研究論文によると、発電所から排出された二酸化炭素と硫化水素を水に混ぜ、地中深くにある玄武岩層に注入すると、わずか数か月で炭酸塩鉱物に変化するのだという。科学者らは当初、二酸化炭素が自然に鉱物化するには数百年から数千年は掛かると考えていたが、それよりもはるかに短い期間で実現できることが今回のプロジェクトで明らかになった。
地球温暖化対策に希望の光
このプロジェクトには発電所を運営するレイキャビク・エナジーやコロンビア大学、コペンハーゲン大学、アイスランド大学の科学者らが参加し、二酸化炭素以外にも、毒性が強い硫化水素の排出を無くす実験も行った。ヘトリスヘイジ発電所では地下深くからくみ上げた熱水を使ってタービンを回しており、もう一つの発電所と合わせて首都レイキャビクの電力需要を賄っている。
ヘトリスヘイジ発電所で排出される二酸化炭素量は年間4万トンと、同規模の石炭火力発電所の排出量の5%に過ぎないが、今後は発電量を増加させる予定で、それに伴い二酸化炭素の排出量の増加も懸念されている。
研究チームはこれまで二酸化炭素のみを地中に貯留する実験を行っていたが、2012~2013年に実施したパイロットプロジェクトでは、250トンもの二酸化炭素、水、硫化水素の混合物を深さ400~800メートルの玄武岩層にポンプで注入して経過を観察してきた。その結果、大半は数か月で炭酸塩鉱物に変化し、2年以内に95%が鉱物化したという。
コロンビア大学ラモント地球研究所の水文学者で、研究論文の共同執筆者でもあるマーチン・ステュートはプレスリリースで次のように述べている。
「この実験によって、大量の二酸化炭素を地中に注入し、非常に安全な方法で貯留できることが示された。玄武岩が多い地域にある発電所は世界中に数多くあり、将来的にはこれらの施設でも同じ手法が使えると考えている」
ヘトリスヘイジ発電所の付近には玄武岩や水が潤沢にあるため、二酸化炭素1トン当たり30ドルという低コストで鉱物化することができる。プロジェクトの成果が見え始めた2014年以降、既に約5千トンもの二酸化炭素が地中に注入されたという。一方、二酸化炭素の排出量が多い火力発電所では二酸化炭素1トン当たり25トンの水が必要な上、蒸気からCO2を分離して地中に注入するにも多くの費用が掛かるため、トータルでは二酸化炭素1トン当たり130ドルのコストがかかる。
研究チームは、コストを下げる方法として多くの場合海水の利用が可能だとしている。2010年には、二酸化炭素の注入に適した玄武岩層がアメリカ沿岸で見つかっており、この技術の利用が期待される。