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「あふの環プロジェクト」=食と農林水産業のサステナビリティを考える活動

世界規模で環境保護への関心が高まっているいっぽうで、「私一人がエコバックを持ったところで世界に影響があるのかな」という感覚を拭えない人もいるだろう。

しかし、サステナブルな活動は今や「なんとなくエコ」に止まらない、新時代の生存戦略なのだ。例えば、「牧場から出た家畜ふん尿をバイオガスプラントの原料にすることで、町内の170%の電力をつくり、町の魅力も増し、人口も増加に転じた北海道上士幌町」「セブン&アイグループによる世界初の100%完全循環のリサイクルペット」などは「なんとなく地球によさそう」という枠を超えている。

来るべき新時代に向けて企業も国も自治体も動いている。

セブン&アイ・ホールディングス、オイシックス・ラ・大地、長野県立大学、マルハニチロ、講談社と幅広い企業や団体を検討委員として迎えた「持続可能な生産消費形態のあり方検討会」を経て、翌年2020年6月に農林水産省、消費者庁、環境省連携による「あふの環(わ)2030プロジェクト~食と農林水産業のサステナビリティを考える~」(以下「あふの環プロジェクト」)が発足。

「CSR部が本部の経営戦略に組み込まれたというニュースを目にすると、確実に世の中が動いていると実感します」と語る、農林水産省の「あふの環プロジェクト」担当者に「本当にすごいサブテナブル」について話を聞いた。未来への可能性がつまったビジョンの実現に、挑み続ける人たちがいる。

生産者と消費者とをつなぐ「あふの環プロジェクト」


「あふの環プロジェクト」の「あふ」は、農林水産業を指すAgriculture, Forestry and Fisheries の頭文字AFFと、古語の「会ふ(出会う)」「和ふ(混ぜ合わせる)」「餐ふ(食事のもてなしをする)」から名付けられた。2030年のSDGs(Sustainable Development Goals/持続可能な開発目標)達成を目指し、次の世代も豊かに暮らせる未来を創るべく立ち上げられたプロジェクトだ。生産者だけ・消費者だけで完結するのではなく「生産から消費まで」をひとつなぎとすることを目的としており、農林水産省だけではなく消費者庁、環境省、とも連携している。

「あふの環プロジェクト」が発足して3カ月目、2020年9月に第75回国連総会に合わせて「サステナウィーク~未来につながるおかいもの~」(以下「サステナウィーク」)を開催。コロナ禍で開催が危ぶまれるなか、全国規模でのオンラインイベントとなった。サステナブルな農業の取り組みに触れるオンラインファームツアーや、気軽に参加できる「サステナブル診断」など、イベントに参画した企業や団体は100以上。食や農林水産業に関するサステナブルな商品や幅広い取り組みが発信された。

「オンラインだからこそ、予想以上に日本各地から多くの人々に参加いただけました。イベントまでの打ち合わせもオンラインで行ったのですが、後ろに農場の風景を見ながら農家の方とWeb会議をすることもありましたね。参加者目線でいうと、現地まで足を運ぶのが難しかったり、心理的なハードルを感じていたりする方でもオンラインで気軽に参加できたのではないでしょうか。リアルイベントの一歩手前の段階として、良い手応えを得られました」

北海道で、半世紀以上続いた人口減少に歯止め


この「サステナウィーク」で紹介された、注目の取り組みをいくつか見ていこう。

まずは北海道の中央に位置する上士幌町。国内で有数の酪農地帯である上士幌町では、サステナブルな取り組みをきっかけに、大きな変化が起きている。

注目されたのは、堆肥にしか使い道がなく厄介者だった家畜のふん尿。これをバイオガスプラントの原料にし「かみしほろ電力」として地元に電力を提供したところ、バイオガス発電で計算上町内世帯数の170%の電力をまかなうことが可能になった。土・草・牛という自然の循環サイクルを生かしたエネルギーの地産地消を実践し、上士幌町には若者世代の転入も増え、なんと半世紀以上続いた人口減少にも歯止めがかかったのだという。


自然の循環サイクルを生かしたエネルギーの地産地消を実践する北海道の上士幌町

株式会社セブン&アイ・ホールディングスによる「セブンプレミアム 一(はじめ)緑茶 一日一本」には、日本の技術力が詰まっている。これはセブン&アイグループの各店で回収したペットボトルを100%使用し、日本コカ・コーラとの取り組みによって実現した、世界初の完全循環型リサイクルペットボトルだ。

