いのは、CADソフトが統一されていないのも影響していますね。ソフトは数百万円することもあるので気軽に導入できるものではありませんし、誰でもどんなところでも読める媒体として紙が使われているということですね。

吉田:致し方ない部分はありますが、結果として紙に依存することにより、かなりの時間が消費されているのです。紙の作図は1枚あたり30分から1時間はかかりますし、見積もりの待ち時間は1週間くらいが普通です。当社の試算では、部品点数1,500の機械をつくるための部品調達に約1,000時間、125日かかると算出されました。日本の製造業は約38万社ありますから、この機械の部品を各社調達するのに日本全体で3.8億時間、コスト換算で年間2兆円が浪費されていることになります。

考えてみれば、設計のデジタルデータをわざわざ紙に落として、製造の段階では紙を見ながらプログラムを入力しているわけで、調達の工程をデジタル化することで製造までつながり“ものづくりの自動化”が実現します。そこを目指して当社は研究開発を長年続けてきました。昨今のAIを含むデジタルテクノロジーの進化もあって、ようやく「meviy」をつくりあげることができたというわけです。

 
ミスミグループ本社常務執行役員 ID企業体社長 吉田光伸

ビジョンありきで、使えるテクノロジーを当てはめていく


矢澤:吉田さんがおっしゃったように、製造業で受注生産品の見積もりをとるのは非常に時間がかかります。まして納期回答まで同時に行おうとすると、在庫や生産体制といったサプライチェーンの管理体制も整備する必要があると思います。

吉田:おっしゃるとおりで、そこが業界全体の問題でした。だからこそ、全体のビジョンを最初から描かないと「meviy」の開発も失敗するだろうと考えていました。通常、業界の仕組みを変えてしまうような取り組みを一企業が担うのは難しく、つい細かい部分から手をつけてしまいがちですが、ミスミは製造業のインフラという立場から業界全体でものごとを考えます。そのなかでも「時間戦略」と言っているのですが、当社はQCT(※)に加えて顧客の時間価値を非常に重視しています。業界全体の無駄をなくしいかに時間を創出するかを常に考えているため、その延長線上にある「meviy」のビジョンに対しても社内・外の理解が得られたのです。

※QCT:Quality(品質)、Cost(コスト)、Time(短納期)。ミスミで重視する三要素。

もちろん、サプライチェーンを軽視しているわけではありません。どんなサービスでもそうですが、ユーザー側に革新をもたらすには、提供する我々側も同時に革新を遂げることが非常に重要だからです。この点でも当社にはアドバンテージがありました。すでに革新的なサプライチェーンを実現する土台が存在していたのです。

当社のカタログ事業の品揃えには800垓のバリエーションがあると申し上げましたが、これは多くが受注生産なのです。いつ、誰から、どんな商品でどのくらいの量の注文が来るか予測がつきづらいなかで、標準2日、納期遵守率99.96%の「確実短納期」を実現しています。

矢澤:なぜ受注生産なのに、「確実短納期」が可能なのですか。

吉田:当社では「半製品」と呼んでいますが、途中まで加工した商品をベトナム等のローコストカントリーで大量に生産し、配送先に近い場所にある工場で仕上げる仕組みを構築したからです。例えば金属のシャフトならば、受注してから先端だけ少し切ったり斜めにしたりといった仕上げ加工をすればいいので、短納期での出荷が可能となります。そういったサプライチェーンの仕組みがこれまでのビジネスですでに存在していたのは大きかったですね。

矢澤:確かに有利な条件は揃っていたようですが、とはいえまったく新しい取り組みです。実現への道のりは険しかったのではないでしょうか。

吉田:はい、大変でした。「meviy」の取り組みをスタートしたのが13年ですから、16年のリリースまでに3年間かかっています。世界的にも有名な大手含め、いろいろなベンダーに相談しましたが、「開発は不可能」とどこからも断られました。これは無理もない話で、Webブラウザ上で3Dデータを操作し、AIで価格や納期まで判定し、且つ生産まで連携するサービスは世の中にありませんでしたから。

