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2018.06.27 15:00

FUNDBOOKが描く、健全なM&Aが行われる未来

畑野幸治 FUNDBOOK 代表取締役CEO

畑野幸治 FUNDBOOK 代表取締役CEO

廃業率の増加。日本が抱える経済連鎖の断絶という問題に、平等で可視化されたM&Aという手法で、解決の糸口を切り拓こうとする社会起業家がいる。FUNDBOOK(ファンドブック)の畑野幸治が見つめるM&Aプラットフォームの先にある未来とは。


M&Aのプラットフォーム事業を手がけるFUNDBOOK 。同社は「経営者や従業員が幸せになれるM&A」を企業理念に掲げ、2017年8月の創業以来、急速な成長を遂げている。創業当時5名だった社員がわずか1年余りで120名を超える規模に拡大。18年7月2日にはM&Aプラットフォームの正式リリースを控えている。

同社が見据える、M&Aの理想形とはどのようなものか。また、その理想を実現するうえでM&Aプラットフォーム事業がどのような役割を果たすのか。同社の代表取締役CEOであり、『M&Aという選択』(プレジデント社)の著者でもある畑野幸治に聞いた。

「日本はいま、かつてない規模のリタイアラッシュを迎えようとしています。少子高齢化を背景に経営環境が悪化するなか、直近の15年間で企業数は100万社以上も減少。さらに、経営者は年々、高齢化しています。60歳以上の経営者が運営する中小企業は約120万社あるとされ、これらの企業が次々と経営者引退の岐路に直面する。向こう10年で、中小企業の9割以上が廃業するともいわれています」

廃業となれば、経営者はもちろん、従業員やその家族にも影響が及ぶ。

廃業とは悪手であることが多い

「若い方であれば、仮に勤務先が廃業しても、すぐ次の職場が見つかるかもしれません。でも、50歳を超えていたらどうでしょうか。長年勤めてくれた従業員を路頭に迷わせることになりかねない。安易に廃業を選んだばかりに銀行の借金だけ残って、自己破産に追い込まれることも珍しくない。廃業ではなく、M&Aを選べば、経営者も従業員も救われたのに、というケースは決して少なくないんです」

実は畑野自身も、廃業によって生活が激変した経験がある。14歳のとき、父親の勤務先だった山一証券が自主廃業。裕福な暮らしは一転し、畑野家は逆境に追い込まれた。苦労が絶えず、疲労困憊する両親を何とか助けたい。その切実な思いが、畑野の起業家としての原点となった。

畑野は、大学時代にインターネット広告事業会社を創業し、現在に至るまで2度のスタートアップを成功させ、2度にわたる株式譲渡を実行。FUNDBOOKによるM&Aプラットフォーム事業は、実に3度目のスタートアップへの挑戦となる。

「M&Aによって事業を成長させたいと考えている企業はおよそ10万社あるといわれます。そのうち、1社にも必要とされないというのであれば、その会社は廃業すべきかもしれません。でも、必要とされる可能性があるのなら、従業員の方々やサービスをしっかり引き継いでくれる企業を一緒に探したい。関わる人すべての“Happy Life”を実現したい。それが、僕らのM&Aプラットフォーム事業の根幹にある理念です」

このM&Aプラットフォームサービスでは、買収を検討している企業(譲受企業)が、売却を検討している企業(譲渡企業)の状態や資産状況、価値などの案件情報(ノンネーム)をオンライン上で自由に閲覧し、検討できる。

「従来のM&Aでは、マッチングがアドバイザー個人の裁量に委ねられ、取引実績のある企業が優先されるなどの不公平が、ごく当たり前に行われてきました。かといって、アドバイザーを一切介さず、直接取引すれば、公平性が担保できるかというと、そうではありません。

多くの場合、譲受企業のほうが、譲渡企業よりもM&Aに関するリテラシーが高い。アドバイザーなしで取引に臨むと専門知識が不足しているがゆえに、いいように安く買いたたかれて泣き寝入りするといったリスクもはらんでいました。こうした不公平を解消し、譲受企業と譲渡企業いずれにとっても平等な選択肢を提供したいと考えています」

