【重要】Forbes JAPAN サイトメンテナンスのお知らせ(2026年11月10日(火)18:00〜)

AI

2026.11.08 08:11

AI時代、個人データの削除が難しくなっている理由

Adobe Stock

Adobe Stock

BRANDVOICE | Paid Program

もっと見る>

長年、インターネット上の個人情報を削除するには、データブローカーや人物検索サイトを見つけてオプトアウト申請をすればよかった。しかし、人工知能(AI)がそのプロセスを一変させた。

「AIは個人データの寿命を延ばす」と、データプライバシーサイト「All About Cookies」の編集長であるキャリー・レーン(Kalleigh Lane)は語る。「個人データはコピーされ、新たなプロフィールを素早く構築するために使われる可能性があるが、そのデータがどこへ行ったのかを示すものはない」

自動化されたシステムは、公的記録、商業データ、オンラインで公開された情報を収集し、別々のデータベースにある詳細情報を結びつけることができる。あるリストから情報を削除しても、別のソース経由で再び表示されることがある。米国の大部分の地域では、削除要求はいまだに1社ずつ個別に行う必要がある。

米国人は、どう対処すべきか分からなくても、何かがおかしいということには気づいている。「All About Cookies」が2026年6月に米国の成人1000人を対象に実施した調査では、92%が自身の個人情報がオンライン上にあることに少なからず不安を感じていると回答した。

3分の2超は、どの情報が入手可能になっているかについて、自分にはほとんど、あるいはまったくコントロールできないと感じていた。

データ収集は瞬時に行われる
削除に成功しても長続きしない理由
流出したデータは詐欺師にとって価値がある
プライバシーの権利は州境で途切れる
責任あるAIガバナンスに求められること

データ収集は瞬時に行われる

データブローカーは何十年も前から消費者プロフィールを構築してきた。AIによって企業は、その作業をより速く、はるかに大規模なデータ集合に対して行えるようになった。

米連邦取引委員会(FTC)は、技術の進歩により、企業が第三者、機械学習、AIを通じて膨大なデータを収集・処理することが「負担が少なく、費用も安く」なり得ると警告している。

筆者の会社であるプロスパー・インサイツ&アナリティクス(Prosper Insights & Analytics)の最近の調査によれば、米国成人の61%が、AIが自分のデータを使ってプライバシーを侵害することを「極めて」または「非常に」懸念している。「まったく懸念していない」と答えたのはわずか13%だった。

約3分の1は、AIが使用するデータについて、より多くの開示や透明性が必要だと答えた。

公的記録から取得された氏名は、他の識別情報と紐付けられ、販売されるか、モデルの学習用データセットに追加される可能性がある。消費者が削除を要求する頃には、その記録は元の収集者の管理範囲を大きく超えて、複数のシステムに存在しているかもしれない。

AIは収集したデータに基づいて、個人の関心事、収入、購買習慣といった詳細を含む予測を行えるため、問題はさらに複雑化する。そのため、企業は収集した元データを削除したとしても、AIがそこから生成したプロフィールは保持し続ける可能性がある。

削除に成功しても長続きしない理由

All About Cookiesの調査では、米国人の32%が自分で個人情報を削除しようと試みたことが分かった。データ削除サービスを利用したことがあるのはわずか9%で、そうした助けを借りたとしてもプロセスは不完全だ。

シラキュース大学情報研究大学院の准教授であるリー・W・マクナイト(Lee W. McKnight)は、All About Cookiesのレポートの中で、データの削除を「一度で完了する修復ではなく、進行中のプロセス」と説明している。

言い換えれば、これは世界最悪のモグラたたきだ。1つの掲載情報が消えても、同じ情報が別のサイトに浮上する。削除サービスは正規のデータブローカーや人物検索サイトに連絡できるが、公的記録を消去したり、犯罪者から情報を取り戻したりすることはできない。