矢澤:カタログの成功体験を生かすことは考えなかったのですか。

吉田:当初はその方向でした。カタログをデジタル化し、専用ソフトウェアでカタログでは対応できない複雑な形状の商品を選んでもらう方式にしようと思ったのです。ところが、実際にテストリリースしてみると、ソフトウェアはインストールしてもらえませんし、商品を選択するのは面倒という反応ばかりで一向にうまくいきませんでした。そこで、「選んでもらう」ことから、「ユーザーが描いたものを判別・回答する」方向へと切り替えたのです。

しかし、そんなサービスはほかになかったので、オープンイノベーションの発想で実現できるテクノロジーをもつエンジニアパートナーを世界中探し回りました。「こういうことをやりたい、できる人を紹介して欲しい」とあらゆる人に声をかけ、たどっていくと、面白いことに「このテクノロジーは使えそう」というのが徐々に見えてきたのです。それはまったく別のジャンルの技術だったということも多々ありました。例えば、ブラウザ上で3Dデータを高速に表現するにはゲームのテクノロジーを、形状の特徴認識には自動運転のテクノロジーが応用できます。それこそパーツレベルで対応できるエンジニアやベンダーを探して組み合わせていく感覚でした。

 
PwCコンサルティング パートナー 矢澤嘉治

設計力を自然と高められる業界注目の仕様


矢澤:ビジョンから逆算し、必要な人材やテクノロジーを集めていったのですね。

吉田:はい。ユーザーが描いたデータに対応するというのがビジョンであり、開発の起点ですから、妥協は許されませんでした。その産物のひとつが、加工ガイド機能です。生産技術要件を踏まえ、加工ができるかどうかを判断するだけでなく、加工ができない場合はどう設計を変えれば加工ができるようになるかを分かりやすくユーザーに伝えるという画期的な機能です。

矢澤:生産技術要件の集約・活用は、日本の製造業界の強みを生かすためにも大きな課題のひとつですね。とりわけ若手の設計者は、ノウハウが不足しているとよくいわれています。

吉田:一見、図面では成立していても、生産技術要件に照らし合わせると成立しない設計データはかなり多いのです。その検証と、結果として起こる差し戻しが、見積もりを遅らせている原因のひとつともなっています。ですから「meviy」で迅速な見積もりを実現するには、設計データを読み込んだ段階で瞬時に生産技術要件を踏まえ、加工できるかどうかの判定までをできるようにしました。

なぜ生産技術要件が重要なのか。それは、誤った図面で製造すると変形してしまうからです。従来は、「設計者として知っているのが当たり前」と言われて終わった話ですが、個人の努力に依存していては、技術伝承問題はいつまでも解決できません。生産年齢人口が減少していくなかでそれは現実的ではありませんし、仕組みで解決できれば時間の短縮にもつながりますので、「meviy」では見積もりエラーの際“どの部分に問題があるのか、どう修正すれば加工可能なのか”が図やメッセージで分かりやすく提示される仕様にしました。

このガイドがかなりの反響がありまして、自動見積もりよりも喜ばれているユーザーは少なくありません。「教育費をとってもいいよ」とおっしゃっていただけるくらいで、「meviy」を使えば使うほど知識や理解が増し、設計力が上がっていくとの評価をいただいています。

矢澤:複雑なアルゴリズムが必要かと思いますが、どのように構築していったのですか。

吉田:大量の部品を取り扱っていますのでノウハウ自体はありましたが、そのままアルゴリズムに移植できる形にはなっていなかったので、「meviy」プロジェクトを機にすべて仕組み化しました。かなりアナログな作業ですので、これも大変でした。ただ、データがどんどん蓄積されてAIが進化していきますので、これからが楽しみです。20年7月末現在でユーザー数は6万超、アップロードされたデータは550万点を超えました。データが蓄積されればされる程にサービスも進化し顧客価値も高まっていきますので、「AIはデータが命」をまさに肌で感じています。

 

AI経営の実践に欠かせない「BXT」



矢澤:2年以上も結果が出なかったとのことですが、社内から「クイックウィンで一部だけでもリリースしては」といった声は出なかったのですか。

吉田:ミスミは挑戦を非常に大切にする会社で、バックアップする仕組みが整っていますので、その点ではやりやすかったですね。とはいえ、やはりいくら明快なビジョンを描き、そこへの道筋を巧みにプレゼンテーションしても、イメージを共有できなければやはり認められません。

