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2020.07.17

先進技術でクスリの概念を覆す 日本発バイオベンチャーが世界の主導権を握る日──見えている経営者と道を示すVC #5

先見の明で社会にgood Impactを与えるスタートアップをサポートするVC、モバイル・インターネットキャピタル。同社が注目する企業を紹介する連載企画。

今回登場するのは、斬新な創薬プラットフォームと革新的な創薬技術を武器に世界を舞台に活躍するバイオベンチャー、モジュラスだ。


低分子薬はクスリの王道


“有効な治療薬がない”。その現実が自らの、あるいは家族や身近な人の心の痛みや不安をいかに膨らませるか。新型コロナウイルス感染症の流行で、あらためて多くの人々がそのことに気づかされたのではないだろうか。

世の中には、がんや難治性疾患などの重篤な病気と闘っている患者もいれば、生活習慣病に苦しめられ思うような暮らしができない人もいる。彼らが抱える疾病の中には、いまなお治療法もなく、特効薬もない症例が無数にある。新薬の早期の誕生が待望されるゆえんだ。

新たな薬はそう簡単には生まれない。製薬会社が数百億から数千億円の研究費を投じても、新薬が誕生するまでには10年から20年の歳月を要する。しかも、低分子薬の場合、臨床試験を通過して新薬が上市される確率は3万分の1ほどでしかない。つまり、2万9,999の薬のタネが創薬プロセスで振り落とされる。これが通説だった。薬の候補化合物が見つかっても薬効が認められるとは限らないからだ。

それがいま変わりはじめている。その中心にいる創薬ベンチャーの一社がモジュラスである。

近年、バイオ医薬品の研究が進み、製薬会社の多くが高分子の抗体、核酸、遺伝子薬などの新たな創薬手法に舵を切った。いまやパイプラインの半数近くがバイオ医薬品だという製薬会社も珍しくない。モジュラスは時代の流れに逆らうかのように、低分子薬の開発に対して強いこだわりをもつ。

「製薬会社の多くが高分子薬の開発にシフトしたのは、いわゆるアンメット・メディカル・ニーズ(いまだに治療法が見つかっていない疾患に対する医療ニーズ)に応えたいというビジョンがあるからです。その一方で、低分子の標的化合物を見つけるのが難しくなり、採算が合わなくなったことも新薬が生まれない要因のとして挙げられるでしょう。とはいえ、低分子薬には多くのメリットがあり、現在も薬のゴールドスタンダードである事実に変わりはありません。何より患者さんが低分子の新薬を求めているのです」

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木村 俊◎モジュラス代表取締役CEO。ボストン大学生体医工学博士号を取得後、マサチューセッツ工科大学で博士研究員となる。その後、Variagenics, Inc.、Bristol-Myers Squibb、米シュレーディンガー社を経て現職。

こう語るのは、同社代表取締役CEOの木村俊。患者サイドの視点から、低分子創薬の必要性を次のように説く。

「大量生産ができて保存期間も長い低分子薬は、他の治療手段と比べても格段に薬価を下げて多くの患者さんに提供できます。動脈内注射、口腔粘膜投与といった特殊なことをせずに、経口投与で治療できるのも患者さんの安心材料のひとつでしょう」

創薬の常識を変えた、計算科学とは


21世紀に入ってから低分子の新薬の上市は減少傾向にあり、歯止めが利かない状態だ。傍目には創薬を成功させるのは厳しい挑戦だと思えるかもしれない。しかし、木村はそんな懸念に対して、適切な答えをもっている。

「よく言われている創薬シーズの枯渇という課題はすでに解消されているのです。実は低分子創薬の開発を促進する技術がこの数年で飛躍的に向上しました。それを可能としたのが、当社のコア技術でもある計算科学を用いた創薬手法です。米国では結果を出せる最先端の技術として認知され始め、複雑な細胞構造をもつ病気をターゲットとする創薬パイプラインが増え始めています」

計算科学を用いた手法とは、生体の細胞をコンピューター上で再現し、病気の根源となるタンパク質の異常な働きを抑制する化合物を探しあてるシミュレーション技術のことをいう。人間の力では到底できないような複雑な実験も、コンピューター上なら可能だ。タンパク質の動的運動を見ながら分子設計できるのが、従来のウエット(装置や薬品を用いた実験)のアプローチとの最大の違いと言えるだろう。この計算技術を使うと、新薬の候補化合物が見つかるスピード、確率が桁外れに上がる。すると、奇跡のようなことも起こるのだ。

「例えば、がんのような毒性の強い病気の場合、薬を飲み続けると耐性ができて効かなくなってしまうことがあります。そこで計算技術を使うと、耐性ができる原因を突き止められるので、既存薬よりも効能が高く、安全性にも優れた新薬を生みだせる確率が高くなる。つい最近までは考えられないことでした」

オープンイノベーションで製薬システムが変わる


木村はバイオベンチャーの聖地、ボストンで計算科学のスキルや、製薬の知見を深めてきた。ボストン大学生体医工学博士号を取得し、マサチューセッツ工科大学の博士研究員を経て、計算科学の最高峰とされるヴァーチャルファーマーでキャリアを積み重ねてきた。その木村が創業を決意したとき、なぜバイオ医療で後れをとる日本を活躍の舞台に選んだのだろうか。

