AIへの抵抗は採用プロセスにも
AIへの抵抗は、現在給与を受け取っている人々に限った話ではない。求職者たちは、採用プロセスが過度に自動化されていると感じた場合、その企業を敬遠する傾向を強めている。
通信事業者NumberBarn(ナンバーバーン)が実施した全米調査によると、回答者の約3分の2(65%)が、過去1年間の応募や面接においてAIまたは自動化システムと接していた。そして、過去1年以内に少なくとも一つの求人に応募した米国人のうち48%には、採用プロセスが自動化されすぎている、あるいはAIに依存しすぎているという印象をもったために、選考を辞退した経験があった。
この調査結果は、採用プロセスの自動化を推進する企業にとっては重い警告だ。AIは、採用を迅速かつ安価なプロセスに変える可能性はあるが、過度の自動化は、応募者が「自分と顔を合わせることに、誰も関心をもっていない」と感じることにつながりかねない。たとえ効率的な採用プロセスだとしても、優秀な候補者が自発的にそこから離れているのでは有益とはいえない。
加えて、信頼を毀損している原因は自動化だけではない。先の調査では回答者の69%が、自身が応募したポジションは、実際にはそもそも空きがなかったのではないかと疑ったと答えた。この現象は、一般に「ゴーストジョブ」と呼ばれている。回答者の6割以上(61%)が求職の経験を通じて、雇用者への信頼は1年前よりも低下したと答え、56%は採用プロセスの扱いを見て、その企業への応募を考え直したと答えている。こうした事態からは、働き手と雇用者のあいだの信頼問題に発展しつつあることがわかる。
候補者は、AIによって採用プロセスがよりインテリジェントで効率的なものになると聞かされるが、その一方で多くの人が、自動化面接、アルゴリズムによるスクリーニング、応募後の音沙汰なしの対応、実在が不確かな求人といった状況を経験している。一方、雇用者側は、膨大な数の応募や、AI生成の履歴書、ますます高度化する「自動化された応募」への対処を迫られている。双方がテクノロジーを利用して、相手から身を守ろうとしており、結果として、採用プロセスから加速度的に人間的要素が失われるおそれがある。
抵抗も盲従もキャリアのリスクに
社員たちは、難しい舵取りを強いられている。AIにあまり強固に抵抗すれば、変化に消極的とみなされるおそれがある。かといって手放しに受け入れれば、ミスやプライバシー侵害、誤った意志決定といったリスクを抱える。こうした背景から職場にパラドックスが生じている。いま企業が真に必要とする社員とは、違和感を覚えた際に、AIに対して躊躇なく異を唱える社員かもしれないのだ。


