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2020.11.20 19:00

新しいカルチャーを浸透させる、「フックづくり」のポイント

経営、事業展開、人事、広報、ブランディングなど、経営者が日々向き合わなければいけない課題は尽きません。もし、他の経営者に相談できたら──。一人では生み出せなかった解決方法が見つかるかもしれません。

そこで、日々奮闘するスモールビジネスオーナーの皆さんを応援しているForbes JAPANとアメリカン・エキスプレスは「お悩みピッチ」を開催しました。「お悩みピッチ」とは、経営者同士で日々の課題を解決する場。お悩み人のお悩みを、規模や業界が違う他の経営者の皆さんと一緒に考える場です。

大御所もルーキーもなく、同じ経営者という立場でフラットに議論しながら、参加者全員がお悩み人を助けようと、解決策となるアイデアや経験をピッチし、ソリューションまで導いていきます。「お悩みピッチ」は「お助けピッチ」とも呼べるのかもしれません。


今回のお悩み人は、車で生活する生き方「バンライフ」を勧めるカーステイの宮下晃樹氏。「バンライフ」とは、荷台スペースが広い車「VAN(バン)」を家やオフィスのように作り変え、車を働く・遊ぶ・暮らすの拠点とする新たなライフスタイルのことを指します。

ラルフローレンの元コンセプトデザイナーであるフォスター・ハンティントン氏が「VAN LIFE(バンライフ)」という本を出版したことがきっかけとなり、世界中でブームが起きました。このコンセプトに感銘を受けた宮下氏は、「stay anywhere anytime(誰もが好きな時に、好きな場所で、好きな人と過ごせる世界)」をミッションに掲げ、車中泊スペースやキャンピングカーなどのシェアリングサービスを提供するビジネスを展開しています。



宮下さんのお悩みごとにソリューションを与えてくれる、5人のお助け隊です。大企業のトップまで登りつめたベテラン経営者から新進気鋭の経営者まで多様なビジネスリーダーたちが彼の悩みに寄り添います。ファシリテーターとして登場したのは、宮崎県新富町で地域商社、こゆ財団の代表理事を務める齋藤潤一氏です。


5人の経営者の「あだ名」はForbes JAPAN編集長藤吉雅春が命名

──お助け隊──

大西洋氏(羽田未来総合研究所 代表取締役社長執行役員)
三越伊勢丹ホールディングスの元代表取締役。現在は羽田未来総合研究所で羽田空港をベースにして、新しいビジネスモデルに取り組んでいる。

富山浩樹氏(サツドラホールディングス 代表取締役社長兼CEO)
北海道を中心にドラッグストア事業「サツドラ」と地域マーケティング事業としての地域共通ポイントカード「EZOCA」を通して、地域密着型のコミュニティを作っている。

岡雄大氏(InSitu 代表取締役CEO)
時間をかけて地域の人と密着をしながら何年もかけてホテルづくりに従事。今年、日本橋兜町に築97年の建物を改装したホテル「K5」を手がけた。

磯野謙氏(自然電力 代表取締役)
東日本大震災をきっかけに自然電力を立ち上げ、日本全国で自然エネルギー発電所の開発と、実質自然エネルギー由来の電気の供給に力を入れている。

中村義之氏(YOUTURN 代表取締役)
福岡でYOUTURNを立ち上げ、地方への移住者を支援している。過去に「みんなのウェディング」取締役を務める。

宮下さんのお悩みごとは…





「バンライフ」は欧米の若者を中心にSNSを通じて注目されている一方で、日本での認知度はまだまだ低いのが現状です。宮下さんはキャンピングカーなどのシェアリングサービスを展開していますが、車自体の登録は増えるものの、ユーザーが思うように増えず、このビジネスをスケールさせるためにはまず、「バンライフ」自体の認知向上が必要だと考えています。

新しいサービスやカルチャーを初めてマーケットに持ち込む際、ユーザーがアレルギー反応を起こさないように、いかに彼ら目線となるフックを作るかが重要になってきます。その方法は千差万別。まるで思いつかなかった角度からのアプローチも必要になってきます。

5人のお助け隊が導き出した新しいカルチャーを根付かせるためのアイデアとは?


