SNSの時代、双方向のコミュニケーションが可能になったからこそ、企業は消費者といかにつながるかに苦心している。クオン株式会社が提供するコミュニティ・プラットフォーム「ファンコミュニティクラウド QON」は、こうした企業の課題に対して、消費者と価値観で共鳴し合う“絆”の場を提供する。ファンコミュニティは、消費者とのコミュニケーションをいかに変え、企業に何をもたらすのか。
V字回復の原動力のひとつになったファンコミュニティ
「2度、V字回復をしました」
こう語るのは、株式会社アテニア代表取締役社長の斎藤智子だ。“一流ブランドの品質を、1/3価格で提供する”ことをモットーに多くのファンから愛されている同社だが、その30年の歴史で2度の売上低迷とV時回復を経験した。2度目は2015年。ありとあらゆる手を尽くしたと振り返るこの時に、業績回復の一翼を担ったのが、クオン株式会社が提供する「ファンコミュニティ」だった。
「常にファンコミュニティをチェックしている」と公言する斎藤だが、その導入を決めたのも彼女自身だ。ファンコミュニティはアテニアに何をもたらしたのか、振り返ってくれた。
ファンコミュニティを始めたきっかけは?
斎藤智子(以下斎藤): 2008年のリーマンショックの頃、売上が急降下した時期がありました。アテニアはバブル全盛だった創業当時から「高品質」「低価格」「ハイセンス」をうたっていたのですが、この頃から化粧品の需要が高価格帯と低価格帯へと二極化していったように思います。中価格帯に位置づけられるアテニアの商品は、どちらにも属さず苦しい時代が続きました。
アテニアの主力シリーズのひとつ「Dress lift(ドレスリフト)」
当時、営業戦略室長として広告を担当することになった私は、消費者が口コミや第三者からの情報をより信用する風潮を実感し、このまま単に一方的な広告を打つだけでは、誰も振り向かなくなってしまうと危機感を抱いていました。
そして、「世の中に、自発的に推奨の声が広まるような仕組みを作ることができないか」と模索していたのです。当時、このような仕組みを「循環型」と呼んでいましたが、そのときに出会ったクオンの創業者である武田隆さんの書籍(武田隆『ソーシャルメディア進化論』ダイヤモンド社、2011年)が、まさにこの「循環型」について書いていました。
口コミは売上に直結しないのは当たり前という時代でしたが、武田さんは「良質なコミュニティをつくり自発的にユーザーが交流する場を設けることは、売上にも直結する」と書いていました。驚いた私は、自らクオンさんに連絡を取ったのでした。
2015年12月にコミュニティ運用を開始してから4年になるのですが、現在の会員数は15万人になります。
ファンコミュニティ運用はアテニアに何をもたらしたのか?
斎藤:うれしいのは、リアルな本音が豊富に集まってくることです。しかも、我々が促しているわけではないのに良い声が自然に集まってくる。それがファンコミュニティの醍醐味だと思っています。
本音だからこそ、我々が意図していなかった商品価値を知ることができます。開発者が狙った効果とは異なるメリットや魅力を、ユーザーは発見してくれるのです。コミュニティから得た本音は、商品の売り方やプロモーションにも影響を与えるものですが、その意味でお客様は素晴らしいコピーライターですよね。こういうコピーは狙って創るものではなく、自然発生する声だから価値があるのです。
また、コミュニティには、アテニアのことを知ったばかりという方も少なくないです。そういったライトユーザーの方々が、ヘビーユーザーが熱く語る姿を見ることが、良い循環につながっています。コミュニティは、いろいろな意味でアテニアファンになるための登竜門として重要な役割を果たしていると感じています。
自分の人生においてアテニアがどれだけ大事な存在なのかをコメントしてくださる方もたくさんいらっしゃいます。アテニアに出会うのは、人生の転機を迎えるときが多いようです。結婚、出産、社会復帰のときに、お金の問題がどうしてもつきまとう。でも、使う化粧品の品質は落としたくないとアテニアを手に取る方が多いと感じます。
今年が30周年だったアテニアに対して、「私の肌を一生お願いします」「たくさんの女性がアテニアと人生を共にしているんだなと思いました」といったファンの声がコミュニティに寄せられました。こうした言葉を見ていると、アテニアという企業の存在価値を再認識させられ、私たちがあるべき方向も見えてくるのです。
売上にはどのような影響が?
