AI時代には、批判的思考(クリティカルシンキング)と判断力が重視されると各社は言う。しかし社員側が、AIイニシアチブに異を唱えれば、抵抗勢力、時代遅れ、進歩の障壁というレッテルを貼られると考えているかぎり、こうした能力はほとんど意味をなさない。健全なAI文化は、全面的な熱狂であってはならない。社員が「このツールは未熟だ」「このアウトプットはどこかおかしい」「この情報をこのシステムに取り込ませるのはまずい」と言える余地を残しておかなくてはならないのだ。
同じ原則は、採用にもあてはまる。応募者の半数近くが「自動化されすぎたプロセスからは身を引く」と語っている以上、雇用者は、効率化を重視した結果として、「優秀な人材を発見し獲得する」という採用本来の目的が損なわれていないかを、十分に考慮する必要がある。
抵抗がサボタージュに変わるとき
だからといって、社員の抵抗はすべて建設的なものというわけではない。社員がAI導入を意図的に妨害し、合理的な変化を拒み、協力せず、「テクノロジーが実現することが気に食わない」というだけの理由でイニシアチブを頓挫させる場合もある。リーダーは、単なる個人的な不満に基づいて、必要なイノベーションに対して拒否権を行使することを許してはならない。
しかし、広範な抵抗を「サボタージュ」と拙速に決めつけることも、また危険だ。幹部が、社員からの異議を忠誠心の欠如と捉え、真の問題に気づいている社員を軽視することにつながりかねない。
有効なアプローチの一つは、抵抗を反逆とみなす前に、いったん診断情報として捉えることだ。社員に対して、何が失われると考えているのか、尋ねてみよう。プライバシー? 自律性? プロフェッショナルとしてのアイデンティティ? 雇用の安定? 自身の仕事に対する評価へのコントロール? それとも、AI生成のアウトプットに対する信頼性への確信?
こうした問いへの答え次第で、リーダーが対処すべき問題が、チェンジマネジメントなのか、技術的脆弱性なのか、正当な倫理的懸念なのかがわかる。
「AIへの抵抗」にリーダーはどう対処すべきか
企業はAIシステムの導入を、決定したあとに発表するのではなく、早い段階で社員を巻き込むことで、有害な抵抗を抑えることができる。テクノロジーが何に使われ、何に使われないかを理解している社員は、情報の空白を最悪のケースの想定で埋める可能性が低いからだ。


