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2020.09.28 16:00

いま、すべての経営者に求められる「サスティナブルコンピューティング」へシフトすべき理由

株式会社ゲットイット 代表取締役 廣田優輝

株式会社ゲットイット 代表取締役 廣田優輝

都内2,000㎡の流通倉庫(勝どきZetta)には国内外の希少なIT機器の豊富な在庫。マルチベンダー対応の技術力は折り紙付き。
第三者保守の領域では1社1社のオーダーにも応えるゲットイット。同社代表の廣田優輝に、これからのITシステムのあるべき姿を聞いた。


世界のビジネスの潮流は、ESG投資、SDGsというキーワードなくして語れなくなっている。欧米の企業の多くは、ゼロカーボンをミッションに掲げ、サーキュラーエコノミー(循環型社会)にシフトした。ユーザーはこうしたメッセージを堂々と発信する企業に共感を示す時代となったのだ。

日本企業は総じて環境問題への感度が高く、3R(リサイクル、リユース、リデュース)にも積極的に取り組んでいる。本来、この分野で世界をリードできるはずだ。それを妨げている重要な課題のひとつにIT機器の大量廃棄の問題がある。

「メーカーの保証期間が終わると、自動的に新たなハードウェアに切り替えるといった流れがルーティン化されてしまうことに問題があると思っています。経営者サイドは、ITAD(情報機器資産の処分)に関するオペレーションの見直しが必要ではないでしょうか。社員の声を吸い上げ、社内全体で問題意識を共有する必要があるのです。実際、こうした取り組みを始めた企業も出てきています」

こう語るのは、ゲットイットの代表廣田優輝。同社は、EOSL製品の買い取り、延長保守(以下第三者保守)をメイン業務に据え、5年前に10億円だった売り上げを現在20億円までに伸ばしている。その急激な成長の要因のひとつとして、第三者保守というサービス自体のニーズが拡大していることが挙げられるだろう。廣田はその背景を次のように述べる。

「第三者保守とは、その名の通りメーカーやベンダーの代わりに第三者の企業が、メーカーサポートの終わったITシステムの保守を請け負うサービスのことを言います。ハードウェアやソフトウェアを更新できなくても、第三者の手を借り現状のシステムをしばらく延長して、AIやIoT、あるいはDXに投資したほうが有益ではないか。大企業を中心にこのような発想をする経営者が増えてきました。第三者保守は、日本ではまだマイナーな感がありますが、欧米ではすでに20%以上のシェアを誇る、“当たり前”のサービスです」

循環型社会の確立でIT化が加速する


ゲットイットは、その“当たり前”のサービスをただ提供しているわけではない。熟練のサーバー鑑定士、国内外のIT機器に精通したエンジニアなど豊富な人材を揃え、クライアント企業の課題に共に向き合う。何と1社1社に対して最適なシステムをオーダーメイドでつくり上げているのだ。入手困難なメーカーのサーバー、パーツも十分にストックしているからこそ、実装できたサービスだと言えよう。

システムの延長を勧めるだけではなく、IT市場の動向を見ながら、メーカーがサポートするシステムの導入を提言することもある。常に顧客ファーストを貫くゆえに、ユーザー企業から重宝されるようになったのだ。これほど顧客の信頼を獲得しているにもかかわらず、廣田は現状に満足していない。

「投資に見合った効果があると判断すれば、メーカーサポートの終了に合わせて新たなシステムを導入してもいいと思います。中小企業であれば、クラウド移行も視野に入れるべきでしょう。お客様の選択肢はたくさんあったほうがいい。実は、私たちの業界が解決しなければならない最大の問題は、前述したハードウェアの入れ替えとともに、IT機器が大量に廃棄されてしまうことにあります。

例えば、私たちに回収を任せていただければ、お客様の立ち合いのもとに機密データを適切に消去し、買い取ります。そして、そのIT機器を必要としている別のお客様の手にお渡しできる。循環型社会を推進できるのです」


「私たちの業界は、IT機器の大量廃棄の問題と本気で向き合わなければならない。」と廣田氏は語る。

実際に昨年、ゲットイットは、「使えるものは長く使おう」「使い終わったものは次に繋げよう」というコンセプトのもと、「サスティナブルコンピューティング(ITハードウェアの持続可能な運用のための総合サービス)」というビジネススキームをつくり上げた。ゲットイットの計画のなかから、廣田はひとつだけ具体的なアイデアを教えてくれた。

「例えば、このコロナ禍でもほとんどの公立の小学校がオンライン教育にシフトできていないことが問題になっています。教育格差が生まれることは日本経済の成長を遅らせる結果しか生みません。私たちは、メーカーの保証期間の切れたサーバーやルーター、コンピュータパーツなどを再利用し、子どもたちが安心して学べる仕組みをつくりたいと考えています」

IT機器の大量廃棄と向き合い、持続可能性を追求する


いまでこそ、サステナビリティ、循環性に強いこだわりをもつ廣田だが、もともとは、「自分はそんなタイプの人間」ではなかったという。

「2001年、学生時代にゲットイットを創業して以来、売り上げを伸ばすことしか考えてこなかった。しかし、このやり方ではいくら業績が伸びても、社員はついてきてくれない。会社の雰囲気も悪くなるばかりでした。09年、法政大学の坂本光司教授の『日本でいちばん大切にしたい会社』(あさ出版)という本と出合い、完全にマインドが変わりました。社員一人ひとりの声を聞き、みんなが得意にしていること、望んでいることを理解するように努めました」

一冊の本との出合いをきっかけに、ゲットイットはトップダウン型から、ボトムアップ型の企業へと生まれ変わる。多くの権限を社員に委譲したことで、多様な人材が集まるようにもなった。BtoCから、現在の根幹モデルであるBtoBへの移行を進言した社員は、総務部の裁量で採用した元証券パーソンだという。

「法人営業部を立ち上げ、いろいろな業種の方たちと触れ合っていくうちに、ものごとを俯瞰して考えられるようになりました。お客様から、“本当はいまのシステムを変えたくないんです”という相談を受けることもあれば、メーカーの営業の方から“私自身は第三者保守と提携したい。まだ十分に使える機器ですから”といった悩みを打ち明けられたこともありました。一人ひとりの声をきちんと聞き、集約させていくと誰もがIT機器の大量廃棄の問題に心を痛めていることがわかりました。こうした経緯から、我々のこれからの目標は、ITハードウェアの持続可能性を追求するという答えに行き着いたのです」

サスティナブルコンピューティングの進化とともに、日本のITは、いままで以上に温かさを感じられるように変わっていくことだろう。



ゲットイット
https://www.get-it.ne.jp/


廣田 優輝◎1980年生まれ。東海大学在学中にゲットイットを創業。当初は中古機器のネット販売が中心だったが、法人ニーズに着目し、保守サービス等も手がけるようになった。「社員とその家族の幸せ」にフォーカスしたユニークな経営を志し、「第6回ホワイト企業大賞」特別賞を受賞。趣味はワインとサーフィン。ベーシストとしてメジャーリリースも経験。

Promoted by ゲットイット/ text by Hiroshi Shinohara / photograph by Kiyoshi Hirasawa / edit by Akio Takashiro