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2026.11.06 09:57

AIで浮いた時間はどこへ消えた?「パーキンソンの法則」という罠

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1955年、英国の海軍史家シリル・ノースコート・パーキンソンは、『エコノミスト』誌(有料)に半ば冗談のようなエッセイを寄稿した。これは後にNPRの番組「プラネット・マネー」が自らの編集部で検証実験を行ったことでも知られる。その冒頭の一文こそが、この理論のすべてを表していた。「仕事の量は、完成のために与えられた時間を満たすまで膨張する」。彼が提示した根拠は英国海軍だった。軍艦の数が減少し続けているにもかかわらず、「なされるべき仕事の量の変化(もしあるとすれば)にかかわらず」、海軍省の職員数は増え続けていたのだ。

70年が経過した現在、この法則はAIが企業にもたらしている変化を最もよく説明する理論となっている。

AIのアピールポイントは「時間の削減」だった。同じ仕事を半分の時間で終わらせ、浮いた時間を手に入れる。2024年にアップワーク(Upwork)が経営幹部、従業員、フリーランス2500人を対象に実施した調査によると、経営幹部の96%がAIによる生産性の向上を期待していた。しかし、同じ調査で従業員の77%が「AIの導入によって業務量が増えた」と回答している。

プロジェクトにかかる時間は変わらない

AI導入前に12週間と試算された移行プロジェクトは、現在も12週間と試算される。チームは一日中AIコーディングツールを使用しており、キー入力のレベルでは作業が速くなっている。しかし、プロジェクトが完了するのは結局12週目だ。

変化したのは、納品されるものの質だ。より多くのイレギュラーケースへの対応、より洗練されたコード、整ったドキュメント。成果物の質は向上しているが、スケジュールはまったく変わっていない。

私が見た中で最大規模の実証研究も、同じことを示している。経済学者のアンダース・ハムラム(Anders Humlum)とエミリー・ベスターガード(Emelie Vestergaard)は、AIチャットボットの登場後、デンマークの7000の職場に勤務する2万5000人の労働者を追跡調査した。平均的な時間節約は労働時間の約3%だった。どの職種においても、所得や記録された労働時間に有意な変化は見られなかった。節約された時間の80%以上は、AIが出力した内容の修正など、AI自体が新たに生み出したタスクを含む別の作業に消費されていた。

タスクの見積もりも縮小しない

エンジニアは、より少ない工数の見積もりを提示し始めている。エンジニアリングには明確な「完了」の定義が存在するからだ。テストに合格するか、しないかのいずれかである。ループが早く閉じれば、それに気づくことができる。

ハーバード大学とBCG(ボストン・コンサルティング・グループ)が758人のコンサルタントに詳細に定義されたタスクを与えた実験では、完了速度が25%向上し、評価された品質は40%向上した。明確なゴールがあっても、人々は浮いたリソースを「速さ」よりも「品質の向上」に多く費やしていた。

私の経験上、それ以外の職種では見積もりがまったく変わっていない。マーケターに新製品案内のメール作成にかかる時間を尋ねたり、デザイナーにランディングページの作成時間を尋ねたりしてみてほしい。日常的にAIを使っている人々であっても、2023年と同じ数値を答えるはずだ。

そうした仕事には明確なゴールがない。「完了」とは作業をやめた瞬間を意味する。そのため、AIのおかげで4時間の余裕ができても、その時間はキャッチコピーの5つ目の案を作成したり、スライド資料のページ数を増やしたりすることに使われる。見積もりとは「入れ物」であり、その入れ物の大きさは以前と変わらないままだ。

計測を行うグループでさえ誤解している

調査機関METRが2025年に実施した無作為化比較試験では、経験豊富なオープンソースエンジニア16人が、AIツールの有無両方の条件で246の実際の課題に取り組んだ。作業開始前、彼らはAIによって作業が24%速くなると予測していた。しかしAIを使用した場合、実際には作業に19%長い時間がかかった。にもかかわらず作業終了後、彼らは「AIによって作業が20%速くなった」と信じ込んでいた。

