テレビプロデューサーとしてフルタイムで働きながらサーフィンのインストラクターもしていたリンゼイ・マコーミック氏は、海岸にプラスチックごみが打ち上げられる光景にうんざりしていた。そこで何か行動を起こそうと決め、歯磨き粉の新しい販売方法を思いついた。プラスチックチューブに入れるのではなく、ガラス瓶で販売できる歯磨きタブレットを作ろうと考えたのだ。このひらめきが、サステナブルなパーソナルケアブランド「Bite」の土台となった。「1粒を口に入れ、何度か噛んでから、普通の歯ブラシで磨き始めるのです」と彼女は説明する。
Redditのスレッドで知った無料のオンライン化学講座を受講しながら、彼女は自宅のリビングで製品を開発した。必要な原料はWhole Foodsで調達し、打錠機にも投資した。手袋をはめ、小さな瓶に歯磨きタブレットを詰め、ビーガンフードのフェスティバルで販売を始めた。
それは2018年のことだった。その後、Facebookで動画がバイラルになると、同社のShopifyストアには注文が殺到した。売上は3〜4週間で6000ドル(約95万円)から100万ドル(約1億5800万円)近くに跳ね上がった。マコーミック氏と共同創業者のアッシャー・ハント氏は2020年3月、同社をShark Tankでプレゼンした。Biteはマーク・キューバン氏とケビン・オリアリー氏から出資オファーを受けたが、共同創業者たちはそれを断り、自己資金で事業を成長させ、持ち分を維持する道を選んだ。
現在、マイアミに拠点を置く同社は完全リモートワーク体制をとっており、アルゼンチン、ブラジル、カナダ、メキシコに分散する11人の従業員を擁し、売上高は1000万ドル(約15億8000万円)を超えている。マコーミック氏は外部のマーケティング会社の力も借りながらブランドの認知拡大を進めており、現在はサブスクリプションとAmazonで商品を販売している。同社は歯磨き粉にとどまらず、マウスウォッシュ、フロス、植物由来の歯ブラシへと商品を広げ、詰め替え可能で堆肥化できるパウチ入りで販売している。
「本当に手探りで、すべてを自分で見つけ出していくような状態でした。今もまだ途上です」とマコーミック氏は語る。
「自分にもできるのでは」
マコーミック氏は、ひとつの潮流の一部である。給与計算処理を手がけるGustoが本日発表した調査によると、米国の成人の54%が起業を真剣に検討したことがあり、3分の1は実際に取り組んでいる。この調査はGustoのためにMorning Consultが9月に実施し、6105人を対象に行われた。
Gustoのチーフエコノミスト、ニック・トレンパー氏は「起業は増えており、その流れは新型コロナ以降に大きく加速しました」と述べた。「人々は周囲を見渡し、『自分にもできるのでは』と考えているのです」
現在は事業に積極的に取り組んでいないと答えた回答者の3分の1の間でも、39%が事業計画を書いていた。37%は法人形態を調べ、23%は事業用の銀行口座またはクレジットカードを開設し、22%は名称登録または許認可申請を行い、19%は雇用者識別番号(EIN)を申請していた。「彼らは、自分の事業を正式な形にするとはどういうことかを理解するための作業をすでに行っているのです」とトレンパー氏は述べた。
情熱と自律性が原動力
起業の動機として最も多かったのは「情熱をビジネスに変えること」で、30%が挙げた。その他の主な動機には「自分のスケジュールを自分で管理したい」(26%)、「家族のために長期的な経済的安定を築きたい」(24%)、「他人のために働くのをやめたい」(21%)などがあった。金銭的な動機も影響しており、18%が「本業以外の収入が必要」、16%が「自分の仕事に見合った報酬を得たい」、7%が「AIに仕事を奪われる不安がある」と答えた。最も関心の高い分野は、パーソナルサービス(38%)、プロフェッショナルサービス(24%)、Biteのような物品製造業(17%)、コミュニティサービス(8%)となっている。
「起業に成功した人々に共通しているのは、起業家ならではの自律性を求めていたことだ」とトレンパー氏は述べる。
起業家世代
この調査は、企業内で出世階段を上る従来型のキャリアを望む姿勢から、自分の事業を持つ方向へと世代的な変化が起きていることを浮き彫りにした。回答者が若いほど、起業への関心を示す傾向が強かった。Z世代とミレニアル世代ではそれぞれ3分の2(各66%)が起業を真剣に検討したことがあると答えたのに対し、X世代は52%、ベビーブーマー世代は34%だった。
「ここで実際に見えているのは、起業へ向かう一種の世代的シフトが起こり始めているということです」とトレンパー氏は述べた。
手続きの煩雑さが障壁に
起業への関心は高い一方で、実際に動いている起業家や起業を志す人の多くは、どこから始めればよいのかわかっていないことも調査で明らかになった。28%が、手続きや知識の壁を挙げている。多くの人は、書類作業に実際よりも長い時間がかかると考えている。起業志望者はその作業に50時間かかると見込んでいる一方、最近起業した事業主は32時間を費やしたと答えた。
行き詰まっているのは起業志望者だけではない。最初の一歩を踏み出した人や、すでに自分の仕事で報酬を得ている人の間でも、事業を正式化することが進行を遅らせている(53%)。
つまずきの原因となっているのは、どの事業体を設立するかを決めること、実際に設立すること、州務長官に書類を提出することなどのステップだ。「この壁を乗り越えようとする中で、こうした事柄によって手続きが一時停止してしまったと人々は話しています」とトレンパー氏は述べた。
起業志望者の41%は、立ち上げを案内してくれるサービスを利用できるなら、より早く事業を始めると答えた。「こうした手続きや知識のギャップを解消する方法を見つけることができれば、より多くの人を起業の道のさらに先へ進ませる助けになります」とトレンパー氏は述べた。
マコーミック氏の場合、必要な答えを得るためにオンラインを活用した。「とにかくGoogleで検索しまくりました」と彼女は言う。「LLCの書類を提出したときは、文字通りYouTubeの動画を見ながら進めました」
答えを求めてAIへ
回答者の多くは、自分の知識の不足を埋めようと積極的に動いており、その手段としてAIを利用することも多い。起業を真剣に検討した人の43%は、計画作成を支援するためにAIを使ったと答え、3分の1はAIによって新たな方向性が示されたと答えた。「AIは知識へのアクセスを平準化しています」とトレンパー氏は述べた。その結果、従来型の仕事ではなく、自分自身に賭ける人が増える可能性がある。



