「スポーツは儲からない」
これは数十年にわたり、日本で語られてきた半ば常識だった。しかし、その理由はガラパゴス化しがちな日本市場の慣習による問題が大きく、「儲かる方程式」を当てはめれば、必ずしも儲からないわけではないことが近年、証明されつつある。
日本のスタジアム・アリーナも長らく、年間数十日の試合日に収益が集中し、それ以外の日は閑散とするという宿命を抱えてきた。
いや、そもそも「事業」ですらなかった。
公共の体育館は、建設は公費、運営は赤字覚悟という構図のもと「箱物行政」の典型と批判されることも多かった。この構図を180度転換させる号砲となったのが、スポーツ庁が旗振り役となった「スタジアム・アリーナ改革」。バスケットボールのBリーグが2021年に「夢のアリーナ」構想を掲げ、今季始まった最上位リーグ・Bプレミアの参入条件に5000席以上のアリーナ確保を盛り込んだことも、整備の動きを後押ししてきた。
船井総合研究所が10月に発表した長崎スタジアムシティ(NSC)、V・ファーレン長崎、長崎ヴェルカの3主体が長崎県にもたらす経済波及効果のリポートは、ジャパネットグループが約1000億円を民間単独で投じた総事業の効果を試算したもので、非常に興味深い。
2026年の年間効果は378.3億円(試算)で、2023年の33.6億円から約11倍に拡大。インパクトのある数字だが、ビジネスの観点から注目したいのは、金額そのものより、その構造だ。リポートはこの民間主導の街づくりを「長崎モデル」と呼ぶ。
「試合日」よりも稼ぐ「非試合日」は本当か
最も示唆に富むのは、年間需要290.9億円を試合日と非試合日に分けた整理だ。試合日の需要は130.9億円、試合がない日は162.2億円で約56%を占め、試合日を上回る。
対照的なのが、「非試合日も人が絶えない」とされる北海道日本ハム・ファイターズの本拠地エスコンフィールド北海道だ。報道によれば、野球シーズンを含む上期(4〜9月)は売上196億円・利益70億円を稼ぐ一方、オフシーズンの下期(10〜3月)は売上74億円、利益は37億円の赤字だという。夏の稼ぎで冬を耐える構造が、ボールパークの経営課題とされている。NSCは、試合のない日の需要が試合日を上回るという、逆の構図を示している。ただし両者は、売上と県内の最終需要という異なる指標で、期間の区切りも「上期/下期」と「試合日/非試合日」で異なるため、厳密な比較はできない。
象徴的なのが商業テナントだ。
その年間売上51.6億円のうち、試合日に生まれる売上は約3割にすぎない。試合もイベントもない267日の日商は、平均で約1,190万円に達する。テナント売上とは別に、オフィス24.6億円、ホテル23.7億円、イベント21.4億円、法人パートナーシップ9.0億円などからなる「その他流通売上」が92.8億円ある。試合日程と無関係に毎月積み上がる収益だ。



