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取材陣を圧倒した“YAGURA” 人が集まり、遠くを見通す櫓(やぐら)はAIT発のイノベーションの象徴だ

2018年1月、アクセンチュアは、顧客同士の新たな出会いとイノベーション創出を促進する拠点としてアクセンチュア・イノベーション・ハブ東京(AIT)を開設した。執行役員 デジタルコンサルティング本部統括本部長を務める立花良範氏が語る、AIT開設の狙いと手応え、そして今まさにこの空間で起こりつつあるイノベーションの萌芽とは?フォーブスジャパン副編集長の谷本有香が、刻々と変化を遂げるAITの「今」を尋ねた。



谷本有香(以下、谷本):今年の1月に開設されたアクセンチュア・イノベーション・ハブ東京(以下、AIT)。その立ち上げには、どのような背景があったのでしょうか?

立花良範(以下、立花):私どもはコンサルティング会社ですから、プロジェクトチームを組み、お客様と机を並べて社員の一員であるかのように苦労をともにし、泥にまみれて成果を出す、ということをずっとやってきました。しかし、昨今では従来からある効率化や業務変革のご依頼のみならず、新しい事業や商品、サービスを生み出したい、というお題をお客様からいただくことが多くなってきています。コンサルティング企業がもともと得意とするのは、既存の事業や業務の状態を数値化、定量化した上で物事をロジカルに構造化し、コストやスピード、効率を改善していくことですが、新たな事業やサービスなどを生み出す上で必要なことは、「従来業務の改善」ではなく、「今はまだ存在しない未来をどのようにつくっていくか」ということです。それを成し遂げるためには、お客様先で限られたプロジェクトメンバーが目の前の課題解決に取り組むだけでは決して十分な効果は見込めません。


立花良範 執行役員 デジタルコンサルティング本部 統括本部長 アクセンチュア入社後、通信・ハイテク業界を担当、2015年よりデジタルコンサルティング本部統括本部長。

そこで、お客様がデータサイエンティストやデザイナーなど、アクセンチュアが抱える異なる知見を備えた持ったエキスパートやスタートアップなどとコラボレーションし、融合できる空間を日本に用意することが必要になってきたのです。そうした新しい取り組みを加速することがAITを設立した大きな理由です。

谷本:実際にAITへ訪れてみると、内装や空間づくりにも工夫が感じられます。あえて、この麻布十番という土地に施設をつくったのには、何か意図があったのでしょうか?

立花:渋谷といえばスタートアップ、というように東京のエリアにはそれぞれイメージに根ざした「色」があると思うのですが、ここ麻布十番は、もともと町屋と呼ばれる人が住まう地域、あるいは麻布十番祭りのようにいろいろな人が交錯する空間でした。アクセンチュアとお客様はもちろん、スタートアップや研究者、政府、あるいはお客様同士が交わる場所として、この麻布十番という土地は合致しているように思えたのです。

谷本:実際にAITの施設内を見学していると、まさに人が交錯し、出会う空間としての工夫が随所に見受けられますね。

立花:そうですね。AITはビルの8階と9階の2フロアにわたって展開されているのですが、各フロアには明確な棲み分けがあります。8階は英語でいうところの「hub」、日本語でいうと「界隈」をイメージしています。ここには、可動式のカートが何台も用意されており、お客様の業務シナリオに応じて屋台のように様々なデモをお見せすることができる空間となっています。この「界隈」は、麻布十番祭りを参考にしており、人が行き交い、すれ違い、不意に出会う空間として機能しています。

そして9階のコンセプトは英語でいうところの「studio」、日本語でいうと「町屋」です。このフロアには、お客様専用の部屋を用意しており、きちんとセキュリティも担保しています。8階でインスピレーションとともに新規事業や新規サービスのヒントを得ていただき、9階に「居住しながらアイデアを具現し、新しいビジネスを立ち上げていただく」というのが、AITの主な役割です。

アクセンチュアが提案する、イノベーション創出の「公式」

谷本:AITの立ち上げから半年が経過しましたが、訪問する方々の反応や手応えはいかがですか?

立花:開設から四ヶ月の時点でお客様の訪問数がのべ約400件となるなど、業界業種を問わず、非常に多数の方々にお越しいただいておりますが、現時点では「とにかく覗いて何か刺激を受けたい」というモチベーションで訪問してくださる方が多い印象です。お客様からは、「アクセンチュア、変わりましたね」という声をいただくことも少なくありませんね。


アクセンチュア・イノベーション・ハブ東京の概要
上述の通り、AITの8階と9階を使い、インタラクティブに対応できる仕組みを備える



9Fの役割|顧客体験のデザインとその実現のために、クライアント企業も常駐できる環境を整える


8階の役割|界隈(KAIWAI)と称する人が集まる場所の象徴。さまざまな実例を見ながら、試行錯誤を試みることが可能なフロアだ。



谷本:AITにいらっしゃる方々の中には、明確な課題や「お題」を携えて来る方もいるのではないでしょうか。AIやテクノロジーを活用した分析事業の効率化など、御社の過去の実績を拝見すると、そのような既存のサービスを求めていらっしゃる方も少なくないのではと思うのですが、いかがですか?

