ハリウッドの映画スタジオは過去10年間、完成した映画やテレビシリーズのプロモーションにTikTokを利用してきた。TikTokのグローバルコンテンツ部門責任者であるデニス・パピロフスキーは、スタジオがどのストーリーを開発するかを決めるより早い段階から、クリエイターを関与させたいと考えている。
「クリエイターをプロセスの最後だけに使うのではなく、まさに最初の段階から活用してほしい」と、10月14日にカンヌで開催されたMIPCOMのクロージングキーノートセッション(筆者がモデレーターを務めた)でパピロフスキーは語った。
完成した番組の売買を基盤としてきた市場にとって、それは資金投入の判断が下される場に誰が加わるのかを変えることになる。
パピロフスキーは両サイドで経験を積んできた人物だ。ドイツの公共放送ZDFからキャリアを始め、YouTubeを経て2020年にTikTokに加わった。初めて参加したMIPCOMは「伝統的な買主と売主の市場」だった。今年戻ってきた市場には、いまや「クリエイターとプラットフォーム」が加わっている。
企画決定の場にクリエイターの参画を
番組の発注や資金調達を決定するテレビのコミッショニング(企画決定)には、伝統的に放送局やプロデューサー、エグゼクティブが関与してきた。筆者はパピロフスキーに対し、その場にクリエイターやファンコミュニティという声が欠けているのではないかと尋ねた。
「端的に言えば、イエスだ」と彼は答える。
ただし彼の条件は、スタジオがコントロール権の一部を手放すことだ。「映画をめぐるメッセージングを自社だけで支配することはできない」と彼は言う。「自分の芸術作品、コンテンツを観客に委ねなければならない。彼らはそれについて語り、強く心を動かされた瞬間を切り取る。時にそれがどこなのか、作り手自身も分からないほどだ」
7月にソニー・ピクチャーズとTikTokが開催した『Spider-Man: Brand New Day(原題)』のイベントには、100人以上のクリエイターが参加した。デスティン・ダニエル・クレットン監督は、クリエイターからインタビューを受けるのではなく、自ら3人のクリエイターの制作プロセスについて質問を投げかけた。
スポーツ分野もまた別の試金石となっている。放映権者がアクセス権を厳しく管理しているためだ。8月に筆者が報じた通り、FIFAワールドカップにおいてフォックス(Fox)が米国の放送権を保有する一方、FIFAはTikTokを推奨プラットフォームに指定し、11カ国から30人のクリエイターに大会へのアクセス権を与えた。パピロフスキーは、このアクセス権の付与こそが、エンターテインメントだけでなくスポーツ分野もどれほど変化したかを示していると話す。
FORBES | モーリーン・カー
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「BookTok」がハリウッドの映像化に与える影響
TikTok上の読書・レビューコミュニティである「BookTok(ブックトック)」は、映像化候補の宝庫になっているとパピロフスキーは語る。
彼はアマゾン(Amazon)を例に挙げる。同社はメルセデス・ロンの小説『Culpa Mía』をスペイン語映画として映像化し、さらに英語版『My Fault: London(原題)』として展開した。Prime Videoはまた、レベッカ・ヤロスの『Fourth Wing(原題)』を基にしたシリーズも発注している。
「特定のIP(知的財産)に対して熱狂的なファンを持つ、出来上がったオーディエンスが存在しており、そこに投資するのだ」と、彼は買い手側の思考を説明する。
スタジオにとって、書籍はIPと既存のファン層をもたらしてくれる。しかし、BookTokにおける熱狂は読者を測るものであり、視聴者を測るものではない。ハッシュタグの盛り上がりだけでは、どれだけの人がサブスクリプションに加入したり映画のチケットを購入したりするかまでは確定できない。
TikTokの「マイクロシリーズ」が新たなIPの試金石に
パピロフスキーは、数分程度の短編エピソードで構成されるドラマ番組「マイクロシリーズ」が、BookTokが小説に果たした役割をオリジナルストーリーに対して果たせるのではないかと主張する。彼はこのフォーマットを、IPやストーリー展開、キャラクターの潜在的な「リトマス試験紙」と呼んでいる。
出資を募るプロデューサーは、「成功したマイクロシリーズを制作することによって」概念実証(Proof of Concept)を示せる可能性があると彼は言う。
