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2018.06.06 11:00

ブロックチェーン事業で本当に必要なこと

溝部拓郎 ブロックチェーンエンジニア × 平井政光 ブリオンジャパンCEO

溝部拓郎 ブロックチェーンエンジニア × 平井政光 ブリオンジャパンCEO

ゴールド(金現物)の所有権情報をブロックチェーンに記載することで、その流動性向上を試みる「ブリオン・トークン」。ローンチを眼前に控え、これを開発する英国法人「ブリオン・トークン・ジャパン」をグループ会社として設立したブリオンジャパンの平井政光CEOは今回、溝部拓郎氏と対談した。

JPモルガン証券のテクノロジー部門で活躍し、その後、幾多のブロックチェーン事業を創出してきた、そんな新進気鋭のエンジニアに訊く、ブロックチェーン・ビジネスを成長させるために、本当に必要なこと。


平井政光(以下、平井):溝部さんは、エンジニアとしてJPモルガン証券で会計システムなどを開発し、退職後に仮想通貨取引所を創業しました。現在はゲーム開発会社やSSP(広告配信システム)会社の創業者兼CEOとして、ブロックチェーン技術を応用したコンサルティングを行っています。昨今、ブロックチェーンが認知度を高め、数多くの関連プロダクトが生まれていますが、溝部さんはこれまでの経験から、ブロックチェーンはいったい何を生み出し、そして世界をどう変えたと考えていますか。

溝部拓郎(以下、溝部):ブロックチェーン技術を用いて開発された仮想通貨の変遷を俯瞰すると、まず第1世代のビットコインは、P2P(端末間通信技術)を活用し、ブロックチェーンが非中央集権的な通貨として成立することを証明しました。次に第2世代のイーサリアムは、第三者の承認なしに契約を実行するトラストレス(信用不要)なスマートコントラクトを実現し、ブロックチェーンを飛躍的に進化させました。



ただ、この2つが世界を変えたイノベーションなのかと問われると、個人的にはノーです。ビットコインは通貨となりうることを証明しましたが、実際に日常生活で使用するには制限が多すぎた。イーサリアムもそのプラットフォームが必要とされる現場に浸透しているとは言えない。両者の使われ方は基本的には投機的な取引であり、人々の社会生活を大きく変えたとは思えません。

平井:なるほど。ではブロックチェーンのインパクトはどこにあると。

溝部:ICOが誕生したことではないでしょうか。ICOは従来の資金調達のように銀行や証券会社が介在することなく、事業者が投資家から直接、資金を調達できるシステムです。個人レベルで国家や金融システムに比肩できる環境をつくり出すことができる、まさに破壊的なイノベーションです。

平井:ICO市場を見ると、17年には4000億円近くの資金が流通している。だが日本やアメリカ、中国の政府当局は警戒し、規制を強化しています。

溝部:もちろん、現実的にはICOで資金調達した通貨が、前述したように投機的な流動性しか持ちえなければ、結局はマネーゲームの対象とみなされ、デリバティブのように強固に規制されてしまうでしょう。

優れた技術も使われなければ意味がない

平井:ICOをいかに既存のインフラにつなげていくか。そこでは、業務提携を通じたエコシステムの構築を戦略的に描き、十分にコストを割いていくことがポイントになると思っています。

溝部:同感です。シリコンバレーのスタートアップは従来、とにかく技術優位性を確立することを重要視してきましたが、例えば決済サービスのペイパルを創業した投資家のピーター・ティールは、マーケティングにしっかりと資金を割くことを推奨しています。最先端技術であるブロックチェーンを活用して事業を成功させるためには、実は既存のビジネスモデルと同様に、顧客を創造する“マーケティング”の実践が必要不可欠なのです。

平井:優れた技術も使われなければ意味がない。それを生かす市場環境を能動的につくり出すための取り組みが計画されるべきで、結局のところ、ブロックチェーンをどのように社会で利用していくかというビジョンを描くことが求められると思います。



溝部:確かにその通りですね。そのあたりは、ブロックチェーンを用いたプロジェクトをグローバルに展開している平井さんが常に実感されていることではないでしょうか。私は、金現物に交換可能な「ブリオン・トークン」は、すばらしいプロジェクトだと思っています。平井さんは、このトークンをどのようにして社会で利用される存在にしていく考えなのですか。

平井:そうですね、私たちの英国法人で開発したブリオン・トークンでは、同じく英国法人で開発中の「ブリオンペイ」という決済システムを通じて、利用者の決済や送金の利便性を高めることができるような存在を目指しています。

溝部:とはいえ、決済手段については、既存の通貨やクレジットカードがあれば十分だと思えるのですが。

平井:確かに、日常生活で発生する少額決済のケースでは、あまりメリットを感じないでしょう。一方で、貿易や不動産売買など高額決済、特にグローバル企業の決済業務では既存の手段と比べ優位性があり、そこに需要があると考えています。

溝部:為替の変動が大きく左右する国際決済では、金現物の安定した価格は強みとなる。なるほど、魅力的なブロックチェーンですね。

平井:ありがとうございます。ブリオン・トークンで現在の投機に偏りがちな世界のブロックチェーン事情に一石を投じる事ができればと考えています。


<プロフィール>
ひらい・まさみつ◎北海道生まれ。法政大学卒業後、船井総合研究所で金融商品企画コンサルティングに従事した後、マレーシア資本の投資助言会社CEO兼日本株運用責任者として勤務。ブリオンジャパンのマーケティング担当副社長を経て、現職。
みぞべ・たくろう◎1988年生まれ。2012年東京工業大学卒業。同年JPモルガン証券入社。エンジニアとしてテクノロジー部門で会計システムや特権アカウントのセキュリティシステムを開発。退職後、仮想通貨取引所を創業。現在、ゲーム開発会社とSSP(広告配信システム)会社の創業者兼CEO。ブロックチェーン技術に関するコンサルティングや技術支援を行う。


ブリオンジャパン https://bullionjapan.jp

Promoted by ブリオンジャパン 文=北島英之 写真=後藤秀二 編集=高城昭夫 衣装協力=メイン画像右(平井氏)dunhill メイン画像左(溝部氏)HANABISHI

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