時計のケースには、内包された機械を守ることと、美しいデザインであることが求められる。両立はとても難しいのだが、その理想を求めて画期的なケースを開発したブランドがセンチュリーである。あらためて、その魅力を掘り下げたい。
ビエンヌ郊外に創業するスイスにおける時計製造の中心地のひとつであるビエンヌ郊外に、センチュリーウォッチを製作するタイムジェイムス社の本社とファクトリーがある。ここは他に類を見ない、オリジナルな製法の時計が生み出されている特別な場所でもある。
その製法とは、サファイアそのものから時計ケースを作り出すこと。単結晶サファイアの風防を多結晶サファイアのケース本体に化学的に結合させ、完全に一体化させた後、ケースに手作業で宝石のようなカットをほどこしていくのである。
こうした製法のため、センチュリーのサファイアケースはいずれも気密性が高く、ジュエリーウォッチであっても10気圧防水を実現している。輝きが美しいだけでなく、耐久性、そして実用性も兼ね備えているのだ。
ちなみに、サファイアはダイヤモンドに次ぐ硬度があり、そのためほとんどキズがつかない。「センチュリー」の名は、1世紀にわたり時計を美しく保てることから、「世紀を越えても輝き続ける時計」を目指してつけられたという。
発明家としても知られた存在センチュリーは、ハンス・ウルリッヒ・クリンゲンベルグによって1966年に創業された。
彼は、発明家としても知られた存在で、まだセンチュリーを創業する前の59年には"真空時計"を開発している。これは、ケース内部を真空にしてムーブメントを湿気や埃から保護し、さらに気圧や水圧などの影響から遮断して、時計の精度と耐久性を高めようという画期的な時計だった。
写真上:若き日のハンス。類い稀な才能は、多くの特許を取得。最高峰の時計作りにも活かされることとなる。この構造は、創業後まもなく発表された、再結晶サファイアをケース素材に用いた真空時計(バキュームウォッチ)に活かされている。
その後、70年代にはケースとカバーをサファイアで一体構造にしたモデルを発表。さらに80年代には、多面体カッティングを施した美しいサファイアウォッチを開発したことで、「時を告げる宝石」としてセンチュリーの名は世界へと広がっていったのである。
現在のセンチュリーは、息子であるフィリップ・クリンゲンベルクに引き継がれ、さらなる進化を遂げている。とくにメンズウォッチの分野では、2006年には創業40周年を記念して「バキューム」を復刻するなど、今世紀に入り、ますます力が入っている。他にも「エゴス」「エレガンス」など、新しい展開をみせている。
写真上:2006年Vacuum Watchは復刻され人気が再燃した。現在はそのスピリットが継承され、「エレガンスス ケルトン」に代表される新しい世界観をつくりあげている。伝統を尊重しながら、新たな展開を模索するセンチュリー。創業者から受け継がれた発明家のDNAが生み出す腕時計に、期待感は高まるばかりである。
▷問い合わせ:センチュリー銀座ブティック TEL:03-6278-8975