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写真左:プラスゼロ代表取締役会長 小代義行、中央:野村不動産HD代表取締役社長 沓掛英二、右:プラスゼロ代表取締役社長 森 遼太

ICTを活用して先進的な取り組みを進めている野村不動産HDと、AIの最前線である自然言語処理分野で研究を続けるプラスゼロ。

野村不動産HDの沓掛英二代表取締役社長と、プラスゼロの小代義行代表取締役会長、森遼太代表取締役社長の3人が目指すべき未来を語った。


小代義行(以下、小代) 不動産は重厚長大な印象がある業界です。大胆な変化が容易ではない業界で、沓掛社長は「いまの立ち位置から実現可能な未来を考えるフォアキャストではなく、まず何の制限もなく理想の未来を考えるバックキャスティングでいこう」という方針を打ち出して、先進的な取り組みをされています。私たちプラスゼロも、「ありたい姿、あるべき姿」からいまを見つめるバックキャストでやろうと日頃から言い聞かせていますが、沓掛社長はどうしてそのような発想になったのでしょうか?


プラスゼロ代表取締役会長 小代義行

沓掛英二(以下、沓掛) 私は野村證券に30年間いて、2014年に野村不動産にやってきました。当時のわが社は積み上げ型のフォアキャストで、保守的。変革を促しても、「金融と不動産は違います」という反応が返ってきたものです。これではすぐに世の中のスピードについていけなくなる。その危機感から、「我々は上場して十数年の若い企業のはずだ」「未来からバックキャスティングすべし」と強く打ち出しました。

現在、10年、20年先を見据えた「ブレイクスループロジェクト」というものを私のもとで走らせています。そのなかで切り口の一つになっているのが、XaaSの不動産版である“不動産as a service”や不動産ならではのテクノロジーである“不動産テック”です。例えば住宅なら、デザインや利便性、管理がいいだけでは不十分。どのようなネットワークとつながり、どのような情報が見られるのか、どのようなエネルギーを使っていくのかなど、新しい技術を活用して新しいサービスを提供する取り組みを進めています。

新しいサービスを考えるときに、いまや必須の技術になりつつあるのがAIです。プラスゼロさんは、自然言語処理分野のAIで先頭を走っていらっしゃる。今日は最前線の話を聞けると思って楽しみにしてきました。


野村不動産HD代表取締役社長 沓掛英二

小代 AI企業というと、いま流行しているディープラーニングを産業適用してパッケージ化して提供する会社が多いかと思います。現場の感覚として、今後はAIを提供する企業が産業適用の成否に応じて優勝劣敗になっていくと感じています。プラスゼロは、ディープラーニングを産業適用する力にも自信はありますが、それよりも、AIの次の主戦場といわれている自然言語処理分野で、日本代表的なチームを組んでGAFAに挑んでいることが特徴だと思っています。

森 遼太(以下、森) 具体的に言うと、私たちの強みは日本語の意味理解です。自然言語処理は言語横断的に解ける問題と、言語ごとに特化して解かなければいけない問題があります。日本語は英語のように単語の境目がなくて、意味理解が特に難しい。例えば「ニワニワニワニワトリがいる」を人間は「庭には二羽、鶏がいる」とすぐ理解できますが、AIがその意味をイメージするのは簡単ではありません。こうした意味理解ができるAIを研究していかないと、英語ばかりがAI時代に役立つ言語になり、日本語が使われなくなるおそれがあります。そうならないように日本語を便利にしていく研究開発を進めています。

AIを活用すると同時に先を読め


沓掛 実は野村不動産グループでも、不動産流通の世界では4年ほど前からAIを導入しているんですよ。わかりやすいのはチャットボットなどのAIツールでしょうか。お客様がマンションなどの住まいを探しているとき、かつては営業マンが最初からすべて対応していました。しかし、いまはこうしたAIツールが初期対応の部分をやってくれます。単に人間を代替するだけではありません。昔はお客様の条件に合った物件を営業マンが一晩かけて探していたりしましたが、AIは瞬時に集めてご提案できます。自然言語処理の研究が進めばさらに高度化されますね。

小代 チャットボットは今後のAIの進化のなかで一気に賢くなって、大きく変化する対象の一つになります。ですから、いまからチャットボットに取り組まれているのは素晴らしいことだと思います。

沓掛 近い将来、AIが私たちの仕事を助けるパートナー的な存在になることは間違いないと思います。ただ、経営者はもう一歩踏み込んで考える必要がある。金融の世界ではAIが資産運用して利益を上げるようになり、人間はAIの考えを読んでそこから利益を生み出さないといけなくなりました。それと同じことは、いずれどの業界でも起きるでしょう。AIを活用するだけでなく、同時にAIの先を読むぐらいの発想が求められるようになるはずです。

気になるのがAIの進化です。AIは今後どれくらいのスピードで賢くなるのですか?