セブン&アイグループでは、使用済みペットボトルを回収し、飲料用ペットボトルに再生する「ボトルtoボトル」を開始。積極的な利用者を集めており、グループ事業会社のひとつであるイトーヨーカドーでは、なんと店頭に持ち込まれるペットボトルの方が、ペットボトル飲料の年間販売数量より多くなっているという。リサイクルに貢献する取り組みとして、原料はもちろん、生産工程でも自然保全を意識したものづくりを目指し、環境に配慮されている。

数々の取り組みがあるなか、担当者の印象に強く残っているのは(GOOD・適正な、AGRICULTURAL・農業の、PRACTICES・実践を指す)G.A.P.普及推進機構による「農業高校におけるG.A.P.の実践と認証取得への挑戦」というオンラインイベント。サステナウィークに賛同する学校や生徒とともに、日頃の学習成果として情報発信や広報を行った。

「若者たちがサステナブルに触れる貴重な機会となりました。例えば2050年という未来を見据えたとき、当事者になるのは現在の若者たちです。高校生の意見交換の場は今後もさらに重要になると思っています」

人と人を繋ぎ、誰もが納得できるサステナブルの実現へ


初のイベントを終え「多くの人々が食と農林水産業に関わるサステナブルな活動に取り組んでいたことが分かった」という確かな手応えを得られた一方、課題として見えてきたのはアピール下手で奥ゆかしい“日本人的思想”による障壁だった。「実践している取り組みを、自社のホームページ以外に露出する場所がない」「自分たちがやっている良いことをどう表現すべきか、難しい」と、積極的に活動を発信・アピールする場が無いのだという。

「あふの環プロジェクト」の設立のきっかけとなった「持続可能な生産消費形態のあり方検討会」でも「CSR部があり、トップからサステナブルな取り組みをやれという指示もあるが、具体的に何をすればいいかわからない」「生産現場だけでなくサプライチェーン全体で話してみたい」と、組織の壁に悩む声が少なくなかったという。担当者自身も「自分たちはこうして日々サステナブルに関する議論をしていますが、他部署にこの熱量を理解してもらうのはなかなか難しいですね」と苦労に理解を示す。

そこで「あふの環プロジェクト」ではプラットフォームとしての「企業同士の交流」を目標に掲げている。企業や部署の垣根を超え、取り組みや意見を出し合う場の提供は、上記の課題を感じる企業にとって大きなメリットとなるだろう。実際に参加者から「同業者の活動や意見を聞ける機会がなかったので、参加してよかった」「他の社員にも是非参加してもらいたい」という声は多く、すでに来年向け交流会の実施を検討している。

「キャッチボールができなくても、他企業へ発信する場として利用して欲しいです。今後はプロジェクト事務局と企業の連携をもっと強固にし、企業内における人と人とのつながり作りも手助けしたい。来年度の活動からが本番ですね」と意欲を語る。海外でさかんなESG(Environment/環境のE、Social/社会のS、Governance/企業統治のG)投資やEUの食品産業などを紹介する勉強会も好評だ。

そして何より目指したいゴールは、消費者の意識変化と行動変容。担当者が目指す「サステナブルな取り組み」とは、無償行為や我慢などの“損”をして貢献したり、意識が高い人たちが達成感を得たりするために行うものではない。無意識に選んだものが自然とサステナブルだったという社会が理想であり、実現したい世界だ。

「サステナブルな取り組みを消費者がどう感じているかの数値化は難しいので、いかに測るかも今後の課題のひとつですね。人によって、サステナブルの定義は違います。政府が決めるのではなく、企業を含む様々なステークホルダーに『サステナブルってなんだろう』という意見を伺って、作り上げていきたい。その結果、皆さんにとっても親しみやすいサステナブルの形になればと思います」

現在、「サステナアワード2020 伝えたい 日本の“サステナブル”」と題して食と農林水産業のサステナビリティに関する取り組みを動画で募集しており、「サステナウィーク」は、来年以降も国連総会に合わせて毎年9月に活動を継続していく予定。サステナブルとは、社会を確かに変えるワクワクであり、未来を生き抜く生存戦略なのだ。

あふの環2030プロジェクト~食と農林水産業のサステナビリティを考える~

Promoted by 農林水産省 / text by 伊藤七ゑ

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