経営・戦略

2026.11.01 07:41

取締役会の新たな課題、AI支出をどう統制するか

Adobe Stock

Adobe Stock

BRANDVOICE | Paid Program

もっと見る>

業界を問わず、企業はAIツールに資金を注ぎ込み、従業員もそれを受け入れている。アトラシアンの2026年版レポートによると、現在、ナレッジワーカーの85%がAIを利用している一方で、AIが自分の働き方を根本的に変えたと答えた人は29%にとどまる。

ビジネスリーダーにとって、このギャップははるかに大きな問いを投げかける。これほどの投資はどこに向かっているのか。そして、それは実際に意味ある事業成果を生み出しているのか。

現時点では、多くの企業がそれを把握していないと、アトラシアンでAIネイティブの戦略的ポートフォリオ管理ソリューションであるStrategy Collectionのプロダクト担当シニアバイスプレジデントを務めるアシャ・トゥルティ氏は言う。AI(そしてそれを支えるコンピューティング資源)は、企業投資の主要カテゴリーへと急速に拡大している。それにもかかわらず、多くの組織は、そうしたリソースがどこに使われ、戦略的優先事項をどう支え、測定可能なリターンを生んでいるのかを可視化できていない。

それはガバナンス上の問題だとトゥルティ氏は指摘する。AI投資が人材や財務リソースとどのように連動し、事業成果を生み出しているのかを明確に把握できなければ、リーダーは帳簿上の大きな新規支出項目の1つを効果的に統制できない。

「もはや、人材、人員数、人件費だけの問題ではない」と彼女は言う。「今やAIコストも含まれる。人間の資本とAIの資本が一体となっている。その統合された投資は、本当に重要な優先事項を前進させているのか」

問題の背景にある数字

アトラシアンの別の調査は、AIがビジネスのスピードを加速させ、リーダーにより迅速な意思決定を迫っているにもかかわらず、多くの組織が依然として異なる時代に合わせてつくられた資金配分モデルで運営されていることを示している。

アトラシアンが調査した大企業のシニアリーダー308人のうち、42%はいまだに固定的な年次予算編成に依存しており、さらに36%は成果物にひもづくプロジェクトベースの資金配分を用いている。合わせると、10社中ほぼ8社が、戦略が年に1度変わる世界を前提に設計された資金配分モデルで運営されていることになる。優先事項が週単位、あるいは日単位で変化する世界ではない。「戦略はもはや、リーダーが設定して後は忘れてよいものではない」とトゥルティ氏は言う。

リーダーたちに戦略的業務への資金配分方法を尋ねると、その断絶はさらに明確になった。優先事項の変化に応じて投資を動かせる、動的で成果ベースの資金配分モデルを利用していると答えたのはわずか8%だった。一方で、92%はその能力が必要だと認めている。「これは私たちの調査で最も大きなギャップの1つだ。言っていることと、実際にしていることの差である」とトゥルティ氏は言う。「そして、それこそがAIガバナンスに求められる力だ」

3つのシステム、共有された視点なし

この断絶は、企業が3つの主要なコストセンターを追跡する方法に起因している。人事部門は労働力を管理し、財務部門は予算を追跡し、IT部門はAIツールと処理能力への支出を管理する。

この3つを横断して単一の視点を持つ企業は少ない。そのため、経営層が優先事項を変更しても、人材、予算、AIリソースの再配分は遅く、断片的になりがちだ。結果として、投資が企業の目指す成果を支えているのかを理解することが難しくなる。

AIが企業全体に組み込まれるにつれ、人材、予算、テクノロジーを別々のシステムで統制することは「ますます持続不可能になっている」と、アトラシアンの最高人材・AIイネーブルメント責任者であるアヴァニ・プラバカー氏は言う。

