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戸田良樹 TradFit代表取締役社長

中高生時代から起業を意識していたという早熟なアントレプレナー、TradFit創業者・戸田良樹。同氏が率いるTradFitが開発した、宿泊施設の課題を解決するVoice、生体認証、IoT技術を組み合わせた革新的なサービスとは──。


成長環境がある企業への入社を決断


経営に携わる家族、政治の道を歩んだ祖父のもとで幼少期を過ごした戸田は、過去をこう振り返る。

「経営の道と政治の道、両方を肌で感じるために早稲田大学に進学しました。同大学は起業や国際交流が盛んで、人種・国籍はさまざま。目標に向かい多くのことに挑戦し、求めていた経験を積む最適の環境でした。英語を独学し交換留学したUSでは、世界中の多様な価値観、常識、文化に触れました。日本から海外、海外から世界を客観視する体験をし、世界中の政治経済、歴史、古典、哲学を学び、価値観が大きく変化していきました」

こうした原体験を通じて、起業の想いを強めた戸田は、まずは組織で社会経験を積むべきと考え、企業への入社を決断する。「営業が厳しく、多様な部署や国内外の方々と仕事ができる環境、経営に必要な経験が積める企業がよいと考え、厳しさと温かさが共存し成長速度が速い証券会社に入社しました。経営者や投資家の方々に直接お会いでき、経営などに関わる立場の方々と共に仕事を通じ成長できる環境に魅力を感じたのです」

配属先の部署では富裕層向け資産コンサルティング業務を担当。同社の大切な価値観である“三方よし”を銘とする近江商人の哲学に、直に触れることができた。その後、本社異動で投資銀行部門IPO支援部隊に配属となり、起業家とハンズオンで奔走する立場となる。

「素晴らしい可能性にあふれる数々の企業との出合いがありました。共に汗を流しながらどう発行体をスケールさせていくかのみを考える日々。当時は折しもSDGsやESG投資が注目され始めた時期で、企業を成長させる本質に関してとある結論にたどり着きました。関西時代に体験した売り手・買い手・世間よしの“三方よし”ではないかと直感したのです」

短期的に自社の利益を追うだけでは企業として中長期的な観点で健全な成長は難しい。社会課題の解決を通じて成長し、利益、雇用を生み出し、社会に還元しなければならないのではないか。戸田は約10年働いた証券会社を退職し、2017年にTradFitを立ち上げた。

耳と口のテクノロジーが空いている


戸田が起業のテーマとして選択したのは音声領域だった。現在は音声メディアも台頭し注目されている領域だが、当時は海外では爆発的に普及しているのに、な ぜか国内では普及していなかった。「日本にこそ必要になるサービスではないか」。旅行好きな戸田は、ベトナム、中国、USを訪れ、自身が感じたこと、さらには旅行者と触れ合うなかで聞いた痛みや苦しみに着目し、インスピレーションを得た。それが多言語対応音声エージェント端末のソフトウェア開発の始まりだった。

「英語は話せるのですが、ベトナム語や中国語となると、そうはいきません。言語の壁には苦労しました。この痛み・苦しみは世界共通であることに気づきました」

当時の欧米では、Amazon、Google、Appleなどの音声エージェント端末が急速に普及していた。その波は確実に日本にも押し寄せてくると戸田は予見したのだ。「日本にも多くのテクノロジーが普及していますが、“耳と口のマーケットが空いている”ことに気づいたのです。将来を見据えると、直感的、感覚的に活用できる声というインターフェースは、音声、クラウドAI、生体認証、IoTなどのテクノロジーと掛け算することで少子高齢化の社会で広がるサービスになると確信しました」

戸田は独学でプログラミングや世界中のテクノロジーを幅広く学習し、触れてきた。一方、事業推進のために、絶え間ない努力が必要だとも感じていた。日本から世界に羽ばたくためには、世界中のエンジニアと対等にコミュニケーションを取り、どの程度開発工数(時間・コスト・技術的負債の返済含む)を議論できる起業家であるほうがよいと考えたのだ。

「これは絶対条件と考え、そうすれば優秀なエンジニア集団を組織化できると確信していました」



コロナ禍で苦しむ業界を助けたい


TradFitが扱うサービスは、多くの可能性を秘めている。しかし、戸田はサービスローンチの際、宿泊施設向けに絞り込んだ。「あらゆる市場調査を行うなかで弊社のサービスとの親和性が高いと考えました。

サービス産業の中で飲食と並び離職率が高くほぼ365日稼働の業界です。そこにコロナ禍が降りかかり、多くの企業が経営困難な状況に陥っています。日本の社会インフラである産業を助けたいと考えました」

戸田は中長期的な視野に立ち、訪日旅行者は政府予測どおりに増加に転じると確信している。TradFitのサービスは、人材不足を補いながらコストを大幅削減できる。すでに将来を見据えた宿泊施設が導入を開始している。同社のソフトウェアは旅行客と施設側の両方に有益なサービスとなる。インバウンドが本格的に戻ってくる頃には宿泊施設の定番になっているだろう。

「国内外の宿泊ゲストのみならず、宿泊施設や清掃会社など宿泊や観光に携わる方々にとっても、むやみに何かに触りたくないという声が実際に現場でヒアリングするなかで多いです。弊社サービスは非接触・非対面・リモートでの応対が可能です。多言語での旅行者へのオーダー対応や案内業務の多くは不要となり、施設側の負担は大きく軽減されます。収益性改善のみならず、雇用を守りながらワークライフバランスを向上し、収益性改善による従業員の賃金上昇も可能だと考えています」

さらに、取得データは、個人を特定できないセキュアな状態で保有・分析し、さらなる業務・サービス・マーケティング改善に生かすことが可能だという。「大切なのは、データは独占せず共有し、誰もが使えるプラットフォームにすることです。地域特性に合わせた循環型社会/地方創生につなげていくために、各都道府県との協業を進めています」

同社は水面下で多くの上場企業などとも協業を進めている。「地に足をつけ国内の社会課題を解決し、近い将来は世界初・業界初の取り組みを国内外の協業パートナーと共に海外へも広げていき、世の中の社会課題を解決していきたいと考えています」

TradFit
https://company.tradfit.com

戸田良樹(とだ・よしき)◎2008年に早稲田大学政治経済学部を卒業後、野村證券入社。野村グループ入社式約1,000人の総代を務める。多くのスタートアップを担当し、投資銀行部門、国内外の投資銀行部門の戦略企画や国内外広報を担当後、2017年8月にTradFitを創業。

Promoted by TradFit / text by Ryoichi Shimizu / photographs by Shuji Goto / edit by Akio Takashiro

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