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2021.04.06 20:30

自然言語処理技術で深層の課題を見える化する レトリバが目指すAI検索・分析の向こう側とは

レトリバ代表取締役社長 河原一哉

「AI技術でコトバの森を活用し、企業の生産性向上に貢献する」ことをミッションに掲げるレトリバ。代表取締役社長の河原一哉は「AIと協働する人類は、新たな可能性に目覚めている」と語る。その真意とは。


企業には、日々多種多様な情報が蓄積される。これらを放置、あるいは単なる文字や数字の羅列として無益に眺めるのではなく、真に有益なナレッジとして明確にとらえ直し、あらゆる意思決定に刻々と生かし続けていけたなら──。

AIが自動的にVOCを分析


「古来、人間は社会を築き、共に繁栄していくために仲間と言葉を交わしてきました。会社を築き、持続させる際も道理は同じです。仲間(=顧客をはじめとするステークホルダー全員)の声に耳を傾けずして、健全な繁栄は望めません」

レトリバの代表取締役社長・河原一哉は、ホモ・サピエンスが意思・感情・思考を伝達してきた本来の意義から話を切り出した。レトリバは、AI(人工知能)の自然言語処理技術を軸としたサービスで現代の企業活動に革命をもたらそうとしている。昨年6月から提供を開始したのが、AIでVoice of Customer(VOC)を分析する「YOSHINA(よしな)」だ。

「VOCとはすなわち、顧客の声です。コールセンターに寄せられる要望や苦情、各種のアンケート結果(Webアンケートや催事場などで配布するもの、商品に同封して返送されるものなど)、SNSに集まる評価や口コミ、自社サイトへのメールや書き込みなどが該当します。例えば、購買行動をモニタリングするだけでは『なぜ、買ってくれないか』についての理由や背景はつかみにくいのですが、これを把握できるのがVOC分析の強みです。人間が使う言葉(=自然言語)は、画像情報やセンサーデータとは違って、人間が巧妙に情報を抽象化してエッセンスを抽出したものになります。つまり、情報としての濃度が高い。高濃度な情報である顧客の声を収集・分析して活用するのは、企業の生産活動にとって効率がいいことなのです」

実際に「YOSHINA」で高濃度情報が効率よく分析された例を挙げてみよう。昨年9月、河野太郎行政改革担当大臣が縦割り行政の弊害について国民から意見や提案、苦情などを募る「行政改革目安箱(縦割り110番)」を自身のホームページに設置した。開設初日と翌日に4,000件超の意見が殺到し、翌日に受け付けを停止したのがニュースになったことを記憶している人も多いだろう。

このときの4,000件超の意見を分析したのが「YOSHINA」だ。すべてに河野大臣が目を通す方針だったが、あまりの数の多さに難儀していた。当初は休みなどの時間を使ってアナログな作業で意見の精査を行っていたというが、「YOSHINA」の分析にかかると、わずか5分で完了した。個別政策25+総論5。寄せられた意見を合計30個のカテゴリーに仕分けし、河原が大臣に報告した。そのなかでも意見が多かったトップ15の個別政策については、分析結果の詳細をプレゼンして大臣から活発な質問を受けたという。

「4,000件超の意見に埋蔵されていた本質。膨大な言葉の森に潜んでいた真意。これらを人間の作業で探り出していくのは、時間的にも品質管理的にも無理難題でしょう。『YOSHINA』を使えば、すべての意見を話題ごとにカテゴリー分けして頻出順に並べてくれますし、各カテゴリーから『よくあるワード群』と『気づきのヒントになる注目ワード群』が洗い出されるなど、深掘りも自動的です。『分けることは、分かること』というポリシーのもと、私たちは分析を発表させていただき、大臣も納得された様子でした」

この「分けることは、分かること」を根本的なビジョンとするなら、「YOSHINA」は「AIの民主化」を大切なミッションだととらえている。河野大臣をうならせたプレゼンにおいても、プラットフォームを利用するためAIの専門家集団でなければできない特別な作業はない。そのプロセスは、いたって簡単だ。①分析したいテキストデータを画面にドラッグ&ドロップする。②ナビゲーションに沿って設定項目にチェックを入れる。このツーステップを踏むだけで、グラフを交えたわかりやすい画面で分析結果が表示されるのだ。直感的に関連情報をたどれることも含めて、はじめての人でもスムーズに使える。AIに関する知見やリソースがない企業でも、導入するにあたっての障壁は皆無だ。


社内文書の検索効率も向上


4月下旬からレトリバは、新たなサービスとして「TSUNADE(つなで)」をローンチする。社外の声から未知の課題を見つける「YOSHINA」に対し、社内の文書を生産性向上に生かしきるためのツールが「TSUNADE」となる。部署ごとにファイルサーバーがあったり、外部のストレージサービスも使われていたりで、どこにどういうデータがあるのか、どういうルールで整理されているのかが、わかりづらい状況になっている会社も多いのではないだろうか。また、ルールがあっても守ったり、守られなかったりでは、文書を探しやすい状態にあるとは言えないだろう。

「社内の文書を検索する際の効率を上げて、探したい情報に素早くアプローチできるようにするのが『TSUNADE』です。AIの自然言語処理技術を使って社内の情報を集め、探しやすい軸(整理の仕方)をつくって仕分けし、検索時に見つけやすくしていきます。例えば、社内の文書は『取引先の名前』や『提案した時期』などで整理されていることが多く、『書かれている内容』の軸で整理されていることは少ないと思います。実際のところ、その内容は複数の軸に所属するべきものかもしれません。ところが、コンピュータには、ひとつのファイルはひとつのフォルダにしか所属できないという制約があります。その制約なしに、複数のフォルダに自動的に仕分けできるのが『TSUNADE』の強みです。そもそも、いろいろな軸で分けたほうが検索しやすく、情報活用の精度も上がるのですが、これまでは人の手で仕分けするのが大変で、時間・コスト・能力による制限がありました」

AIの技術により、企業は無形財産である言葉を生かしきれる時代が到来した。最後に、冒頭の「仲間の声に耳を傾けずして、健全な繁栄は望めない」という河原の言葉の続きを届けたい。

「昨今、何か特別なもののように語られることがありますが、私は、AIは道具だと思っています。人類は道具をつくり続けて進化してきました。言葉は人間の英知の結晶だと思うのですが、さらにそれを濃縮して活用できるようにしてくれたのがAIの自然言語処理技術です。この道具によって人類は、有史以来最も巧く、賢く、気高く言葉を活用できる可能性を手にしたのです」

▶レトリバ


河原一哉 かわはら・かずや◎電気通信大学電気通信学部電子情報学科を卒業。2001年、サン・マイクロシステムズに入社。08年にシーエー・モバイルに転職し、携帯電話向け電子書籍サービスの開発・運営に携わる。10年、Preferred Infrastructureに入社。同社事業部長を経て、16年にレトリバを創業。

Promoted by レトリバ 文=國領磨人 │ 撮影=後藤秀二 │編集=高城昭夫