スケールのポイントは「フックづくり」




どうやって「カーステイ」が提案するバンライフを浸透させればいいのか?

「お助け隊」が出した答えは、「フックづくり」。「カーステイ」は、新規ユーザーにとって親しみやすいフックを作ることが大事だといいます。ポイントとなる5つのアイデアが出ました。

1.車+αの要素をつくる
2.ユーザーのニーズに近づく
3.楽しい言い訳をつくる
4.突然吹く風に備えて帆を張り続ける
5.あえて狭いターゲットを狙う

車+αの要素をつくる




「宮下さん、28歳ですよね?感激しました。逆に勉強させていただきました」

大西洋氏は、次世代の新たな挑戦者にまず敬意を示しました。その上で大西氏は自分の意見を述べました。

「まず一般の人たちが『バンライフ』をやってみるというところに1つハードルがあると思います。いろんなコンテンツを作りながらお客様とのタッチポイントがたくさん作れるような『車+α』のαの部分を作ることができれば、カルチャーとして、ものすごく大きく広がっていくのではないかなと思いました」

大西氏は現在、羽田空港をベースに新しい事業に取り組んでいます。ファシリテーターの齋藤氏は大西氏と一緒に取り組めそうな「+α」の具体的なアイデアを提案しました。

「日本の電車は海外の方から見て非常に複雑なんですね。例えば、この中で羽田空港から鈴鹿サーキットに行く方法を言える人いますか? 多分いません。非常に複雑にできていて混乱する。もともとカーステイやキャンピングカーは海外からの文化であると思うので、市場を世界に見据えて、日本に来たらとにかくカーステイを使う。羽田からいろんな地域に飛び立って行くようにすればいいのではないでしょうか」

ファシリテーター齋藤氏のまとめ:もともと「バンライフ」は海外の文化。「バンライフ」をそのまま普及させようとするのではなく、日本にある課題に対してのソリューションとしてユーザーに提供する方がいい。「車+α」を考えるためには、社会に潜んでいる課題とつなげて考えるのが有効。


ユーザーのニーズに近づく




以前からキャンピングカー事業に興味を持っていたのは、富山浩樹氏。「バンライフ」や「キャンピング」など言葉が持つイメージに注目しました。

「バンライフとキャンピングカーでは、言葉の響きが全然違うと思っています。バンライフはちょっと一般の人には遠いイメージなのに対して、キャンピングカーはみんなが楽しめるアウトドアというライフスタイルの延長線上にあるので、キャンピングカーの方がとっつきやすい。キャンピングカーという言葉を使うことで、すでにある潜在需要を活用できるのではないかと思います」

富山氏は潜在需要をうまく取り込むために、「新しいサービスを広めたいときは、ライフスタイルから攻めたほうがいい」と述べます。実はすでに富山氏はコロナ禍で加速している働き方「ワーケーション」をヒントにして、Wi-Fi付きキャンピングカーを経営者仲間に貸し出しているそうです。かなり好評とのことですが、その理由は、商品自体を勧めるのではなく今、求められている密にならないワークスタイルを提案することで、新しいカルチャーを取り入れる「言い訳」をつくってあげたからだと富山氏は言います。

齋藤氏のまとめ:自分たちのサービスだけではユーザーのニーズに応えきれない場合、外部との連携も視野に入れてもいい。外部のサービスもうまく取り入れながら、総合的にユーザーの心をつかむのが大事。


楽しい言い訳をつくる





先のアドバイスを受け、岡雄大氏は、ここ数年でブームを起こした「サウナ」を例にコメントしました。

サウナを愛し、自称「サウナー」の岡氏は、人気がでた裏側にはイメージの変化があったと言います。少し前までは銭湯で汗だくのおじさんが入っているイメージがあったサウナは、今では20代、30代のオシャレな人たちの中で注目されるアクティビティーのような位置づけにまでなっています。

もっと歴史をさかのぼると、元々は神事としての意味合いも大きかったサウナが、全くイメージを変えて美容、健康やマインドフルネスのような意味合いで利用され、ファンを集めていることは良いことだと岡氏はいいます。「バンライフ」もサウナと同じように同じように、本来の意味合いに固執せずに人が試してみたくなるような「楽しい言い訳」を作ることをオススメしました。

