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向こう見ずとも言われた大胆さと豊かな知性を兼ね備え、革新的な発明にも挑んできたマダム・クリコを彷彿させる若き女性起業家たち。日本で2度目に独自開催される「ヴーヴ・クリコ ビジネスウーマン アワード」の受賞者は、まさにニュージェレネーションアワードにふさわしい人物だ。


「小さな違和感を見逃さずにビジネスへ転換」──大石佳能子 株式会社メディヴァ代表取締役

マッキンゼー・アンド・カンパニーで消費材マーケティングが専門だった大石佳能子氏が医療業界に目を向けるきっかけとなったのは、21年前の自身の出産だった。

「出産前後に病院にかかり、待ち時間の長さやお医者さんの妊婦への態度、近所の産科医院から大病院へ移った際に情報の共有が一切なかったことなど、違和感を覚える点がいくつかありました。多くのひとが同じような経験をしていると思いますが、驚いたのは医療業界がそれに対して何の改善も行おうとしていなかったこと。この分野で何か私にできることがあるのではないかと感じました」

産休後は早速マッキンゼーのヘルスケア部門に移り、病院のコンサルティングを始めるが、患者サイドに立った医療サービスと経営改善の必要性を実感し、同じ志を持つコンサルタントや医師たちと株式会社メディヴァを設立。起業後は、日本で初めてカルテの完全開示を導入するなど従来の医療機関のあり方に一石を投じ、現在は “トータル・ヘルスケア・コンサルティング&オペレーション・カンパニー”の先駆者として業界をリードする存在となっている。



「医療を提供するのは病院や診療所。お金を払うのは健保組合。政策を決めるのは政府や行政。そこにさまざまなサービスを提供するのは企業。これらすべてをつなげながら患者視点でよりよいシステムを構築していこうとすると、自然に業務内容は広がっていきました」

大石氏はいま、終末期の在宅医療、自宅での看取りなどを改善すべく、地域包括ケアシステムの新たなモデルの構築にも取り組んでいる。

「日本はどの国よりも早く超高齢化社会を迎えているので、私たちの仕事の多くには先例がない。だから“無人島に街を作る”ようなもの。いい着地点を得るには、医療、介護、行政など異なる多種の現場の情報を正しく集めて、それを各所にわかりやすく伝えるという役割が非常に重要で、私たちはプランを作りながら、その通訳の役割も担っているんです」

自身の体験で感じた小さな違和感を見過ごさず、それを社会の改善につなげていく。19世紀初頭に世界初の女性実業家として海外にも果敢にビジネスを拡大していったマダム・クリコのように、大石氏も道なき場所に道を築いていくパイオニアとして、数多くの政府審議会の委員を歴任しつつ、アジアを中心に海外17か国でも事業を展開中だ。

「実績を積んで利益を上げるだけでは意味はありません。自分たちの会社がなぜ存在しているのか、地域の再生に貢献しているのか何のために仕事をしているのか、そんなことを自分にも社員にも問いかけながら、社会における我々のミッションについて常に大切に考えています」


大石佳能子◎株式会社メディヴァ代表取締役。大阪府生まれ。大阪大学法学部卒、ハーバード・ビジネススクールMBA、マッキンゼー・アンド・カンパニー(日本、米国)のパートナーを経て、メディヴァを設立。医療法人社団プラタナス総事務長。メディヴァ、プラタナスを通して、日本の医療・介護を患者と利用者の目線で変えていくことを志し、事業の開発運営とコンサルティングに取り組む。

「スーパーヒューマン・インテリジェンスのある未来のために」──平野未来 株式会社Cinnamon代表取締役

映画『スタートアップ・ガールズ』は、女性の起業をテーマとした作品。主人公はITと医療の分野で起業を目指す天才肌の大学生で、そのモデルとなったのが平野未来氏だ。

「学生時代にグーグルが世界中の人の情報に対する接し方を一変させたのを見て、自分も人々の生活をドラスティックに進化させる会社を作りたいと思ったんです」と、東大でコンピュータ・サイエンスの修士号を取得した彼女は在学中に起業。最初の会社は2011年にミクシィに売却し、その翌年にシンガポールで現在の会社シナモンの前身にあたるSpicy Cinnamonを設立した。

「ソフトウェアの受託をメインとしていた時期は、資金が底をつきそうになったこともありました。でもAIの開発に事業転換をすることで流れは変わりました」

現在はホワイトカラーの生産性を最大化することを目指し、さまざまなAIシステムを開発中。請求書やメールなどの書類から有意な情報を抽出し新たなドキュメントを作成する『Flax Scanner(フラックス・スキャナー)』や、高度な音声認識によってコールセンター業務などを円滑にする『Rossa Voice(ロッサ・ボイス)』はすでに多くの企業で活用され、今後の動向がベンチャー業界で注目されている。



「私は昔から同じことを2回やるのが嫌いで、20代のころから自分が使うためのシステムをプログラムしたりしていました。でも17年に第一子を出産し、将来自分の子供が働き始める頃には、日本人の働き方全体が圧倒的に変わっている世の中にしたいと、強く思うようになったんです」

平野氏は自身が思い描く未来のビジネスシーンを、“スーパーヒューマン・インテリジェンス”という言葉で表現する。

「これには3つの要素があります。第一は人が仕事をする上でのケイパビリティが10倍になる。いままで1時間かかっていた仕事が5分で終わります。第二は、いまは社内や自分自身に知識や経験が蓄積されることで仕事ができるようになっていきますが、それが一瞬でできるようになる。つまり新人が一人前になるには数年かかりますが、そのラーニングや社内に蓄積されたあらゆるナレッジに一瞬でアクセスできるようになります。第三は弁護士、税理士、医者などがもつ専門知識も瞬時にキャッチできる。この“スーパーヒューマン・インテリジェンス”は一種の世界観で、実際に実現しようと思ったら100年かかるかも。でも、そういう世界に向かって進んでいきたいんです」


平野未来◎株式会社シナモン代表取締役CEO。東京・浅草生まれ。東京大学大学院在学中の2006年にネイキッドテクノロジーを共同創業。2012年シナモンの前身であるSpicy Cinnamonをシンガポールで創業、2013年ベトナムに開発拠点を設立し、2016年シナモン設立。「ホワイトカラーの生産性向上」を目指し、AI関連プロダクトの開発とコンサルティングを行う。

記事前編はこちら
「仏のシャンパーニュメゾン「ヴーヴ・クリコ」が、女性企業家を表彰する理由」

MHD モエ ヘネシー ディアジオ
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