斎藤: まだ、アテニア歴が浅いお客様について、コミュニティ登録の前後で購入率や購入金額を見ると、コミュニティ登録前に比べ、登録後は二桁成長をしています。リピーターを獲得することは簡単なことではないので、この数字は驚くべきものです。
やはりコミュニティに参加していると、自分の求めている商品以外の情報に触れることができますし、タッチポイントが増えるのでしょう。コミュニティがない場合だと、どうしてもお客様の継続率をあげるための施策がクーポン配布などの値引きに頼ってしまいがちですが、その必要がないのです。
SNSやメルマガ、情報誌などでの情報発信にも担当として取り組んだ経験から、お客様との接点を持ち続けることの難しさは痛感してきました。対してコミュニティは、情報を取りに行くのが目的ではなく、楽しいから訪れるというなかで、自然に商品の情報に触れられる場になっているのだと思います。これは理想的なWin − Winの関係ではないでしょうか。
お客様の関心が見える化されたことも非常に重要です。弊社では様々な角度から数字を出して分析しているのですが、独自の計算方法でファン度(ロイヤルティ指数)を数値化しようという取り組みも行っていて、この値が向上しています。このあたりにも、コミュニティ運用の成果を感じています。
今後、コミュニティをどう活かしていきたいか?今、「アテニア」と検索すると、ファンコミュニティの声がヒットします。このように質の良い声が自然に増え、自然に広まっていくという環境は、私がずっと作りたかったものです。ついにこのフェーズにきたのだなという感覚はあります。
コミュニティは、企業とユーザーのハブとしての役割を持っているからこそ、押し付けにならないコミュニケーションができます。その一方で、企業の存在も見えていることで、お客様には企業とコミュニケーションしているという満足も生まれます。
もちろん私たちが伝えたいこともあります。それが伝わるためには、潜在的なお客様の心理にどれだけアジャストできるかが重要です。アテニアはその点をここ2、3年で強化してきて、だからこそ「そういうものが欲しかった!」という商品をたくさん生み出すことができました。その積み重ねでアテニアは「期待値を超えてくるブランドだ」とお喜びいただいています。この「お客様の心理にアジャストする」ということを、コミュニティが大きく担っています。
最近は商品開発やブランドにかける想いをコミュニティで発信しているのですが、等身大のアテニアが見えるとすごく喜んでいただけます。トレンドとして、等身大で、距離の近いブランドが求められる時代だなと感じます。等身大のアテニアをお伝えするという点でも、コミュニティの役割はとても重要なのです。
ファン同士のつながりは、どのような効果を生み出している?斎藤:私がコミュニティの投稿を見てアテニアの存在意義を確認するように、ファンの方も他のファンの方とのコミュニケーションを通して自分自身の存在を再確認しているのではないでしょうか。同じような環境で、同じような悩みを持っている方々と交流することで、分かち合える喜びや自信が生まれる。商品によって綺麗になること以外の副産物がたくさんあるのではと思います。
例えば、リアルイベントを開催すると「私と同じアテニアファンの方に出会えてよかった」という声をよくいただきますし、「イベントに参加するみんなが綺麗になってくのを見て、自分も幸せになりました」という内容を投稿されていたりします。
副産物とはいえ、こういったことの方がむしろ価値は高いのかもしれません。世の中のトレンドとしても、D2Cマーケティングが注目されてきているので、売上にすぐ直結しない要素こそ大事にしていかなくてはならないと強く感じています。そういった意味でもコミュニティの存在は、欠かすことができない重要なものと考えています。
株式会社アテニアhttps://www.attenir.co.jp/アテニア ファンコミュニティhttps://www.beach.jp/community/ATTENIR/indexクオン株式会社https://www.q-o-n.com
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