「計画、業務、投資成果はしばしば別々の場所に存在し、共有されたリアルタイムの文脈がない」とプラバカー氏は言う。「AIが意味ある洞察を提供するには、統一されたシステムからの生きたシグナル、つまり共有されたコンテキスト層が必要だ。AIが分断されたシステムをまたいで推論することを強いられると、リーダーにとって最も重要な問いに答えられない」

アトラシアンの調査もこの点を裏づけている。組織のシステムがどれほど統合されているかを示すドメイン接続性は、AIの有効性を予測する最も強い要因であり、ツールの選定、利用状況、投資水準を上回っていた。

「本当の信頼ギャップは、AIモデルの品質だけにあるのではない」とプラバカー氏は言う。「AIが活用できる、接続されたオペレーティングモデルを組織が持っているかどうかにある」

アトラシアンは、ITチームと人材チームに加え、戦略的イニシアチブ、エンジニアリング、カスタマーサポートを1人のリーダー、つまりプラバカー氏の下に統合することで、このアプローチの利点を身をもって経験している。

「私たちは今、人材、予算、テクノロジーを単一の信頼できる情報源を通じて管理できるようになり、自社の文化とテクノロジーの双方の潜在力を最大限に引き出している」とプラバカー氏は言う。「また、私たちはデフォルトでオープンに働き、すべてをつなげるという原則に基づいて運営している。つまり、AIが企業全体に組み込まれていく中で、私たちの組織的記憶は豊かで、最新で、AIがアクセスできるものになっている」

サイロから1つのシステムへ

このギャップを埋め始めている組織は、AIとコンピューティング資源をポートフォリオレベルのリソースとして扱い、接続されたオペレーティングモデルの中で、人材や財務資本と並べて統制している。

「動的で成果ベースのオペレーティングモデルは、企業リーダーにとって最も重要なものを結びつける。優先事項、目標、投資、成果、責任を負うチーム、人材、AIの利用状況、業務が、単一の生きたシステムの中に収まる」とプラバカー氏は言う。「このモデルを真に動的にしているのは、組織が方向転換できる能力だ。優先事項が動けば、組織は迅速に反応し、人材、予算、テクノロジーリソースを最も重要なものへと移すことができる」

この接続性によって、リーダーは統一された視点がなければ答えにくい問いに答えられるようになる。例えば、次のような問いだ。

  • この取り組みへの資金を削減した場合、どの目標、チーム、システムが影響を受けるのか。
  • キャパシティに対して過剰にコミットしているのはどこか。どのようなポートフォリオの見直しが戦略的リターンを高めるのか。
  • 最優先の取り組みを可能にするにはどのようなスキルが必要か。既存の人材を再配置できるのか。

トゥルティ氏が強調するのは、この変化は可視性に関するものであり、人員の問題ではないということだ。「これは人間かAIかという話ではない」と彼女は言う。「問うべきは、AIが組織内の人々をどのように補強し、組織が戦略から実行までのライフサイクル全体をより速く進められるようにするのか、ということだ」

人材、投資、AIを単一のオペレーティングモデルの中でつなげる組織は、より速く動き、情報に基づいた意思決定を下しやすくなる。一方で、それぞれを別々に管理する組織は、AI投資のリターンを理解することに引き続き苦労するだろう。

アトラシアンは同じ考え方を社内にも適用し、自社のガバナンス慣行を進化させている。人間とAIのキャパシティ計画を担当するディレクター職の新設や、チームがAIを一貫して透明性をもって利用できるよう支援する責任あるテクノロジー指針の公開などが含まれる。

こうした接続された視点がなければ、AIの統制は大部分が推測に頼るものになる。逆にそれがあれば、リーダーは人材や財務資本に適用しているのと同じ厳格さで、AI投資を管理し始めることができる。

「成功する組織は、人材とテクノロジーへの投資を単一で統合されたコミットメントとして扱い、AIスキルの開発とテクノロジーの導入が一体で進まなければならないことを認識するだろう」とプラバカー氏は言う。「そして、ガバナンスにも重点を置く。信頼は譲れない条件だからだ」

(forbes.com 原文)

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事