もう一つの問題はAIの学習(トレーニング)だ。ソースファイルを削除しても、派生データセットにまだその情報が含まれているか、あるいはモデルがそれを再現できるかどうかはわからない。企業は消費者がそうした疑問を抱き始める前に、削除が何を対象とするのかを決定する必要がある。

流出したデータは詐欺師にとって価値がある

影響は広告の域をはるかに超える。All About Cookiesの調査では、回答者の62%が、オンラインで入手可能な正確な個人情報を使った詐欺やフィッシングを受けたことがあると答えた。さらに34%が債権回収業者や弁護士からの迷惑電話を受け、21%が見知らぬ人からの嫌がらせや個人情報の盗難、詐欺の被害を報告している。

「正確な個人情報こそが、詐欺を信じられるものにしてしまう」とレーンは言う。「警戒心を下げてしまう可能性がある」

生成AIを利用すれば、詐欺師は何時間もリサーチすることなく、いくつかの事実を説得力のあるメッセージに変換できる。また、AIが生成したテキストや音声により、同じ手口をより多くの人々に合わせて調整することが可能になる。

電話番号、勤務先、親族の名前などが、ターゲットに合わせた個別化された詐欺アプローチの糸口となる。データ削除によって発生してしまった詐欺を取り消すことはできないが、次の試みに使われる材料を減らすことはできる。

プライバシーの権利は州境で途切れる

米国には、すべての消費者がすべてのデータブローカーに個人情報の削除を求める権利を与える包括的な連邦法は存在しない。既存の保護は州ごとに異なる。

個人に課される作業を減らすという点で、カリフォルニア州は最も進んでいる。同州の「削除要求・オプトアウトプラットフォーム(DROP)」により、住民は登録されている600社以上のデータブローカーに対して一度にリクエストを送信できる。ブローカーは2026年8月にリクエストの処理を開始し、少なくとも45日に1回はシステムを確認しなければならない。オレゴン州、テキサス州、バーモント州もブローカーの登録を義務付けている。コネチカット州の新しい枠組みは2027年にかけて段階的に導入される。

これらの法律は定義や適用除外が異なっている。情報を取引する企業は全米で事業を展開しているにもかかわらず、消費者は州境を越えるたびに変わる権利に振り回されることになる。

前出のプロスパー・インサイツ&アナリティクスの調査によると、米国の成人の28%がAIには政府による規制が必要だと回答した。この数字はベビーブーマー世代では39%に上昇した。

責任あるAIガバナンスに求められること

企業は、AIシステムが使用するデータについて明確な回答を用意する必要がある。方針は、学習データセット、個人情報を明らかにするモデル出力、特定可能な人物に結びつけられた推論に対応すべきだ。

また、消費者も何が削除されたのか、不完全な対応に対してどのように申し立てを行うことができるかを知る必要がある。

組織は、個人データがどこから来て、どこへ行ったかを把握する必要がある。保持期間の制限を実施すれば、追跡すべき古いコピーの数が減る。ベンダー契約は削除義務を定義し、申請完了時の確認を義務付けるべきだ。

現行の仕組みは、個人が数百もの個別フォームを提出して自動化されたデータ収集に対応することを求めている――不可能な作業だ。カリフォルニア州の一元申請プラットフォームはより現実的なアプローチを提供しており、連邦ルールによって全米の消費者に共通の基準となる権利を与えることができるはずだ。

AIは個人データの収集、関連付け、再利用の速度を加速させた。データの削除はそのスピードに追いついていない。追いつくまでは、消費者が真のコントロールを手に入れることは決してないだろう。

開示事項:筆者の会社であるプロスパー・インサイツ&アナリティクスは、上記で参照した消費者意識調査を実施した。これは全米小売業協会(NRF)が使用し、Amazon Web Services(AWS)、ブルームバーグ、ロンドン証券取引所グループ(LSEG)から経済ベンチマーキング用に入手可能なものと同じデータセットである。

(Forbes.com 原文)

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事