立花:そうですね。今おっしゃっていただいたように、需要予測のアナリティクスサービスをはじめとして、弊社には既存事業を最適化・合理化するための「型」のようなものもふんだんにございますし、お客様のご要望に応じてこれらのサービスももちろん提供いたします。

しかし、イノベーションを起こすためには、この「既存事業の最適化」と「新規事業の創出」を同時にやっていかなければうまくいきません。当たり前ですが、既存の事業で手一杯の企業が、新規事業を立ち上げようとしても、人的にも金銭的にもそこにリソースを割くだけの余裕はどこにもありません。そのため、まずは既存事業を立て直し、そこから生まれた余剰のリソースを新規事業に回す、ということが必要になるわけです。

谷本:AITを訪れたお客様が「変わりましたね」とおっしゃるのも、アクセンチュアがこれまで得意としていた「既存事業合理化のノウハウ」に加えて、新規事業を創出するためのカタリスト(媒介)としての一面をこの空間で新たに提示したからなのかもしれませんね。

立花:おっしゃるとおりだと思います。我々はコンサルティング会社ということもあり、ロジカルシンキングの権化のような企業とも言えるかもしれませんが、その一方でこの3年間で社員数を倍に増やし、異能の人材を組織にうまく融合させることでコンサルティングにデザインシンキングを組み込んでいっています。



谷本:既存事業の「最適化」と、新規事業の「創出」の両輪を同時に担えるという点は、アクセンチュアの強みでもあると思いますが、「イノベーション」というキーワードが叫ばれて久しい昨今、他社との最大の差別化要素はどのような部分にあると考えていらっしゃいますか?

立花:やはり、これまでに蓄積してきたあらゆる業界に関する専門的な知見が最大の差別化につながっているのではと思います。我々は、イノベーションとは「付加価値をもたらす新しい物事の進め方」(a new way of doing things that adds value)であると考えています。そのために我々が大切にしているのは、たとえば、誰も考えたことのない斬新なサービスやアイデアを生み出すことよりもむしろ、「ある業界では当たり前に実践されている成功例や手法をまったく異なる業界に当てはめてみる」ということです。AITを触媒にして、異業種が出会い、テクノロジーの力を活用しながらコラボレーションし、そこにデジタル業界の異能人材と業界に精通した知見を持ったコンサルタントの力が加わり、火花を散らす……そのような方法でイノベーションを生み出すことを非常に重視しています。

「ものづくり」から「ことづくり」の時代へ

谷本:今後はAITを通じて、日本から世界へと進出していく新規事業も生まれることが期待されますが、日本企業ならではの強みや独自性はどのような点にあるのでしょうか。

立花:今、世界のマーケットで起こり始めているのは、「ものづくりからことづくり」への転換です。日本の産業は、ものづくりから立脚してきたという歴史もありますから、これは日本経済にとって死命を決する大きな変化とも考えられるでしょう。この波をうまく乗りこなし、日本企業がこれまでに培ってきた高い技術力と、日本人に本来備わっている「おもてなし」や「細やかな配慮」の精神がかけ合わされば、日本の経済がもう一度輝くきっかけをつくれるのではないでしょうか。


共創の拠点となるAITにかかる期待は大きい

アクセンチュアはこうした大きな変化に対応すべく、デジタルコンサルティング本部の中に「インダストリーX.0」という組織を立ち上げました。このチームでは、これまで日本のものづくりを支えてきたロボティクスカンパニーやAIスタートアップと提携し、彼らとともにエコシステムをつくることで日本の匠の技を結集し、高品質なものづくりをするためのプラットフォームとして世界へ輸出していきたいと考えています。

谷本:どこまでも「顧客目線」を突き詰めるアクセンチュアが顧客の声(要望)をきっかけとして立ち上げたAIT。そのあり方は、「おもてなし」や「細やかな配慮」を強みとする日本企業の精神にもどこか重なりますね。

立花:ありがとうございます。現時点でも手応えは非常に感じているのですが、今後は個々のお客様のニーズや課題に応じたワークショップの展開などを通じ、お客様にとって何がベストプラクティスなのかをとことん突き詰めつつ、社内外から最適なプレーヤーをAITに結集していく予定です。アクセンチュアがイノベーションのカタリストとしての役割を果たし、この場所がイノベーションのカタパルト、いわば、”発信”拠点になることを意識しながら、“イノベーション as a Service”をコンセプトに、コラボレーションを加速してきたいと考えています。

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Promoted by accenture text by Takuya Kikuchi | photographs by Jyunji Hirose 衣装協力(谷本有香):アジーロ青山店

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