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2019.11.25

3代目が織りなす4次元オープンイノベーション

IoT時代の幕開け、日本の中小企業には再び活路を見出すチャンスが到来している──そんな予兆を感じさせるイベント「家業をテクノロジーで再建~チャレンジへの勇気とその可能性を探る」が、10月6日エヌエヌ生命保険の主催で開かれた。

日本経済の屋台骨である中小企業が抱える大きな課題が事業承継であるのは周知の通り。しかし、中小企業の休廃業の増加する現代の日本で、最先端技術を取り入れ、家業を革新する老舗の継承者たちがいる。京都西陣織の帯から、銀メッキ繊維に着目し、ウェアラブル製品開発へとつなげたミツフジ。そしてプランターから、IoTプランターとIoTコミュニティファームへと展開させたプランティオ。家業を再興させたふたりの継承者がそのプロセスを紹介した。

ともに3代目である彼らが家業を継いだとき、経営は赤字状態だった。だが「長く続いた企業には、必ず何らかの価値があるはず」と声を揃える。先代が築いた事業の本質を見極め、新時代に見合うカタチへと変革させたその道のりは、まさに時空を超えた“4次元オープンイノベーション”だった。

当日は三寺、芹澤両氏のプレゼンテーションと、弊誌編集長・藤吉雅春のモデレーションによるトークセッションが行われた。

「諦め」の壁を打破する


三寺歩◎1977年生まれ、京都府出身。立命館大学経営学部卒。在学中に海外在住者向けネット書店「ねっとほんや」を創業。01年松下電器産業に入社。その後シスコシステムズやSAPなどのIT企業を経て、14年にミツフジの前身である三ツ冨士繊維工業に入社し、同年社長に就任。

まず登壇したのは、ミツフジの三寺だ。

ミツフジは、銀メッキ繊維を電極として編み込んだ、着用するだけで生体情報を取得できるウェアラブルIoTシャツ、取得した情報を送信するトランスミッタ、そして生体情報を独自のアルゴリズムで解析することで、健康と安心・安全を届けるクラウドサービスを開発した。過酷な環境下で働く作業員やスポーツ選手に始まり、幼児や女性、てんかん患者とさまざまな層に向けた製品を次々と送り出している。

Forbes JAPANの「スモール・ジャイアンツ」大賞や、日経ビジネス「世界を変える100社」へのランクインなど、メディアからも注目を集める。

社長就任からわずか5年で、世界から発注が絶えない企業へとミツフジを成長させた三寺。しかし家業を継ぐため帰郷した7年前、残されていたのは小屋と借金のみ、かつてあった広大な敷地や工場は全て失われていた。傾きかけた中小企業の典型で、「誰もわかってくれない」と両親はもはや諦めていた。

「けれどもそこにはものすごい技術が眠ってる。親の代が見失ってしまったその宝を見つける作業をすると、事業承継は実は素晴らしいことだと思うのです」 

ミツフジの“宝”は、抗菌に使われていた銀メッキ繊維だった。顧客をひたすら回ってその糸の価値を探り当てると、三寺は銀メッキ以外の商品を一切止めることにした。その決断については、現実にある二つのラーメン屋のメニューで説明する。「豚骨も醤油も塩もあるラーメン屋と、一種類しかないラーメン屋」。どちらが人気あるかといえば、後者だという。父親の代では、売り上げの減少を恐れてあれもこれもと製品展開していた。だが中小企業が総花的に手を伸ばしていたら、費用は膨らむばかりだ。

「一味だけで勝負する。私が事業承継でやってきたことは、本当にそれだけなのです」

ミツフジの導電性に優れた銀メッキ繊維は「世界一綺麗な心電データが取れる」という。これをコアテクノロジーとしたことで、IoTウェアラブルに進出、やがてクラウドやマーケティングなど関連事業の発注が入るようになり、ビジネスは大きく広がった。昨年9月には福島県川俣町に工場が竣工し、本格的な地域復興のプロジェクトにも乗り出した。

ミツフジの大躍進を率いてきた三寺だが、原点となる体験は高校3年時の学園祭だという。クラスメートは演目のアイデアに夢を膨らませはするが、つまるところはお決まりの「俺ら、あかん。やめておこう」。業を煮やした三寺は、クラスを先導することを宣言し、2ヶ月で必死に演劇を作り上げた。すると共にやり切った同級生たちは、それ以降、諦めの言葉を口にしなくなったのだという。「可能性を信じると、人や物事は変わる」という実感をこの時に得た。

三寺は、毎年繰り返し全社員の前で話すことがある。ミツフジと創業年数のほぼ等しいANAが、ヘリコプター2機で始まった当時から、決して諦めることなく世界中に旅客機を飛ばすビジョンを抱いていた、ということだ。

「つまり、思うか思わないかの差ですよね。意識を変えるのはタダですし、言うのもタダだからリスクはゼロ。だから経営者は言うべきなんです」

家業から、カルチャーを生み出す


芹澤孝悦◎プランティオCEO/共同創業者。大学卒業後、ITベンチャー企業に入社。エンターテインメント系コンテンツのプロデューサーを経て、プランターを開発した家業のセロン工業へ入社。2015年プランティオ創業。

続いては、プランティオの芹澤が登壇した。


プランティオのIoTコミュニティファーム「SUSTINA PARK EBISU PRIME(サスティナ・パーク・エビス・プライム)」では、野菜栽培とコミュニティを専用アプリでつなぐ。アグリカルチャー(農耕)にエンターテインメント性を掛け合わせた「アグリテインメント」で、都市での新たなマイクロファーミングの世界を切り拓くことを目指す。