従来のノンネームは、必要最小限の情報のみというのが一般的だが、FUNDBOOKは案件を担当するアドバイザーのコメント掲載にも力を入れる。どのような文化をもつ企業なのかを知ることが、より互いのニーズに合ったM&A実現に役立つと考えるためだ。

「結局、M&Aはすべてオートマチックに行うのは絶対的に無理なんです。僕自身がこれまでに2度、株式譲渡を経験しているのでわかるのですが、最終契約に至るまで売り手と買い手はずっと交渉し続けなくてはいけない。

検討フェーズではオンラインで自由に情報を集め、その後の交渉フェーズから最終契約フェーズにかけては、アドバイザーを有効活用し、フェアな交渉を実現する。オンラインとオフラインの“いいところ”を融合したのが、今回のM&Aプラットフォームです」



平等で可視化されたM&Aがもたらすもの

さらに、同社はプラットフォーム上で「PMIの可視化」を実現するプログラムも開発中だという。PMIとは「Post Merger Integration」の略で、M&A成立後の統合プロセスを意味する。

「これまで日本では、M&Aというと、“ハゲタカファンド”による買収のような、敵対的買収の事例ばかりがクローズアップされてきました。でも、M&Aにこうしたネガティブなイメージをもち続けているのは、実は日本ぐらいなんです。

海外では、ベンチャー企業を設立し、事業が成功したら売却し、次の事業を立ち上げる経営者はシリアルアントレプレナーと呼ばれ、尊敬される。では、どうすれば日本でも、新たなM&A観が定着するのか。その鍵を握るのが、PMIの可視化だと僕は考えています」

畑野は「PMIの可視化が譲受企業の評価に直結する」という。

M&Aが成立したあと、その企業の雇用維持率はどうなったのか、従業員の平均所得や満足度はどう変化したのかを数値で示す。例えば、もともといた従業員をすべて解雇した場合、目先の利益は上がったとしても、PMIの数値は確実に悪化する。

「引き受けた企業の従業員を不幸に陥れるような企業は、そもそもM&Aをする権利はないというのが正直な気持ち。ぜひ積極的にマーケットからキックアウトしていきたい。

M&Aによって本当の意味でのシナジー効果が生まれたのか。企業の業績を伸ばすことができたのか。PMIをどんどん可視化していけば、必然的に目先の利益を追うだけのM&Aは減り、より健全な買収・売却が実現しやすくなる。実現すれば、M&Aを取り巻く環境は大きく変わるはずです」

Happy Lifeというキーワード

畑野は、M&Aプラットフォームを単なるビジネススキームではなく、社会問題を解決する足がかりとしてとらえている。

「M&Aを架け橋として、次世代に貢献していきたい。そう考えるようになったのは4年前、娘が生まれたことがきっかけです。親として自分ができることは何かと考えたとき、真っ先に思いついたのが、“彼女が生きていく未来をよりよいものにすること”だったんです。

僕らが目指すのは、金融の総合コングロマリット企業をつくること。いずれ時期が来たら、海外の金融機関を買収し、銀行機能をもつことでより直接的に、頑張っている企業を応援できる体制をつくりたい。また、保険や不動産購入も含めた、すべての金融商品に関わる領域をこのプラットフォームで網羅したいとも考えています」

ひたむきに家族の幸せを願い続け、ビジネスを成功に導いてきた男の挑戦は始まったばかりだ。


はたの・こうじ◎東京都生まれ。大学在学中にMicro Solutionsを創業し、インターネット広告事業を運営。2012年に創業したネット型リユース事業『スピード買取.jp』を運営するBuySell Technologiesでは、5人での創業から5年で年商100億円、営業利益10億円、総従業員数600人にまで成長させ、17年9月に全株式を譲渡。同年3月より同社の新事業としてM&Aプラットフォーム事業を創業し、8月にはスピンアウトにより設立したFUNDBOOKの代表取締役CEOに就任。

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Promoted by FUNDBOOK 文=島影真奈美 写真=三木匡宏 編集=明石康正

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