最も厳密なフィードバックループを持つグループでさえ、自らの速度評価を40ポイント近く誤っていた。では、フィードバックループが存在しないチームはどうだろうか。「速くなった気がする」ということしか伝わらず、まさにこの「速くなった気がする」という主観の中でパーキンソンの法則は最大限の効力を発揮する。

自社の数値を確認する

少し前、私は自社エージェンシーの時間記録(タイムトラッキング)を確認した。数年前に行われた2つの構築プロジェクトでは、半年強で数百時間が記録されていた。一方、エンジニアが終日AIツールを使用していた最近の3つの移行プロジェクトでは、同じような期間でほぼ倍の時間数が記録されていた。全体の期間の枠組みは同じだ。

変わったのは、時間が何に使われたかだ。プロジェクト全体の約半分を占めていた開発作業の割合は約3分の1に減少した一方で、会議の時間は倍増していた。会社全体で見ると、過去数年間で総労働時間は変わらないものの、開発に費やされる時間は約4分の1減少していた。

エンジニアの作業は速くなった。しかしプロジェクト全体の期間は短縮されていない。浮いた時間は、仕事についての議論、設計、そして要件の再定義に費やされていた。その一部は品質向上につながっているが、一部は単に時間に余裕ができたことで膨らんだ調整作業に過ぎない。どちらについても、事前見積もりはなされていないのだ。

どちらのレバーを引くか意図的に選択する

これは特別なことではなく、一般的な現象だ。セントルイス連邦準備銀行の調査によれば、米国の労働者の39%が週に1回は生成AIを使用しており、削減された労働時間は2.2%にとどまる。MIT(マサチューセッツ工科大学)が企業での実証実験300件を分析した研究では、損益計算書(P&L)に好影響を与えたパイロット運用はわずか約5%に過ぎなかった。

AIはすべてのチームに配当をもたらすが、その使途は「効率性」か「品質」の2つしかない。現在、ほとんどのチームはそのすべてを品質向上に消費している。それは意図的な選択ではなく、誰も小さくしなかった「入れ物」を埋めるために品質向上が利用されているに過ぎない。これは誤った初期設定(デフォルト)だ。品質の向上には限界効用逓減の法則が働く。クライアントが5つ目のキャッチコピー案や3回目の微調整に気づくことはめったになく、それに対して追加で報酬を支払うこともない。その限界点を超えて「より良くする」ために費やされる労働時間は、本来なら利益率に還元できたはずの時間だ。

したがって、プロジェクトごとにどちらのレバーを引くべきか明確に決める必要がある。品質自体が価値となるプロダクトであれば、それを明示して以前と同じタイムラインを維持する。それ以外のすべての仕事については、時間を取り戻すのだ。意図的に「入れ物」を小さくする。プロジェクトの期間を12週間ではなく8週間で試算してみる。見積もりを半分に切り詰め、何に支障が出るか観察する。パーキンソンの法則は双方向に作用するが、多くのチームは仕事がどこまで収縮し得るかをテストしたことがない。まずは「完了」の定義が存在しない部署や業務から手をつけるとよい。我々の場合、それは会議だった。会議のための時間予算を見積もる者など誰もいなかったし、これまでもいなかったのだ。

最も重要なポイント

もしAIの導入をコスト削減策として予算に組み込んでいるのなら、その選択を行うまでは削減効果をゼロとして見積もるべきだ。意図的に選択すれば、効率化に3分の1、あるいは3分の2を割り当てるといった判断ができる。しかしデフォルトのまま放置すれば、余剰リソースはすべて品質向上に費やされ、CFO(最高財務責任者)はそれが「コスト削減」だと勘違いすることになる。

AIは時間を取り戻してくれるわけではない。より大きな「スーツケース」を与えてくれるだけだ。多くの企業は無意識のうちにその空きスペースに荷物を詰め込みながら、旅が軽くなったと錯覚している。実際にどれだけの荷物を運びたいのかを、自ら決める必要があるのだ。

(Forbes.com 原文)

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