「確かに日本のバイオベンチャー業界の規模は小さい。それでもアカデミアは素晴らしい成果を上げています。2012年に京都大学の山中伸弥教授、16年に大隅良典教授、18年には京都大学の本庶佑教授がノーベル生理学医学賞を受賞したことでも明らかです。またスーパーコンピューターの分野でも日本は世界をリードしています。7年前、日本に帰国したとき、東京工業大学の『TSUBAME』の性能の高さには驚かされました。さらに、ペプチドリームのような世界の製薬業界を震撼させるような創薬技術をもったバイオベンチャーも出現しています。日本のメディカルサイエンスのポテンシャルはとても高いのです。彼らと協働することが、病気に苦しみ、豊かなライフプランを描けないでいる患者さんのもとへ特別な薬を届ける近道だと思ったのです」

モジュラスはオープンイノベーションを含めて現在10の創薬パイプラインを進捗させている。とてつもない数字だ。その中にはペプチドリームとのコラボレーションも含まれている。社員数わずか10人の会社が画期的な現象を起こしていると言えよう。

「私たちのビジネスモデルは、ひとつの病気に対して最適かつ副作用の少ない化合物を複数探し当て、薬の分子設計をすることまでです。臨床試験直前には大手製薬会社にライセンスアウトします。だからこそ、社員10人でも多くの創薬プロジェクトを始動させることができるのです」

会社の成長とともにモジュラスの創薬プロジェクトに参加する海外の製薬会社やアカデミアも増え続けている。小さな会社のようで、実情は計算技術を武器にあらゆる業界のスペシャリストとのネットワークを構築している。創薬プロジェクトのステークホルダーとしてモジュラスの10人が動かしている人間は数百人にも及ぶだろう。

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先進創薬技術をもつモジュラスには多くの資金が集まる。そのうちの1社であるモバイル・インターネットキャピタルとは特別な関係を築いていると木村は言う。

「DX(デジタルトランスフォーメーション)の観点からいえば、他の業界に比べて、製薬業界は遅れていると言わざるを得ません。もっと効率よく薬を出していくためには、IT業界のノウハウを採り入れることが重要だと考えています。IT系のインベスターとして先頭を走るモバイル・インターネットキャピタルさんの知見は素晴らしく、有益な情報を頂いています」

モジュラスが次々と新薬を出そうとするのは、単純にたくさんの病気を治すことだけを目的にしているわけではない。その視線の先には、薬と長く付き合っていかなければならないがん患者、難病患者のクオリティ・オブ・ライフの向上というビジョンがある。だからこそ、低分子創薬にこだわるのだ。


ベンチャーキャピタルの目線
──製薬とITとの融合──
山中陽介|モバイル・インターネットキャピタル パートナー

バイオベンチャーに投資するインベスターのほとんどがメディカルサイエンスの知見、幅広い創薬の知識をもっています。その点において私たちが特別だとは思っていません。私たちは、ITの領域でスタートアップの成功も、挫折も目の当たりにしてきました。モジュラスさんはいま、製薬業界に素晴らしいイノベーションを起こそうとしています。私たちは、IT業界の投資経験を生かし、モジュラスさんのビジネスを支援したいと考えています。例えば、モジュラスさんの計算科学を発展させるために、IT業界の最新のテクノロジーをお勧めすることも、IT企業との橋渡しもできる。今後、それが弊社の大きなバリューになると確信しています。


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山中陽介◎モバイル・インターネットキャピタル パートナー。東京大学大学院修士課程修了。東日本電信電話にて大規模ネットワークインフラ設計、電子カルテ等の医療機関向けシステム導入やヘルスケア業界向け新規ビジネスに従事。2015年11月より現職。


ベンチャーキャピタルの目線
──計算科学の希少価値──
木村賢蔵|モバイル・インターネットキャピタル インベストメントマネジャー

モジュラスさんの計算科学は、コンピューターのGPUの性能の向上とともに進化を続けています。静止画が動画になったことで、細胞の構造の解析が容易になった。1時間あたりの計算コストも10年前と比べると1,000分の1にまで下がっています。ところが、その計算科学のソフトウェアを使いこなせる研究者は世界を見渡してもそれほどいないのです。そんなモジュラスさんとペプチドリームさんの協働は夢のような話です。世界に大きなインパクトをもたらすのは間違いありません。インベスターとしてその一翼を担えるのは本当に心躍る体験です。

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木村賢藏◎モバイル・インターネットキャピタル インベストメントマネジャー。東京大学大学院修士課程修了。大阪ガスにて全社防災戦略の企画立案に従事、東日本旅客鉄道で駅バリアフリー化プロジェクトのマネジメントを経験。2019年2月より現職。




モバイル・インターネットキャピタル
https://www.mickk.com


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Promoted by モバイル・インターネットキャピタル text by 篠原洋 photographs by 後藤秀二 edit by 高城昭夫

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