世界保健機関(WHO)は22日、これまで動物でのみ感染が確認されていた昆虫媒介ウイルス、シャモンダウイルスに感染したフランス人1人が死亡したことを確認したと明らかにした。フランス当局は、現時点では一般市民に公衆衛生上のリスクをもたらすものではないとしている。
WHOによると、シャモンダウイルスは通常、牛、馬、羊などの家畜に感染する。ヌカカ(糠蚊。蚊に似ているが、蚊とは別の仲間)と呼ばれる吸血昆虫に刺されることで感染するが、これまでヒトに感染した事例は報告されていなかった。
フランス農業・食料省と保健省は22日、共同でこの死亡事例を公表。患者は「重度の免疫不全」状態の人物で、「重篤な病状」のため仏リヨンの病院で治療を受けていたが、10月上旬に死亡したと説明した。
シャモンダウイルスは1960年代にナイジェリアで見つかったウイルスで、これまでにアフリカのほか日本で確認されている。今年初め、欧州の牛の群れで初めて、ゲノムの90%をシャモンダウイルスと共有する類似ウイルスが検出されていた。
WHOのテドロス・アダノム・ゲブレイェスス事務局長は22日、フランス当局と協力して「考えられる感染経路」や一般市民への潜在的なリスクの有無を調査していると述べた。
日本でも牛に感染、シャモンダウイルスとは
シャモンダウイルスは1965年にナイジェリアの牛から初めて検出された。その後、アフリカ大陸全域で確認され、日本でも牛への感染例が報告されている(編注:日本では2002年、2024年に報告がある)。仏農業・食料省によると、これまでヒトへの感染例は報告がなかった。
8月に米科学誌『サイエンス』のウェブサイトに掲載された記事によれば、欧州の牛から検出された類似ウイルスの遺伝子検査では、シャモンダウイルスとゲノムの90%を共有していることが確認された。研究者らはこれを「シャモンダ様ウイルス」と表現している。
感染経路は?
シャモンダウイルスは通常、吸血昆虫のヌカカに刺されることにより、家畜の群れの間で感染が広がる。公衆衛生当局者は、ヒトへの感染経路としても現時点ではヌカカが有力な仮説だと述べている。
死亡した患者は、今年春から夏にかけて家畜の間でウイルス感染が確認されていたフランス東部に滞在していた。フランスの専門家は、Culicoides属のヌカカに刺されたことで感染した可能性があるとみている。
ヒト感染する近縁ウイルスとの類似点も
シャモンダウイルスは、蚊やヌカカなどの吸血性節足動物によって媒介されるオルソブニヤウイルス属のウイルスだ。オルソブニヤウイルス属には、ヒトに感染して病気を引き起こすウイルスが含まれている。
米疾病対策センター(CDC)によると、シャモンダウイルスと同様にヌカカに刺されることで感染するオロプーシェウイルスは、ヒトが感染するとオロプーシェ熱という急性熱性疾患を発症する。南米、中米、カリブ海沿岸で流行が確認されている。
仏農業・食料省は22日に発表した別の声明で、シャモンダウイルスのヒト感染例には、オロプーシェウイルスのヒト感染の症例と「類似点がある」と報告。一部の患者に神経学的症状を引き起こす可能性があることを指摘した。



