ドナルド・トランプ米大統領は、制裁対象となっていたロシア産ディーゼル燃料(軽油)を国際市場に再投入する方針について、市場の信頼回復に向けた措置と説明している。だが、市場の取引心理を大きく変える可能性は低いとみられる。
同大統領は11日、ウクライナ侵攻を理由にロシアに科された軽油の輸出に対する制裁を一時的に解除することで、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と合意に達したと発表した。トランプ大統領はさらに、プーチン大統領が30万トンの軽油を「米国を含む国際市場へ直ちに」供給することに合意したと述べた。これに続き、11月には50万トン、12月には100万トンが供給される予定だ。
米エネルギー省の報道官は、市場の信頼回復に向けた措置には、ロシアの軽油輸出に対する制裁を2027年4月7日まで停止することが含まれると説明した。ただし、他の部門に対する制限は継続される。ロシアはこの合意を認めたが、輸出予定量については明らかにしなかった。
トランプ大統領の制裁解除には批判も
この動きは、欧州連合(EU)の主要加盟国や英国などからの批判を招いた。当然のことながら、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領も、これは「プーチン大統領への贈り物」だと非難した。同大統領はソーシャルメディア(SNS)に次のように投稿した。「われわれはウクライナ人の命を守るための取り組みに対し、米国の公正な支援を期待している。また、同国がロシアに対して力強い姿勢で対話することも期待している。弱腰ではなく、力強い姿勢だ」
一方、トランプ大統領は自らの立場をさらに強硬にし、ゼレンスキー大統領のみならずEUに対しても怒りの矛先を向けた。トランプ大統領は、ウクライナには新しい大統領が必要だと皮肉を飛ばしたほか、EUはこれまでロシアからエネルギー資源を調達するために数十億ドルを支払ってきたと指摘した。「EUはエネルギー資源の対価としてロシアに2500億ドル(約39兆円)を支払ってきたが、『フェイクニュースメディア』はこの話には触れたがらない。私は米国民のために正しい選択をしたのだ」
制裁解除が軽油市場に与える影響はなぜ限定的なのか
一見すると、ロシアが合意した軽油の供給量は相当な規模に思えるかもしれない。最初の30万トンは約225万バレルに相当し、続いて50万トン(約375万バレル)、さらに12月には100万トン(約750万バレル)が供給されることになっている。合計すると、約1350万バレルになる。しかし、仮にその全量が米国に輸出されたとしても、米国内の軽油需要は日量平均約370万バレルであることを鑑みると、消費者向けの販売価格が直ちに下がる可能性は低い。
もう1つ、留意すべき点がある。ロシアの製油所が実際にこれほどの量を輸出に回せるかどうかという疑問だ。同国は第1四半期まではかなりの規模の軽油を輸出していたが、第3四半期には純輸入国へと転じた。
この要因の1つは、ウクライナ軍によるロシアの製油所への攻撃だ。これにより、首都モスクワを含むロシア各地で燃料の供給不足が発生した。その結果、夏場の需要のピーク時には、燃料を輸出に回すのではなく、国内消費用に向けざるを得なくなった。ウクライナ側は、これまでにロシアの製油能力の45%を停止させたと主張している。したがって、ロシアが合意した輸出量の約束を果たすには、ウクライナ軍の攻撃停止が唯一の条件となるだろう。
米国内のガソリンスタンドでの軽油の販売価格は、1ガロン(約4リットル)当たり6ドルを上回ったままだ。中間選挙を控え、国内の有権者を安心させることを目的としたトランプ大統領のこうした信頼醸成の動きが、現在の軽油の価格水準を変える可能性は低いだろう。ただし、イランとの紛争に終止符を打ち、中東に永続的な平和をもたらし、さらにロシアとウクライナの停戦につながるような解決策が見いだされれば、話は別だ。



