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2018.12.14

フレンチテックという革新のエスプリと日本の共通する価値観

Mark Bivens(マーク・ビヴェンズ)|Truffle Capital / Board Partner フランスのテック業界やスタートアップの情勢を最もよく知る人物の一人


フランスに生まれた熱き隆盛。それは、新しいモードブランドでもなければ、気鋭のキュイジーヌでもない。とかくファッションなど文化的側面が最初にイメージされるこの国は、現在、シリコンバレーをしのぐテクノロジーとスタートアップの国として、世界の注目を集めている。



1990年代にシリコンバレーで数社を起業した後、フランスで15年に渡りベンチャーキャピタリストとして活躍し、3年前から日本を拠点とするマーク・ビベンズは言う。

「シリコンバレーの興隆を見て育ったフランスの若い世代が今、大きな波を起こしています。その象徴のひとつで、私自身も間接的に関わった〈ステーションF〉は、2017年に一大インキュベーション施設として誕生し、現在では約1,000のスタートアップが入居、5,000人が働いており、フランスのみならず30カ国が参加し、フランス以外の企業のうち、35%がアジア諸国、主に中国、インド、東南アジアの国々です。現時点で日本のスタートアップは少ないのですが、国内外におけるテック系スタートアップの一大拠点となっています」

いま、フランスで盛り上がるテクノロジー先進国としてのうねりは、ステーションFを始めとした施設にとどまらず、国全体の胎動となっているという。

「私の知人である日本人の起業家が、フランスに拠点を移しました。フランスの市場は日本ほど大きくないので、その話を聞いた時は驚きましたが、今となっては彼の決断は正しかったと思います。というのも、まずフランスは人材不足ではないこと、そして政府は海外からの起業家を誘致するため、ビザの優遇やオフィスの提供、ローカルな起業家にアクセスできるようにするなど、支援体制を強化しており、本社をフランスに移転すると獲得しやすくなる助成金なども用意されています」



政府がイノベーションにつながるスタートアップを積極的に支援するフランス。今やヨーロッパ随一のスタートアップ成長国となり、人も集まる。その強みは、ハード面や制度面でスタートアップを受け入れる体制が整うことだけではない。

「フランスはAIの研究分野においては中国やアメリカに次いでトップ3に入るレベルです。そのためスタートアップが求める優秀なAI人材が確保しやすい。実際、FacebookやGoogleを始めとしたトップテクノロジーカンパニーでは、AI担当部門のトップがフランス人であることが非常に多いのです」

その秘密は、フランスの教育にあるそうだ。優秀な若者がテクノロジーの道へ導かれ、より専門性を追求できるようになっていることが背景となる。

「現在、ディープランニングの技術的なフレームワーク(学習の基盤となる根本原理)が世界に8つあると言われていますが、そのうちの5つがアメリカ、2つがフランス、1つがカナダのもの。フランスのような小さな国が2つもクリティカルなフレームワーク (Sci-Kit and Garros)を持っているのは、非常に興味深いですね。政府もこうした流れを後押ししており、特に昨今、自動車に関しては、3年前から「Nouvelle France Industrielle」(フランスの新産業)構想という政策を取り、自動車関連のテクノロジーを進化させています。フランスにはトップクラスの研究機関がいくつかありますが、そのうちの6つは自動車の先進技術に関するAIの研究所なんですよ」

日本では、自動車が豊かさや価値観になり得るが、フランス人にとって自動車は移動手段であり、デザインを重視すると語るマーク。お国柄だ。だからこそフランス人は使いやすいインターフェイスに対する感度が高く、AIの知見の集積が先進技術の形で車にも生かされているのが今のフランスの“勢い”でもある。

合理的な移動手段のためか、アメリカなどと比べると国産車への強いこだわりはそれほど強くないそうだが、そんなフランス人にとって唯一、特別な存在と言える車があるという。

「例えばDSです。歴代のフランス大統領公用車として使われてきた車です。第18代フランス大統領のシャルル・ド・ゴールの公用車もDSでした。彼はパリで2度、暗殺未遂に合っていますが、公用車の操作性の良さから危機を免れたと言われています」


