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2017.11.30

働き方改革は「ゆとり労働」と同義ではない

11月7日に開催された、リンクアンドモチベーションが運営するコミュニティ「HRCommitte」のイベント

2016年9月、内閣官房に「働き方改革実現推進室」が設置された。以降、政府主導で「働き方改革」が推進され、多くの企業が労働時間の見直しやテレワークの試験的な導入などを始めている。

長時間労働の是正、ワークライフバランスの尊重といった言葉が叫ばれる中、働く人、そして企業はどうあるべきなのか――。

現状に対し、「働き方改革は『ゆとり労働』と同義ではない」と警鐘を鳴らすのが、経済産業省参事官の伊藤禎則。伊藤は「働き方改革実行計画」の策定にも携わった、経産省の人材政策の責任者だ。

2017年11月7日、リンクアンドモチベーションが運営するコミュニティ「HRCommittee」のイベントに、慶應義塾大学大学院特任教授の岩本隆と共に登壇した。同イベントには日本のリーディングカンパニーの人事を司る人たち100名が参加した。

ここでは、伊藤と岩本がイベントで語った内容のダイジェストをお届けする。

「働き方改革」は第2フェーズに入った


経済産業省 産業人材政策室長 参事官 伊藤禎則氏

伊藤:近い将来、労働人口が減少し、高齢化が進むことを背景に、政府は「働き方改革」を推進することにしたのですが、世間の関心を集めるようになったのは、広告代理店の女性社員が亡くなった痛ましい事件がきっかけです。

それを機に、政府は長時間労働の是正に本格的に取り組むようになりました。これまで日本の残業規制は、基本的には労使が合意をしていれば青天井でした。

しかし、2019年度以降に施行が予定されている労働基準法の改正によって、残業時間は月45時間、年360時間を原則としつつ、上限を年720時間に設定。どれだけ繁忙期であっても、単月100時間未満になります。

こうした動きはすごく大切で実現させる必要がありますが、単純に労働時間を短くするだけでは良くない、と思っています。かつて学習量を削減したことから“ゆとり教育”と揶揄されたように、単に労働時間を短くするだけでは「ゆとり労働」に繋がってしまいかねない。

数年後、「ゆとり労働の影響によって、日本の経済はとどめを刺された」と言われてしまっては元も子もありません。では、労働時間の適正化以外に何をすべきなのか。企業は社員のモチベーションやエンゲージメントを高め、生産性を上げることを考えるべきでしょう。

これこそが、今後の働き方を考えるうえで非常に大切であり、そして「働き方改革」を第2フェーズへと移行させるわけです。

社員のモチベーションやエンゲージメントを高めるために必要なことは、私は3つあると思っています。まず、1つめは、労働時間や在籍年数で評価するのではなく、成果とスキルによって社員を評価すること。「同一労働同一賃金」という話もありますが、これは何をもって「同一労働」であるかどうかを定義しなければならないので、全体の大きな流れとしては間違いなく、職務内容を明確化し、成果とスキルで評価する動きになっていくはずです。

2つめは、社員の「多様な働き方」に正面から向き合うこと。働き方に対するニーズや価値観が大きく変化しているいま、兼業やテレワークなど多様な働き方がどんどん増えています。これから先、長時間労働や残業を当たり前とした働き方はできなくなっていくわけです。だからこそ、企業はこの現実に正面から向き合い、多様な働き方を認めてあげることが大事になっていきます。

そして最後になりますが、3つめは、一人ひとりが自分に合ったキャリアをどうやって築いていくかを考えることです。2016年に出版された『LIFE SHIFT(ライフシフト)』の著者であるリンダ・グラットンは、2007年以降に産まれた子どもの50%以上が107歳まで生きると言っています。

そんな「人生100年時代」において、私たちは、一つひとつ駒を進めてゴールを目指していく「すごろく」的なやり方ではなく、いろんな場所に出かけていき、自らの「持ち札」を増やしていく、「ポケモンGO」的なやり方でキャリアを形成していくべきだと考えています。

人生100年時代になると、75歳や80歳まで働くのは当たり前となり、働く人の長さよりも企業の寿命のほうが短くなっていく。社員は今の会社で勤め上げることを前提にするのではなく、持ち札を増やし、あらゆる選択ができるように準備しておく。企業はそれを念頭に置いて人材投資を行っていく必要があるでしょう。

いまの日本にとって、最も希少な財産は「お金」ではなく「人材」。その人材を最大限活かすためには、テクノロジーの活用も重要です。ここ数年、ビッグデータやAI(人工知能)があらゆる領域に変化をもたらしている。それは人事領域も例外ではありません。

「HRテック」という言葉が昨今盛り上がっているように、個人的にビッグデータやAIというのは、本来、人事領域とすごく親和性が高い。人事は基本的に「個別最適」でなければならないので、ビッグデータやAIを活用して仕事の内容をパーソナライズできたら、良いと思うんです。

もちろん「勘」と「経験」も重要ですが、それだけではないテクノロジーの活用が、日本の人事、ひいては日本の働き方に大きな変化をもたらすのではないか、と私は思っています。

テクノロジーを“活かせる”戦略人事が必要に


慶應義塾大学大学院特任教授 岩本隆

岩本:先ほど伊藤さんが「HRテック」と仰っていましたが、昨今、「クロステック」という言葉が生まれ、さまざまな領域にテクノロジーが掛け合わされています。その中で、HRテックは、「人事にまつわる、あらゆるものをデータ化、分析、そしてアウトプットし、経営に生かすこと」だと私は考えています。

「HRテック」自体、実は20年前くらいからある言葉なんです。当時は数値やテキストなどのデータがほとんどを占めていましたが、テクノロジーの進化によって、ここ数年で音声、画像、映像、そして行動データなど、より多様なデータを扱えるようになりました。

また、ノートパソコンでビッグデータ分析ができてしまうくらい、分析が簡単になっている。インターネット上に統計分析や機械学習のプログラムが無料で転がっているので、分析手法をGoogleで検索し、必要なプログラムをダウンロードするだけで、簡単に分析が終わります。こうしたテクノロジーを活用して、更なる付加価値を出せる経営者や人事担当の存在が、これからますます重要になっていくはずです。

海外に目を向けると、HRテックの領域はかなり盛り上がっていて、直近では約2,500億円ものベンチャーキャピタルのお金がスタートアップに流れています。海外では人材のことをタレントと呼び、数年前に「タレントマネジメント」が盛り上がり、現在はそれぞれの人材のデータ化だけではなく、組織マネジメントが盛り上がり始めています。

それに伴って、人事部にデータサイエンティストを配置し、人材の分析に力を入れる企業も少しずつ増えてきています。

一方、日本に関してはサービスの開発はベンチャー企業がどんどん誕生していますし、大企業も積極的な動きを見せており、盛り上がっている状態です。ただ、海外と比較すると「CHRO(最高人事責任者)」が居る企業はまだまだ少ないのかな、と。

テクノロジーを活用すると人事はどう変わるのか、人事の切り口から経営を見るとどうなのか。きちんと将来を読みながら、人事を設計できる「戦略人材」の存在が今後、日本企業には必要不可欠になるでしょう。

Promoted by リンクアンドモチベーション 文=Forbes JAPAN編集部 写真=小堀将生

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