アプリには、カメラやセンサーで計測される野菜の育成状態や収穫期を確認する機能、育て方のトリビア、スマートロック、そしてSNSの機能などが搭載されている。また手入れに参加すると、ブロックチェーンで管理されたトークンが得られ、育てる楽しさを感じることができる。だがIoTやAIを駆使したこのIoTコミュニティファームに至るまでは、一筋縄ではいかなかった。

芹澤の祖父はプランターの発明者だ。プランターを「いのちの ゆりかご」と呼んでいた祖父に倣い、当初はハイテクを用いてプランターを再発明しようと試みた。開発は進んだが、単なるガジェットとして一過性の商品になってしまうことが気がかりだった。思い悩むなか「祖父の発明の本質は、誰でもアグリカルチャーに触れられる機会をつくったこと」、つまり家庭栽培の文化を広めたことだと気づく。

「もしプランターを時代に合わせてアップデートするなら、野菜だけではなく、人と人とのコミュニケーションを育むハードウェアなのではないかと思ったのです」

こうしてアグリカルチャーを分かち合う新たなプラットフォームとして、IoTコミュニティファームを立ち上げた。持続可能性を掲げるSUSTINA PARK EBISU PRIME(サスティナ・パーク・エビス・プライム)は、消費者から遠くなってしまった「食と農」を身近なものにすることも狙いだ。芹澤はこの事業を通じて、農の“民主化”を図りたいという。

家業の価値を再発見し、「一つ上の概念で」アップデートする


 
最後に、三寺、芹澤、そして藤吉によるディスカッションが行われた。

藤吉:三寺さんは、導電性繊維を買っていたお客様を全て回られて、そのときいろいろなヒントを頂いたそうですね。

三寺:そうですね。父の代できつかったのは、データがあやふやな世界だったからで。それがデジタルでデータを出せる時代になって、品質の高さが証明できるようになった。これはもう一回いけるぞ、と。お客様にもそう言われたんです。

藤吉:芹澤さんは創業者であるお祖父様の理念を理解し、点と点がつながったとき、ご自身の事業にたどり着かれた。

芹澤:実は僕も、父がやっていたフローラル部門から、祖父のプランター事業に原点回帰しようと思った理由は、農業試験場の方から、精度が必要な植物栽培ではうちのプランターが欠かせない、と聞いたからなんです。でもIoTプランターの開発中に、ふと、最初に普及したのは家族みんなでわいわい育てるのが楽しかったから、と祖父が言っていたのを思い出した。楽しさが、プランターで家庭菜園するカルチャーにつながったんだな、と竹を割ったように理解したんです。

藤吉:コミュニティでシェアして楽しむ、という芹澤さんのファームは、さらに一歩先へと進化させていますね。

芹澤:サステナビリティも掲げていますので、野菜は在来種の種から育てている。店で購入すると、今はほぼF1品種(品種改良された一代限りの種)の野菜なので、子育て中の女性にはそれだけでも価値を感じてもらえるのです。

藤吉:ミツフジは導電性繊維から始まって、一気通貫型のIoTウェアラブルへと事業を拡大されてきた。どこをどう伸ばそうと思われたのか、拡大のポイントを教えてもらえますか。

三寺:ウェアラブルの場合、繊維からアパレル、IT、クラウド、さらに医療や保険まで、それぞれプロが必要とされるのですが、ニーズとシーズが分かれているので、ニーズがある会社は7社ぐらいに声をかけないとできないんです。それでニーズとシーズをつなぐ役割をしているうちに、糸の会社なのにクラウドをやってくれという発注が入るようになって、結果的に一気通貫になっていた。IoTとは産業の壁を破壊するもの、つまり1社だけが「何々屋さんです」といってもお客様に納得してもらえない。例えばIBMはそうした危機感があるので、我々とワコールさんと服を作って売っている。今後はますます、どういう顧客課題や社会課題を解決できる会社なのか、ということが要求される世界になっていくのではないでしょうか。

藤吉:企業の社会的役割がますます問われてくるということですね。

三寺:社内でよく言っているのですが、20世紀は戦争の時代。戦争も経済戦争もありました。けれども21世紀は、人が競争し合う基盤であった地球や環境自体がなくなるかもしれない。共に生きていかないと成立しえない、共創の時代が21世紀なのではないかと。企業の在り方も、ライバルだけれど助け合い、共に生きることだと思うのです。

藤吉:事業を承継されたおふたりの話を聞いていて、ナレッジや哲学をシェアして引き継いでいく、という時代が来ていることを感じました。社会のあり方や生き方を変える、その先頭を走っていらっしゃるのが、今日のおふたりであったり、中小企業やスタートアップの経営者だと思います。本日は本当にありがとうございました。
 

エヌエヌ生命保険は、ヨーロッパと日本の18カ国に拠点をもつ大手 保険会社・NNグループの日本法人。中小企業「仕立て」の商品や、保険に留まらないサポートの提供に加え、後継者・若手経営者の育成を支援する活動にも力を入れており、そのひとつとして「家業イノベーション・ラボ」を展開している。

家業イノベーション・ラボ
https://kagyoinnovationlabo.com

エヌエヌ生命保険
https://www.nnlife.co.jp

Promoted by エヌエヌ生命 / text by Madoka Takashiro / photographs by Masahiro Miki / edit by Yasumasa Akashi

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