DS 7 CROSSBACK(写真は欧州仕様車)|DSは今もフランス人の誇りと言える存在だ

" Similar Phenomenon "
フランスの変化と日本との共通点。同国への一義的な印象はもう古い。

フランスの国民性は個人主義で、保守的な傾向が強いとよく言われる。現在のようにテック系スタートアップという「殻を破る状態」事象には、いくつかの段階と要因があった。

「フランスと日本の教育には共通点があります。それは、失敗を極力避け、リスクを取らないようにすること。フランスでも以前はトップレベルの大学に入学したら大企業に就職することを家族や社会から求められていました。しかし、徐々にその空気が変化し始めました。2001年頃でしょうか。トップレベルの大学を卒業した若者がスタートアップに入ったり、起業するようになってきたのです」

2000年近辺といえば、くしくも日本では渋谷のビットバレーに代表される変化のうねりが生まれた頃だ。時期の酷似に不思議な縁を感じる。

そしてフランスの若者の意識の変化には4つの要因があるとマークは示す。

1つ目は、フランスの若い世代がシリコンバレーの若い世代の成功を目の当たりにしたこと。

2つ目は外的要因。フランスでは伝統的に大企業は終身雇用を期待されていたが、景気後退で大企業も終身雇用を保証できなくなった。大企業でもリスクがないわけではない、と国民が気づいたのだ。

3つ目は、この時期にベンチャーキャピタルが多く作られたこと。浮かんだアイデアを形にするプロジェクトに対し、資金提供を受けるチャンスができた。これには、マークを含めた外資のベンチャーキャピタルの存在も大きいという。

4つ目は、フランス政府が上述の2000年頃からスタートアップはフランス経済に貢献すると認識し、イノベーションへの投資を積極的に行うようになったこと。主に新しいベンチャーキャピタルファンドへの投資です。これは、政府が「失敗すること」を認め「リスクを取ること」を奨励したことでもあるとマークは語る。

こうした流れを経た今、フランスは今やシリコンバレーに並ぶスタートアップの国へと変化したのだ。

「実は日本に注目しています。もともとフランスのスタートアップは国内市場に焦点を当ててきましたが、その市場は決して大きくありません。そこでまずヨーロッパに目を向け、次にアメリカのシリコンバレーを目指しました。しかし、競争が激しくリスクも高いので、次に中国に目を向けましたが、その参入障壁はあまりにも高かったのです」

そして、フランスの企業は静かに日本に参入してきているという。

「フランスと日本は価値観が似ています。ビジネスのアプローチも共通しており、リスクに対する意識も似ています。また、今の日本の状況は15年前のフランスと似ています。4年ほど前、私が家族と東京に来ようと思ったのは、日本とやりとりする中でスタートアップのエコシステムに変化が起こっていると感じたからです。日本は今、重要な転換期を迎えようとしています」

スタートアップ熱が盛り上がるフランスと、その過程と同じ空気を醸し出す日本。マークが似ていると語るこの二つの国では、互いに刺激し合う関係となり、さまざまな変革の波が起こっていくことだろう。



浸潤しあう二国の価値観

斬新なデザインと先進の技術。よく言われる表現の2つの要素を、高い次元で実現するのは難しい。プジョー、シトロエン、そしてDSが「ひと味ちがう」と感じるのはなぜか。


ACCに車線を保持するシステムを統合するなど世界最先端のADASを備えるのもフランスらしい点だ。(画像はDS 7 CROSSBCK 欧州仕様)

私たちはマーク・ビヴェンズの言葉からフランスで起きている熱いうねりのような感覚を覚えた。伝統に縛られることを良しとし、孤高という表現が合うフランスという国が、自ら前へ踏み出し変革をリードする。車のテクノロジーは日進月歩であり、AIを始めとした先進技術を変えていく期待を生む。それが今、具現化されてきている。

彼はこうも言っていた。「日本の消費者は洗練されているとフランス人は考えている。誰でも手に入るものは欲しくない。これは車でも同様です」と。日本とフランスの価値観は浸潤し合うのだ。

Promoted by DS オートモビル(プジョー・シトロエン・ジャポン) text by Kei Yoshida photograph by Setsuko Nishikawa edit by BrandVoice

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