齋藤氏のまとめ:今のサウナブームは「整う」という体験で人気になったとも言える。「楽しい言い訳」を作るためにユーザーが味わったことのない新しい体験を提供できるようにすると良い。


突然吹く風に備えて帆を張り続ける





中村義之氏は、別の視点からアドバイスしました。

「YOUTURNは4年間ずっと赤字でした。そしてようやくこのコロナ禍で人々は東京一極集中型のリスクに気づき始め、移住者が増えることで3月にやっと黒字化できました。ここで学んだことは、4年間帆を張り続けてよかったということです。風が吹いたときに、帆を張って、その流れに乗れるように準備しているか、風が吹いてから帆を張り始めるかは大きな違いです」

宮下氏の提供するサービスが「良いもの」だからこそ、中村氏はこの言葉を投げかけました。さらに「風を待つときは、楽しみながらやれば良いですよ」と付け加えた。

提供しているサービスを社内の人間が一番楽しそうに使っていれば、いつか自ずと人は集まってきます。YOUTURNだけでなく、みんなのウェディングなど責任者として複数の事業を経験してきた中村氏の言葉は、説得力がありました。

齋藤氏のまとめ:経営者がそのサービスに一番熱狂することが大事。一人が熱狂することで、その熱量は伝播し、周囲をどんどん巻き込み、熱狂の渦を作ることができる。


あえて狭いターゲットを狙う





「遠い人に伝えることも重要ですが、あえて(カルチャーが)近い人たちにリーチして、ファンを作っていくのはどうでしょうか」

磯野謙氏は、他の参加者と逆の発想をしました。スノーボードやサーフィンが大好きで、昔車中泊をしたこともあった磯野氏は「あえて狭いターゲットを狙うのもいいのでは」と話します。

「例えば、車中泊を普段からしているサーファーをターゲットにすればいいのではないのでしょうか。日本にも最高のサーフスポットがいくつかありますし、バンライフ自体、サーフィンやスノーボード、スケートボードなどの横乗り文化にはなじみやすいと思います。サーフィンだけでなく、アウトドア関連で馴染みやすい分野をせめるのはいいのではないでしょうか」

齋藤氏のまとめ:市場をやみくもに探すのではなく、あえてターゲティングして深く突き刺さるエリアを探すのも重要。そのエリアはより熱狂を生み出しやすくなる。


「フックづくり」の実現


宮下さんは様々な意見を聞いて、「たくさんの視点をいただきまして、ユーザーへのフックを作っていくことの大切さの部分、大変共感しました。また、言葉の持つイメージも大事なので、そのあたりも考えていきたいと思います」と感想を述べました。

少し緊張気味だった宮下さんの表情は、アイデアを聞くにつれて和らいでいきました。最後に「皆様に背中を押していただけた時間でした」と言う宮下さんからはやる気が満ち溢れていました。



「お助け隊」と一緒に導き出したアイデアは、今後もビジネスをスケールさせる上で参考になる内容となりました。

Forbes JAPANとアメリカン・エキスプレスは経営者同士の助け合いが広がっていくことを心から願い、これからも起業家のビジネスを様々な形でサポートしていきます。


▶「お悩みピッチ」特設ページはこちら

お悩みピッチ記事一覧
CASE1|ビジネスをスケールさせる「三方よし」の知恵
CASE2|新しいカルチャーを浸透させる、「フックづくり」のポイント(本記事)


そう、ビジネスには、これがいる。
アメリカン・エキスプレス

【お悩み人】
・宮下晃樹氏(Carstay 代表取締役CEO)

【お助け人】
・磯野謙氏(自然電力 代表取締役)
・大西洋氏(羽田未来総合研究所 代表取締役社長執行役員)
・岡雄大氏(Insitu Japan 代表取締役CEO)
・富山浩樹氏(サツドラホールディングス 代表取締役社長兼CEO)
・中村義之氏(YOUTURN 代表取締役)

【ファシリテーター】
・齋藤潤一氏(一般財団法人こゆ地域づくり推進機構 代表理事)

Promoted by アメリカン・エキスプレス / Text by 井土亜梨沙 / Illustration by 中尾仁士(DCRX)