どの組織にも、プロセスを装った高コストな習慣が存在する。その言い訳として最もよく使われるのが「ずっとこうしてきたから」だ。それでもなお、これは業務プロセスが存在する理由として、最も頻繁に用いられる説明の1つであり続けている。
なぜこの承認が4段階も必要なのか。「ずっとそうしてきたから」。
なぜ同じ情報を3つのシステムに入力しているのか。「それが手順だから」。
なぜ誰かがレポートをダウンロードし、Excelで加工し、別の誰かにメールで送り、その結果をまた別の場所に手入力するのか。もうお分かりだろう。
さらに興味深いのは、こうした悪いプロセスを「高速化」するためにテクノロジーを導入することだ。紙のフォームを電子化し、メールをワークフローに変え、何十年も前に設計されたプロセスのリマインダーを自動化する。そのプロセスが今も意味を持つのかを問うこともせずに、である。
そこには現実のコストが伴う。デロイトの「2025 Global Human Capital Trends」レポートによると、従業員は組織価値を生まない業務に時間の41%を費やしており、時代遅れのプロセス、会議過多、本質的でない業務が能力を消耗させる主な要因として挙げられている。それでも私たちは、なぜかそれを変革と呼ぶ。しかし、プロセスを変革したわけではない。官僚的手続きをデジタル化しただけである。
自動化をやめ、問い直せ
人事チームが新たなプロセスを自動化し、新たなプラットフォームを導入し、新たなAIツールを投入する前に、もっと基本的な問いを立てる必要がある。もし今このプロセスを一から作るとしたら、同じように作るだろうか。答えが「ノー」なら、なぜ悪いプロセスを高速化しようとするのか。
変革が失敗するのは、なぜその業務を行うのかを問い直すのではなく、今やっていることから出発してしまうケースがあまりにも多いからだ。既存のプロセスが存続する価値があることを前提にしてしまっている。しかし、そうでない場合もある。代わりに、次のように問うべきである。
1. 私たちはどのような成果を達成しようとしているのか。
2. 絶対に必要なことは何か。
3. 正当な事業上、法務上、またはコンプライアンス上の要件によって存在しているものは何か。
4. 8年前に誰かが手順を追加し、その後誰も削除しなかったために残っているものは何か。
AIが複雑性の問題を生み出したわけではない。だが注意しなければ、AIはその複雑性と共存しやすくしてしまう。
本当に人間が必要なものは何か
生成AIは、コミュニケーション文の作成、情報の要約、データ分析を支援できる。これにより人間は速くなる。エージェント型AIは別の可能性をもたらす。テクノロジーが人間の作業を単に支援するだけでなく、業務そのものを実行するようになりつつある世界である。
マイクロソフトの「2026 Work Trend Index Annual Report」は、このシフトを次のように説明している。エージェントが実行の多くを担い、人間は業務を方向付け、意思決定を行い、成果に責任を持つ余地が増えていく、と。調査では、AIユーザー2万人のうち66%が「AIのおかげで付加価値の高い業務により多くの時間を費やせるようになった」と回答している。
したがって、「AIは従業員がこの業務をより速く行うためにどう役立つか」と問うだけでは不十分である。「そもそもなぜ従業員がこの業務を行っているのか」と問うべきだ。
人事における人間の強みは、答えが明白でない場面で判断を下すことにある。信頼には信用力とつながりが必要だ。交渉には文脈と関係性が必要だ。コーチングには挑戦を促すことと影響力が必要だ。複雑な人に関する意思決定には、アルゴリズムには見えないものを見る力が必要である。
しかし、システム間でデータをコピーすることはどうか。承認を催促することはどうか。リマインダーを送ることはどうか。情報を1つのキューから別のキューへ移すことはどうか。その仕事はなお必要かもしれないが、それを人間が行う必要があるとは限らない。
削減したものを測定せよ
目標が不要な仕事をなくすことなら、成功の測り方を考え直す必要があるかもしれない。
人事は活動を測定するのが得意だ。オンボーディングした従業員数、充足した求人件数、処理した取引件数、クローズしたチケット数、実施した研修数。こうした指標は、チームがどれほど効率的に仕事をこなしているかを示す。しかし、その仕事がそもそも存在すべきかどうかは教えてくれない。
2つの人事チームを想像してみてほしい。1つは年間1万5000件の取引を処理し、10%速くなる。もう1つはプロセスを再設計し、1万件の取引がそもそも発生しないようにする。最初のチームには見事な生産性指標がある。2つ目のチームには、ダッシュボードに載せにくいものがある。何も起きなかった、ということだ。取引はない。チケットはない。不要な承認はない。マネージャーが人事を追い回すこともない。人事担当者がマネージャーを追い回すこともない。そして、それこそが間違いなく、より価値のある成果である。
デロイトの調査も関連する測定上の問題を提起しており、アウトプット中心の従来の生産性指標では、人間のパフォーマンスの全体像を捉えきれないと指摘している。
では、人事が、マネージャーに戻した時間、削減した手順、短縮したサイクルタイム、なくした不要な人手による接点、防いだ例外対応を測定し始めたらどうだろうか。速度を測れば、プロセスを最適化することになる。削減したものを測れば、そもそも4段階のプロセスが必要だったのかを問うことになる。人事のインパクトを示す最良の証拠は、もはや誰もやらなくてよくなった仕事である場合がある。
価値を生む仕事へ人材を再配置せよ
すべての承認が官僚主義なわけではない。中には必要な財務的、法的、業務的な統制もある。すべての人的接点が非効率なわけでもない。中には説明責任、文脈、あるいはより良い従業員体験を生むものもある。
目標は、何が何でも手順を減らすことではない。存在意義を正当化できない手順を減らすことだ。そして、既存の仕事にAIを重ねるだけでは、この問題は解決しない。
マイクロソフトも「2025 Work Trend Index Special Report: Breaking Down the Infinite Workday」で同様の結論に達している。Microsoft 365の集約された生産性データと、3万1000人のナレッジワーカーを対象とした世界規模の調査に基づき、同レポートはAIを導入するなら業務の進め方そのものの再構想とセットでなければならないと論じている。さもなければ組織は「壊れたシステムをAIで加速させるリスク」を負うことになる。
まさにそれがリスクである。4ステップで済むはずの12ステップのプロセスをAIエージェントに渡しても、プロセスは直らない。単に自動化された壊れたプロセスができあがるだけだ。
機会は、人事の仕事を単に速くすることではない。最も価値を生む仕事、すなわち判断、関係性、創造性、問題解決、難しい意思決定に人材を再配置することにある。
自問すべき3つの問い
次の人事プロセスを自動化する前に、次の3つを自問してほしい。
1. もし今これを一から作るなら、同じように作るだろうか。
2. どの部分が本当に人間の判断を必要とするか。
3. なぜ残りの部分を人間がまだ担っているのか。
「ずっとこうしてきた」は、優れたビジネス上の根拠であったことなど一度もない。そしてAIの時代には、それが最も高コストな根拠の1つになり得る。



