私の著書『Exit Mindset』の読者からは、しばしば同じ質問が寄せられる。この本は、経営者に対して業務を最適化し、実行力のあるチームを築き、自分がいなくても成長できる会社をつくることを求めている。ところが、その過程で多くの人が立ち止まり、こう尋ねるのだ。「どうすればそんなことが全部できるのか。学ぶべきことが多すぎるのではないか」と。
私の答えは3語である。「Do, not learn(学ぶな、動け)」。
カンマに注目してほしい。私は誰にも学ぶのをやめろと言っているのではない。重点を置くべきなのは、行動することだと言っているのである。数十年にわたり企業を築いてきた経験から、私たちの多くがとる学習への向き合い方は、気づかぬうちに自分たちの足を引っ張っていると考えるようになった。
学習の罠
従来型のモデルはこうだ。まず、何かをする方法を学ぶ。そして、十分に学んだら、それを実行する。
問題は、その「十分」がめったに訪れないことにある。多くの人にとって、学習は待合室になってしまう。生産的に感じられるが、実際にはしばしば支えにすぎない。決断を先延ばしにし、わからないことへの不快感を避け、行動が求められる場面で慎重なままでいるための手段になる。講座に申し込み、もう1冊本を読み、もう1本チュートリアルを見る。そして、実行はどんどん先送りされる。
理解は大切だ。あらゆる挑戦には、基礎となる知識の水準が不可欠である。しかし私の経験では、最も深く、最も長く残る学びは、行動の準備から生まれるのではない。行動そのものから生まれるのだ。
パイロットがすでに知っていること
飛行機の操縦を考えてみてほしい。一見すると、これは完璧な反例に見える。飛ぶ前に学ばなければならないのは当然だからだ。
しかし、パイロットが実際にどのように訓練されているかを見てみるとよい。飛行学校は学生をシミュレーターに入れる。そこでは、何の影響もなく飛行機を1000回墜落させることができる。彼らは、行動し、失敗し、調整することで学ぶ。世界で最も安全性が重視される職業の1つでさえ、最も強力な教育手段の1つは講義ではない。失敗のコストを低く抑えるためにつくられた環境での実践経験なのである。
より短い時間で、より深く学ぶ
デザイナーに新しい建築ソフトウェアプラットフォームを渡し、「これがこのソフトの機能だ。最終的な成果物を出す方法を自分で突き止めてくれ」と伝えたとしよう。
選べる道の1つは、1〜2カ月かかる体系的な講座を受けることだ。もう1つは、その同じ時間をソフトウェアに直接向き合うことに使う道である。試し、壁にぶつかり、実際の問題が答えを必要としたときだけリソースを探す。
私の経験では、2つ目の道は二重の意味で勝っている。実際の問題を解決しながら得た知識は、受け身の指導ではめったに得られない形で定着するため、学びはより強固になる。そして、すべての時間が本当に重要なことに向けられるため、たいていはその方が速い。
なぜ私たちは行動を避けるのか
行動がそれほど有効なら、なぜ多くの人はまず勉強することを選ぶのか。最初の段階が真に困難だからである。
理解できないものに向き合うとき、脳は過剰に働く。未知の問題について考え抜くことは負荷が大きく、苦痛ですらあり、多くの人はすぐに諦める。そして「まだ十分に知らない。講座を受けよう」と結論づける。その講座を終えても、なお実行できない人は多い。
行動することは、急な坂を登るようなものだ。序盤は消耗する。しかし、ブレイクスルーの瞬間、つまり基本概念が頭の中で一つにつながる瞬間が訪れる。その坂を越えれば、勢いが前へ運んでくれ、新しいスキルを身につけることは少しずつ容易になる。
私たちを行動から遠ざけるものの1つは、主観的な時間感覚だ。アルベルト・アインシュタインは相対性理論を分かりやすく説明した際、「楽しい会話をする1時間はあっという間に過ぎ去るが、熱いストーブに手を置いた1秒は永遠のように感じられる」と言ったとされる。行動の初期段階は、まさにストーブに置いた手のようなものだ。1時間が7時間のように感じられる。それでも押し進めれば、教室で学ぶよりもはるかに早く目的地にたどり着いていたことに気づく可能性が高い。
失敗の重要性
この考え方を共有すると、たいてい正当な疑問が返ってくる。「いきなり行動を起こしたら、失敗するのではないか」と。その通りであり、それこそがポイントなのだ。失敗は、行動が教えてくれる方法である。シミュレーターの中のパイロットは、墜落にもかかわらず学ぶのではない。墜落するからこそ学ぶのである。
本当の問いは、失敗するかどうかではない。どこなら失敗できるかである。「Do, not learn」は、人やチームが、試行錯誤のコストが重大な悪影響をもたらさない領域で、本来なら達成できなかったことを成し遂げるためのビジネス戦略である。生命に関わることや精密さが極めて重要なこと、あるいは誤りが誰かの健康、安全、幸福を損ない得る状況を想定したものではない。誰もこの考え方に基づいて手術をしたり、実機を操縦したり、法廷で自らを代理したりすべきではない。
非常に鋭いナイフのようなものだと考えてみてほしい。正しく扱えば料理をつくることができ、外科医の手にあれば命を救う。無謀に使えば、害を及ぼす。価値は道具そのものではなく、それをどう使うかにある。「Do, not learn」にも同じ判断が求められる。初期の失敗が損害ではなく学びをもたらす場を選び、その失敗を本物の習熟へ向かうための入場料として扱うべきである。
実践に移す
このマインドセットを組織に取り入れたいリーダーに向けて、役立つ原則をいくつか挙げる。
・成果から始める。カリキュラムではなく明確な最終成果を人々に示し、その目標によって何を解明する必要があるかを決めさせる。
・自前のシミュレーターをつくる。パイロットプロジェクト、サンドボックス、社内トライアルなど、失敗が想定され、コストも低いローリスクな環境をつくる。
・坂道のための余地を確保する。初期段階は遅く、不快に感じられるものだと見込み、チームを際限ない準備に引き戻すのではなく、その時期を守り抜く。
結論
私の経験では、最も前進する企業は、必ずしも始める前に最も多くを知っている企業ではない。進んで始め、動きながら学び、進み続ける企業である。だから次に「まずこれをどうやるか学ばなければ」と口にしている自分に気づいたら、カンマの位置を思い出してほしい。Do, not learn。学びは後からついてくる。



