世界38カ国、800万人が愛読する経済誌の日本版

受け継がれてきた伝統に、新たなアイデアをプラスし、既存の事業を進化させてきた若き挑戦者たち。実際に家業承継をイノベーションへと変えてきた2人の社長が、エヌエヌ生命のファシリテーションで、その可能性を語り合った。


ウェアラブル端末を手がける企業として、世界から注目される京都のミツフジ。代表取締役社長の三寺 歩氏は、父が見出した導電性の高い銀メッキ繊維「AGposs®」と繊維企業ならではの「編み」の技術に新たなアイデアを掛け合わせ、これまでにない市場に挑戦。ビジネスを発展させている。
 
一方、山本典正氏は、和歌山で67年続く平和酒造の4代目当主。伝統的な製法を守りながらも、日本酒の新たな価値を創出するべくさまざまな挑戦を続けている。  

2人に共通するのは、家業承継をチャンスに変えるイノベーション精神だ。2人の対話から、その源に迫る。

家業をベースにチャレンジする

三寺 歩(以下、三寺):もともと家業を継ぐつもりはなく、東京のIT企業で営業職に就いていました。しかし、父から会社の経営が難しくなったと聞かされ、潰すか潰さないか……という局面に立ったとき、私にはまだ既存の製品を利用してチャレンジできる余地があるように思えたのです。自分なりに全力を尽くしてみて、それでも駄目なら仕方がない。一度チャレンジしてみようと、継ぐことを決めました。

山本典正(以下、山本):私は酒蔵の息子として生まれ、将来は経営者になりたい、蔵を継ぎたいと幼いころから思っていました。そのころ、世界ではベンチャー企業がブームで、小さな会社から成り上がる経営者に憧れていました。それで、視野を広げるためにも、ベンチャー企業に就職することにしたんです。ただ、そこで働くうちに、自分にはベンチャー企業を起こすような才覚はないと気がついてしまったんですね。折しも、父や母から実家に戻ってきてほしいと頼まれたこともあり、0を1にはできないけれど、5を10にはできるかもしれないと家業を継ぐ決意をしました。

既存のリソースをどう生かすか

三寺:実は、父の会社は継がずに、新しい会社をつくろうと思っていました。ですが、ある人から「60年の歴史が何を意味するか、あなたはわかっていない。歴史のある企業と違い、ベンチャー企業が潰れかけても、銀行は一切金を貸してくれないぞ」と言われました。家業には負の遺産もありますが、受け継がれてきた歴史、技術、顧客など貴重な資産もあります。いい面と悪い面をきちんと理解し、自分が学んできたやり方で変えていくべきなのだと思います。




ミツフジが開発して販売する銀メッキ繊維「AGposs®」。ウェアラブル端末として、心拍などの生体情報を取得できる。

山本:日本酒業界は長く縮小傾向にありますので、周りの経営者と同じことをしても駄目だという危機感は、当初からもっていました。各酒蔵には、伝統と地域に根ざしたリソースがあります。それをきちんと振り返り、自分たちにしかできない新しい取り組みをしなければ、流れは変えられないと思いました。

イノベーションは組み合わせの妙

三寺:イノベーションは、既存の素材の新結合なんですよね。あるものを徹底的に分析して、組み合わせを変えていく。銀メッキ繊維「AGposs®」も、問い合わせをいただいたお客様の声からウェアラブルデバイスとしての可能性を見出し、そこにIT企業で培った知識や人脈を掛け合わせました。我々には、戦略的な仕組みは存在しません。お客様の困りごとを解決するために、コツコツと地味な仕事をしています。

山本:平和酒造は、もともと安いパック酒が売り上げの主軸となっていました。しかし価格競争が激しく、価格は下がっていく一で、新たな価値づくりをしなければ状況は変わらないと思いました。日本酒がもつ古い世界観を一新し、若者や海外の方にも受け入れられるようなモノづくりをする必要がある。そこで、社員全員で試飲会を繰り返し、出来上がったのが「紀土」のスパークリングです。これはコンクールで賞も獲得していますが、つくったのは若手の社員でした。イノベーションを起こすには、楽しみながらチャレンジできるポジティブな環境が必要なのだと思います。




