正解のない時代に「未来をひらく」仕事をなし得たビジネスリーダーたちは、自らの行動からどんな言葉を紡ぎ、何を導き出したのか。
本連載ではForbes JAPAN編集長 藤吉雅春が、「名言こそ未来に伝えるべき共有物だ」をコンセプトに、Forbesが過去取材したビジネスリーダーたちの名言をひもとき、われわれの「今日の行動」に転換すべく読み解く。
第16回の今回は、シルク・ドゥ・ソレイユ共同創設者 ギー・ラリベルテの言葉を大幅加筆の上、紹介する。
※なお藤吉雅春 編著『Forbes JAPANが選ぶ 未来をひらく言葉』(だいわ文庫)は、Forbesが過去取材したビジネスリーダーたちの名言の傑作集である。併せてぜひ参照されたい。
Forbesビリオネア常連は「火喰い芸の大道芸人」出身
2027年に東京と大阪での公演が予定されているサーカス「シルク・ドゥ・ソレイユ」は、エンターテインメント集団として世界的に有名である。1984年にカナダで、火喰い芸の大道芸人、ギー・ラリベルテによって創設されたのだが、そのギー・ラリベルテがForbesのビリオネアランキングの常連であることをご存知だろうか。
彼は、ビジネススクールに通った経験はないものの、数々の大規模なビジネス交渉を成功させた人物である。
なぜ、彼はビジネスで成功したのか。
カナダで生まれたギーは、18歳でヨーロッパに渡り、路上生活を送りながら、アコーディオンを演奏したり、火を吹いたりする大道芸人として暮らしていた。路上といってもどこの路上でやるのがいいか、また、誰と友達になり、どういう組み合わせでパフォーマンスをするのがいいか。ベリーダンサーやバイオリニストと即興でコラボレーションを重ねながら、彼は現場のリアルを肌で吸収していった。
そして、どんなことをやれば客が立ち止まり、拍手をして喜ぶのか。彼が路上で培った観察眼の鋭さは、次の言葉に色濃く表れている。
ストリートで鍛えた瞬発的決断力で「路上から大富豪へ」
「初めて誰かと会った時、その人があなたを刺すかもしれないか、それとも友達になるかもしれないかを判断するのに、ほんの一瞬しか時間がないことがある」
路上の縄張り争いなど、リスクと隣り合わせの環境では、一瞬で「対話するか、逃げるか、戦うか」を決断する必要があった。この体験を通じて人間の本質や心理を読む力が鍛えられ、後のビジネス交渉における戦略的思考や対話術の土台ができたという。また、「現地のコミュニティのルールを尊重し、互いに支え合う関係を築く重要性を学びました」と言っている。
パフォーマンス集団を結成した1984年、カナダ政府の記念式典で、100万ドルの予算を提示してきた政府に対して、追加予算を次々と認めさせる提案に成功して最終的に170万ドルの予算を獲得。その公演を大成功に導いた。
そして1990年代に入ると、ラスベガスのカジノ王、スティーブ・ウィンとの大型契約を勝ち取り、常設公演を連日満員のメガヒットへと育て上げる。
2015年、彼は「自分の子供に継がせるつもりはない」として、シルク・ドゥ・ソレイユの次なるグローバル展開を期待して、アメリカの投資ファンド「TPGキャピタル」や中国の投資グループ「復星集団」に株式を売却。彼が得た資産額は17億ドル(2026年時点)。今、カナダを代表する大富豪の一人として、その名を連ねている。路上から大富豪になった、世界的にも珍しい例といえよう。
Forbes JAPAN2018年3月号「100人の名言」より<米国版Forbesなどを参照>