TikTokはすでに作品への資金提供を行っている。イッサ・レイ率いるフーレー(Hoorae)との初のマイクロシリーズパートナーシップ作品は4月に公開された。10月14日、TikTokはターニャ・コーエンが共同代表を務めるメイド・バイ・アス・スタジオ(Made By Us Studios)とのパートナーシップを発表し、TikTokおよび独立型マイクロドラマアプリ「PineDrama」向けに、クリエイター主導のシリーズ作品群を共同制作することを明らかにした。最初の2作は、ハンナ・ストッキング主演の『Player(原題)』とアダム・ローズ主演の『The Knock(原題)』だ。
パピロフスキーは、マイクロシリーズをショート動画と「長い制作期間と多大なプレッシャーを伴う数百万ドル規模の大型制作」との架け橋と捉えている。
これはクリエイターにとっての所有権の可能性も開く。「自分で保有し、それを軸にビジネスを築けるIPコンテンツを作り始めることができる」と、彼はクリエイターの立場から語る。
FORBES | モーリーン・カー
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「マイクロシリーズの市場を定義するつもりはない」とTikTok
MIPCOMでは、フォーマットやジャンル、対価に関する共通の定義がないまま、「マイクロシリーズ」「マイクロドラマ」「縦型ドラマ」といった用語が混用されていた。筆者は、TikTokがこれらを定義・確立するつもりがあるのか尋ねた。
「定義するつもりはない」とパピロフスキーは述べる。「私たちはプラットフォームであり、ツールを提供する側だ」
しかしTikTokは、自社のマイクロドラマアプリ向けにシリーズ作品を共同制作しており、プラットフォームであると同時にコンテンツの買い手でもある。パピロフスキーもこの双方の役割を認めている。TikTokはクリエイターや制作会社に「ツールと適切なインフラ」を提供しつつ、一部の厳選したパートナーとは「賭けにも出ている」と説明する。
TikTokでのエンゲージメントが有料視聴者を保証するわけではない
パピロフスキーは制作関係者に対し、TikTokをテストの場として活用するよう促した。「コメント欄をリアルタイムのフィードバックとして活用し、視聴者に何が響き、何が響かないのかを真に理解してほしい」と彼は言う。
コメントや再生回数は関心の高さを測る指標にはなるが、視聴者がより長いシリーズ作品や長編映画にお金を払うかどうかや、2分のエピソードで成立するストーリーが45分間持続するかどうかまでは証明できない。
また今回のセッションでは、TikTokでテストされたアイデアが映画スタジオでの制作に移行した際、権利や収益、クレジットがどのように分配されるかという疑問も未解決のまま残された。TikTokはメイド・バイ・アスとのパートナーシップにおける財務条件を公開していない。
TikTokにはこの取り組みの成果に対する商業的利益がある。同社の「Spotlight」機能は、ファンの動画をチケット購入や配信サービスへと繋げる役割を果たす。パピロフスキーはその目的を「ファンコンテンツをパートナーのために機能させ、真のビジネス価値を生み出すこと」だと説明する。
TikTokの提案は、制作予算が投入される前にオーディエンスの関心の証拠を提供するというものだ。しかし、オーディエンスの信頼はクリエイターが独立性を維持できるかどうかにかかっており、それこそがスタジオ側に手放すよう求められているコントロール権そのものなのだ。
企画開発の初期段階からクリエイターの参画を
プロデューサーや配給会社がTikTokと何を協議すべきか問われたパピロフスキーは、3つの機会を挙げた。新作およびカタログ作品(過去作)のオーディエンスの開拓、リアルタイムのフィードバックを通じたアイデアのテスト、そしてオリジナル・マイクロシリーズの開発だ。
彼が最後に語ったアドバイスは個人的なものだった。エグゼクティブは「現場のチームに何が起きているかの把握を任せ、単なるSNSマーケティングチャネルとして利用する」のではなく、自らアプリを使うべきだという。彼はTikTokを「企画開発プロセスの核となるもの」として扱ってほしいと考えている。
スタジオ側はTikTokをマーケティング計画の最後の手段として扱うことを学んできた。パピロフスキーはそれを企画開発ラインナップの1ページ目として扱い、従来彼らが最も厳重に保護してきた決定権、すなわち「どの作品を制作するか」の判断をクリエイターと共有するよう求めている。
FORBES | モーリーン・カー
TikTokのW杯クリエイター30人は試合を撮影しなかった——それこそが狙いだった
(筆者は報道機関としての認定を受けてMIPCOMに参加し、TikTokの招きにより本セッションのモデレーターを務めた。)



