新たな戦術は、すでに戦場で効果をあげ始めているとみられる。先に挙げた動画には、この戦術を用いてアニシュチネ方面に進撃するウクライナ軍の様子が映っている。この攻撃により、ウクライナ軍の支配領域は幅にして3km超広がったと報告されている。これに先だつ9月30日に報告された別の作戦では、コード9.2連隊がこの戦術を用いて、ビリフバトカ付近の建物を占拠するロシア軍歩兵を攻撃したもようだ。
これらの作戦は、装甲車両の火力とドローンによる防護を組み合わせることで、ウクライナ軍がロシア軍の防御をより迅速に打ち破り、大きな戦果に向けた機会を得られる可能性があることを示している。
新戦術が戦場に及ぼす長期的な影響
ウクライナ軍による装甲車両の再投入を受けて、ロシア軍は防御戦術の見直しを迫られる可能性がある。地雷原や対戦車障害物の敷設、対装甲兵器の集中配備といった、より従来型の防御手段が必要になるかもしれない。こうした手段はウクライナ軍の装甲部隊の機動を難しくするだろう。一方でロシア軍も固定陣地の防御に追加の資源を割かざるを得なくなり、その結果、作戦面の柔軟性が損なわれたり、攻勢作戦の遂行能力が制限されたりする可能性もある。
ロシア軍はおそらくウクライナ軍の戦術を模倣しようとするだろう。これまでロシア軍も装甲車両を戦場に復帰させようとしてきたが、成果が限られていることを踏まえればなおさらである。こうした戦術の一部の要素はロシア軍ですでに導入されている。たとえば、ドローンを用いて徒歩兵の移動通路をつくり出しているほか、一部の車両にハリネズミ装甲を施している。ウクライナ側と同様の戦術を採用すれば、ロシア軍も強襲作戦に必要な火力と防護を補強できる可能性がある。
こうした戦術がどのくらい有効なものになるかは、どちらの側が局所的なドローン優勢を確立できるかに大きく左右されるだろう。ウクライナもロシアも、自軍の装甲車両を防御したり敵軍の装甲車両を攻撃したりするため、速度や機動性、威力を高めたドローンを開発していくと考えられる。この競争により、攻撃用ドローンと防御用ドローンは引き続き性能を向上させていくことになる。
この戦争を通じて、戦車をはじめとする装甲車両の運用はドローンによって著しく制約されるようになった。とはいえ、装甲車両が時代遅れになったわけではない。局所的なドローン優勢を確立した側は、限定的ながら装甲部隊による機動作戦を再開し、相手側にはそれをさせない状況をつくり出せる可能性がある。