シャンパンボトルのようなデザインが目を引く「紀土」のスパークリング。華やかな甘味とフレッシュな酸味が口中に広がる、爽快な味わい。

三寺
:厳しいと言われる業界は、周りのメンタリティが後ろ向きですよね。どうせ駄目だという空気のなかで、新たなモノを生み出すのは本当に大変です。でも、すでに誰かがやっていることをなぞっても意味がない。イノベーション精神でいくのなら、この環境でしかできないことをやらないと勝算がないと思うんです。

山本:家業は多くの場合、地域の文化と密着しています。それを新しい世代が承継することは、社会的にも価値があることなのではないでしょうか。

三寺:そうですね。家業は背景や状況がそれぞれ違いますので、こうしたら正解という答えはありません。いろいろな人から話を聞いて、自分なりに答えを見つけるしかないのだと思います。我々も刺激し合いながら、頑張りたいですね。


山本典正◎1978年和歌山生まれ。京都大学経済学部卒。東京のベンチャー企業を経て2004年、実家の平和酒造に入社し、4代目当主に就任。05年「鶴梅」、08年に「紀土」を発売し、高い評価を受ける。16年には「平和クラフト」を起ち上げ、クラフトビール業界にも参入。「若手の夜明け」「AOYAMA SAKE FLEA」など主催イベントも多数。

三寺歩◎1977年京都生まれ。立命館大学経営学部卒。在学中の2001年に海外在住者向けネット書店「ねっとほんや」を起ち上げる。同年、松下電器産業(現パナソニック)に入社。その後シスコシステムズ、SAPジャパンなどの営業職を経て、14年に実家の三ツ冨士繊維工業に入社、代表取締役社長に就任。15年に「ミツフジ」に社名を変更。

「エヌエヌ生命保険は家業イノベーターをサポートします」


新たな可能性に挑戦する、若き経営者たちが集結した「家業イノベーション・ラボ」。

エヌエヌ生命保険は、ヨーロッパと日本の18カ国に拠点をもつ大手保険会社・NNグループの日本法人。日本では、中小企業とその経営者が財務や財産の面で安定した将来性が得られるよう、30年以上にわたり法人向けの事業保険とサービスの開発を行っている。現在、中小企業のサポーターとして、全国約5000店のプロフェッショナルな代理店を通じて、事業保障、事業承継、退職の準備など、中小企業とその経営者のさまざまなニーズに応えるべく挑戦を続けている。フォーブスとは、Small Giants Awardでのつながりをもつ。 


ユニークなプログラム内容で大いに盛り上がりを見せたオランダ研修ツアーの様子。

同社はまた、保険商品やサービスの開発に加え、家業の次世代経営者の育成を支援する活動にも力を入れており、そのひとつとして「家業イノベーション・ラボ」を展開。今年は8月から年末にかけて、主要な地域でワークショップや勉強会を開催するほか、新たな試みとして『家業×つくばのテックでつくる未来』と題するアイデアソンを「しびっくぱわー」と協同で開始する。主な活動ベースとなるのは、つくばのコワーキングスペースである「up Tsukuba」(https://up-tsukuba.com)および「Tsukuba PlaceLab」(http://tsukubaplacelab.com)だ。「フードロス解決」や「プラスチックに変わるエコな製品開発」「美容分野」「ライフサイエンス」などをテーマに掲げ、つくばにある技術を生かしながら、家業にイノベーションを起こすための新たなアイデアや取り組みを創出していく。詳細は家業イノベーション・ラボのHPを参照。

家業イノベーション・ラボ
https://kagyoinnovationlabo.com

エヌエヌ生命保険
https://www.nnlife.co.jp

Promoted by エヌエヌ生命保険 / text by Kaori Kawake(lefthands) / edit by Shigekazu Ohno (lefthands) / photographs by Takao Ohta

あなたにおすすめ

合わせて読みたい