 一般的には、2045年にはシンギュラリティが起きるといわれていますが、私たちはシンギュラリティのような汎用人工知能には否定的です。その代わり、私たちはAEI(Artificial Elastic Intelligence)と呼ぶ「限定された範囲で人間のように業務を遂行できる知能」の開発を行っています。これらを3年から5年以内、すなわち2025年頃までには実現できると思っています。


プラスゼロ代表取締役社長 森 遼太

沓掛 2025年は、団塊の世代全体が後期高齢者の対象年齢(75歳以上)に達します。いままで社会の中心にいたパワフルな世代が後期高齢者になることで、日本社会としても断層的な変化が起きるでしょう。技術的にもビジネス的にも、2025年はターニングポイントになるかもしれませんね。

ビジネスの双眼鏡と技術の双眼鏡を融合せよ


 AI導入において成功の鍵を握っているのが経営層です。AIの実装は最初にKPIを定め、ツリー上に因数分解したうえで進めていきますが、ややもすると局所最適になりがちです。全体最適でとらえられる経営者がリーダーシップを発揮してこそ、最初に決めたKPIを達成できます。

沓掛 確かにトップの強い意志と情熱は大切です。プロジェクトを中長期で推進するには、ミドルや若手フロントも巻き込んでたすきを次につなげていかなければいけません。どの階層にも「AIの導入は必須だ」と腹落ちしてもらうには、やはり会社や社会の未来の姿、イメージを明確にして全員で共有、バックキャスティングする必要があります。

小代 沓掛社長は10~20年後の未来像をどのように描いていらっしゃいますか。

沓掛 生活する場、働く場、楽しむ場──。それらにサービスが付加された未来のまちを想定しています。人口減・超高齢化・成熟の日本の人口動態を踏まえつつ、多様性が尊重され、サステナビリティが重視される社会へ変化することを考えると、ドメスティックに閉じた都市ではなく、よりインターナショナルな発展を遂げるメトロポリタン・東京をベースに、AIが都市力の進化に活用されれば、未来は明るくなるのではないでしょうか。

一方、海外でもものすごいスピードで都市が成長するはずです。例えば、中国の深圳の人口はいまや1300万人に達しています。ほかにも桁違いの成長を見せる都市が数多く出てくるでしょう。そういった海外の新興都市に対して、野村不動産グループはどのような貢献ができるのか。まさにバックキャスティングで考えていかなければいけないと思っています。

小代 いまはVUCA、つまりVolatility(不安定)、Uncertainty(不確定)、Complexity(複雑)、Ambiguity(不明確)で、先が見通しづらい時代だといわれています。ただ、見通しが利きづらいときほど、未来を見通せたときにはそれが経営の大きな力になります。

野村不動産グループ様がもっている不動産業の先を見通す双眼鏡と、プラスゼロがもっている技術の先を見通す双眼鏡。二つの双眼鏡をお互いに交換しながら融合的に先を見れば、未来像がよりクリアに浮かび上がるはずです。私たちもAEIなどの技術的に到達可能な未来を見据えてバックキャストの発想で挑戦を続けたいですね。


pluszero
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沓掛英二(くつかけ・えいじ)野村不動産ホールディングス代表取締役社長、グループCEO。2013年野村證券取締役兼代表執行役副社長。14年野村不動産ホールディングス代表取締役副社長を経て15年より現職。部門経営をベースにグループ連携・一体感を重視。社員の心身の健康を大切にする「ウェルネス経営」を強く打ち出す。

小代義行(おじろ・よしゆき) プラスゼロ代表取締役会長兼CEO。NTTデータ、マイクロソフトなどを経て起業。IT、AI、遺伝子医療、教育など先端技術を生かした事業立ち上げに従事。次世代リーダーの育成をライフワークとして30人以上の社長を輩出。2020年6月に現職に就任。

森 遼太(もり・りょうた) プラスゼロ代表取締役社長兼COO、博士(科学)。産業技術総合研究所CBRCにて統計や人工知能を活用した生物情報解析に従事。能力テスト理論開発、個人ゲノムによる疾病リスク推定、自動査定や人や文字の画像認識等のプロジェクトを主導。

Promoted by プラスゼロ / text by 村上 敬 / photographs by 吉澤健太

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