そこで私たちプロジェクトチームが取り組んでいたのが、シリコンバレーのプロダクト開発でよく用いられるMVP(Minimum Viable Product ※)の手法です。最低限の機能を持つプロダクトを次々につくり、顧客の声を聞きながらイメージを共有し、改善を早回ししていくことにはこだわりました。

※MVP(Minimum Viable Product):必要最小限の機能をもたせ、開発に役立つフィードバックや実証を得ることを目的としたプロダクト。

矢澤:イメージを共有するのは、DXを進めてAI経営を実践するうえで欠かせないことだと思います。PwCコンサルティングでもデジタル工場を体験できるプログラム「Factory Digital Transformation(FDX)」を用意していますが、経営者の方々にDXの具体的なイメージを喚起してもらうのが目的です。

吉田:プロトタイプを用意するだけでもかなりの手間がかかりますから、まさに組織内をデジタルトランスフォーメーションしていくには有効ですね。

矢澤:経営者だけでなく、各部門の人にセットで参加してもらうのも効果があります。製造業は部門間の壁が厚く、データ連携が進まない傾向がありますので、データがつながることによってこういうエクスペリエンスが得られるということを実感してもらうのです。PwCコンサルティングではBXT(Business eXperience Technology)というアプローチを使っていますが、これからの時代に必要なAI経営を実践するには、ビジネスとテクノロジー、そしてエクスペリエンスの向上は三位一体で進めなければなりません。新しいテクノロジーだからといって当てずっぽうで使うのではなく、エクスペリエンスを考慮した使い方をしなければ意味がないので、それを理解いただくためのプログラムとしても機能しています。

吉田:非常に共感します。どのテクノロジーを使えばいいかというのはやはりその都度変わりますよね。結局、新規事業もDXもそうですが、「なぜやるのか」の部分がもっとも重要で、そこを明らかにできれば、先ほど申し上げたようなゲームのテクノロジーのように、自ずとどんなテクノロジーを使うべきか見えてくるはずです。

実は当社で昨年、1,000社ほどの中小企業を調査して、売上が伸びている会社と伸び悩んでいる会社の違いを見たのですが、もっとも差が開いていたのはデジタルツールの使いこなし度合いでした。やはり、新たなツールを積極的に取り入れて無駄を省き、新たな商品やサービスの開発に時間を使ってイノベーション創出に取り組んでいる会社が伸びています。一方で、経営層の理解が進まなかったり部門間の壁が厚かったりという課題も当然あると思いますので、PwCコンサルティングのFDXのようなプログラムは課題解決に役立つと感じますね。

矢澤:ありがとうございます。最後に、今後の目標をお聞かせください。

吉田:「meviy」は、21年度からグローバル展開を開始していきます。世界中のどこにいっても、まだ調達は紙ベースが主流なのです。そのため、現状のグローバルサプライチェーンを生かしつつ、ある程度のローカライズをすることで十分に世界で戦えると考えています。BtoCのプラットフォームはいろいろとありますが、ものづくりのBtoBプラットフォームはまだまだ少ない状況です。使い勝手のよいサービスを提供することで製造業DXの実現に貢献したいと思っています。


吉田光伸◎ミスミグループ本社常務執行役員 ID企業体社長。日本電信電話(NTT)へ入社後、日本オラクルを経て、2008年からミスミグループ本社へ参画。事業責任者として国内事業の再構築・中国事業に従事し、その後グループ内の新規事業である「meviy」(メヴィー)を立ち上げる。18年よりmeviy事業を展開するID企業体を設立、企業体社長に就任。

矢澤嘉治◎PwCコンサルティング パートナー。日系自動車メーカー、外資系IT系コンサルティング会社を経て現職。製造業における業務改革・業務標準化を中心に20年以上にわたり従事。特にデジタルを活用したソリューション提供に強みをもつ。PwCコンサルティングでは、工場領域におけるIoT活用に関するプロジェクトを多く手掛け、スマートファクトリー戦略立案・組織改革、IoTデータ収集・蓄積・活用の構想策定、実証実験からシステム導入まで、幅広く支援している。

Promoted by PwC Japan / text by Hidekazu Takahashi / photographs by Takao Ota / edit by Akio Takashiro