AI時代、ブランド最大の競争優位は「真正性」である理由
私はブランド企業と、同じような会話を何度も繰り返している。彼らは、より多くのコンテンツを、より速く、しかもすべて見栄えよく作りたいと考えている。そのたびに私は、残念ながら今うまくいっているのはそれではない、と伝えなければならない。
AIによってコンテンツ制作が容易になっていない、ということではない。消費者が何が本物かを見抜く力を大きく高め、真正性が伝わらないブランドに対してはるかに寛容でなくなっている、ということだ。
クリエイターエコノミーは2023年時点で世界全体で約2500億ドル(約39兆6000億円)規模と推計され、ゴールドマン・サックスは2027年までに4800億ドル(約76兆円)規模に成長すると予測している。
クリエイター産業が拡大を続ける一方で、AIも規模を増し、その結果として消費者は疲弊している。現在、従来のクリエイターコンテンツよりAI生成のクリエイターコンテンツを好むと答える消費者はわずか26%で、2023年の60%から大きく低下した。AIが私たちの明示的な同意なしに生活のほぼあらゆる側面へ急速に入り込んできたことを考えると、26%でさえ高い数字に感じられる。
消費者は、本物の人による本物のコンテンツを求めている
消費者は、常に何かを売り込んでくるわけではないクリエイター(29%)、実際の専門性を示すクリエイター(26%)、あるいは自分の属性や趣味に近いクリエイター(26%)を信頼しやすいと答えている。人々が最も楽しむコンテンツの種類は個人的なストーリー(44%)で、商品レビューや助言(40%)を上回る。
私は今年の新学期シーズンに、当社のプラットフォーム上のあるクリエイターが投稿したリールで、まさにこれが起きるのを目にした。その動画は、取り上げられたブランドのためというより、彼女の友人に向けたもののように見えた。最も高品質に制作されたコンテンツではなかったが、おそらく最も共感を呼ぶものだった。
ブランドだけの問題ではなく、業界全体の問題だ
消費者はクリエイターをボイコットしているわけではない。消費者が拒んでいるのは、偽物のように感じられるコンテンツだ。そして、彼らは不自然なコンテンツを見抜く力を大きく高めている一方で、AIはその違いを見分けることをはるかに難しくしている。米国人の76%は「写真、動画、文章がAIによって作られたものか、人間によって作られたものかを見分けられることが重要だ」と答えているが、53%は実際に区別できる自信がないとしている。YouTubeだけでも、新規アカウントに表示されるコンテンツの約5分の1を低品質なAI動画が占めている。
マーク・ザッカーバーグはこれを、ソーシャルメディアの「第3段階」と呼んでいる。友人や家族のコンテンツ、そしてクリエイターコンテンツに続き、AI生成メディアがいま巨大な新しい層として流れ込んでいるにもかかわらず、プラットフォーム側は対応しきれていない。ワシントン・ポスト紙の分析によれば、主要ソーシャルメディアプラットフォームのうち、AI生成コンテンツであることを明確に表示しているのは8社に1社にすぎない。一方で、メタの「AIで作成または修正された可能性がある」というような控えめな表示でさえ、それが正確かどうかにかかわらず、クリエイターの信頼性を損なう可能性がある。
ただし、プラットフォームは動き始めている。Snapchatは、Spotlightフィードで完全にAI生成された動画を「今後おすすめしない」方針を示し、代わりに本物の創造性を評価するという。LinkedInやSubstackのような企業も、AI生成コンテンツを識別するため同様の措置を講じている。これは業界にとって前向きな一歩だが、オーディエンスに本物らしい形でリーチする方法を模索するブランドにとって、状況は依然として不安定である。
ブランドとクリエイターは中間地点で歩み寄れる
ブランドは外部の声と組むことにリスクを感じるため、非常に細かく指定したブリーフを携えてクリエイターに接することが多い。しかし、クリエイターは長年かけてフォロワー、声、トーンを築いてきた。そして視聴者は、台本に沿い過ぎたと感じられるコンテンツに嫌気がさすことが多い。
実際の最適解は中間地点にある。ブランドは戦略とガイドラインを提示する一方で、クリエイターには自分の声に自然になじむと感じられるだけの自由を与える。人々に最も響くのはそれであり、実際に販売につながり得るのもそれだ。
ブランドには新しい評価基準が必要だ
多くのブランドは、クリエイターマーケティングの評価を誤っている。彼らは資料に載せやすい最も無難な数字を求める。それがフォロワー数だ。だが、フォロワー数は次に何が起きるかを示す指標としては実のところ弱い。再生数は、人々がスクロール中に通り過ぎたことを意味する。それは行動を起こすことと同じではない。人は一度見ただけで何かを買うわけではない。もっと複雑だ。人が買うのは、友人や家族、地域の声といった信頼する誰かがその商品を紹介し、自分の世界の一部になり得ると感じさせたからである。
ここで一貫しているのは、古い評価基準はリーチを評価し、新しい評価基準は関連性(レリバンス)を評価するということだ。実務上は、最大のオーディエンスを持つ人ではなく自社の価値観に合うクリエイターを選び、インプレッションよりエンゲージメントを重視し、小規模でも信頼されている声が大きな影響を持ち得ると認識することを意味する。
未来は、コンテンツではなく信頼を築くブランドのものだ
私の組織は反AIではない。だが、親AIでもない。それが現時点での私たちの真実だ。より多くのブランドが同じ地点にたどり着くと思う。AIは、舞台裏で行われる種類の仕事には本当に役立つ。だが、クリエイターと、その人を信頼する人々との関係の代替にはならない。
だから、次のブリーフに適用すべきテストはこうだ。成果物の仕様を細かく定める前に、そのクリエイターが自分らしく語れるだけの自由を与えているか、それとも人々が信じてくれることを期待して、また一つ洗練された広告を作ろうとしているのかを自問してほしい。その一つの判断は、とくに信頼する人がほとんどいないコンテンツでフィードがますます混み合うなかで、どれだけ追加のコンテンツを作るよりも、あなたのブランドに大きく貢献する可能性がある。



