多くの人は、より大きな自由を求めて事業を立ち上げる。しかし時間の経過とともに、一部の創業者はそれとは真逆の状態を作り出してしまう。創業者への依存度が高すぎるあまり、創業者自身が現場を離れれば意思決定が滞り、問題が悪化し、収益が損なわれるような会社にしてしまうのだ。
長期の休暇を取ったり、他の物事に意識を向けたりしている間も事業が機能し続けるのであれば、あなたは自身により大きな自由をもたらすものを生み出したことになる。単に際限なく時間とエネルギーを要求される「もう一つの仕事」を作ったのではない。
日常業務への関与の度合いは、将来の選択肢にも影響を与える。最終的に引退したい場合でも、会社を売却したい場合でも、経営権を委譲したい場合でも、あるいは単純に業務の監督に費やす時間を減らしたい場合でも、創業者による常時の関与なしで事業が成功できる状態でなければならない。買収を検討する企業や投資家は、現在の収益力だけでなく、創業者が退いた後も人材やシステム、顧客関係が維持されるかどうかを見極めている。
成功の一端は、自分がいなくても組織がどれだけの意思決定を下せるかによって測られる。
会社が現在において自身により大きな自由をもたらし、将来にわたって高い価値を保ち続けることを望むなら、リーダーシップにおける4つの転換が不可欠となる。
「問題解決者」から「リーダー育成者」への転換
多くの創業者は意図せず、自社におけるボトルネックになってしまっている。重要な問いはすべて創業者に持ち込まれ、あらゆる決定に創業者の承認が必要となる。その結果、創業者が不在になるたびに前進が滞ることになる。
他者から必要とされることは、力強いリーダーシップの証のように思えるかもしれない。しかし時には、周囲のメンバーにリードするための十分な権限や実践の機会が与えられていないことを露呈しているにすぎない場合もある。
自社の成長に伴い、筆者は自ら問題を解決することから、他者がより優れた問題解決者になれるよう支援することへと徐々に舵を切ってきた。幹部から意思決定を求められた際、筆者はよく「君が私の立場ならどうするか」と問い返す。
常に答えを与えるのではなく、自社のリーダーたちが状況を見極め、自身の判断を信頼し、結果に対する当事者意識を持てるようコーチングすることを心がけている。筆者の目標はもはや「すべての答えを持っていること」ではない。自分を待つことなく答えを見つけ出せるリーダーを育てることだ。
自問してみてほしい。もしあなたがすべての質問に答えるのをやめたら、チームは行き詰まるだろうか、それとも成長し始めるだろうか。
組織の知見を保持する仕組みをつくる
組織において人は去り、また新たな人が入ってくる。創業者でさえ一時的に離脱したり、役割を変えたり、引退したりする。重要な知見が誰かの記憶の中にしか存在しないのであれば、会社は脆弱な状態のままだ。
強固な企業は、文書化されたプロセスの上に成り立っている。当社の各部門は、筆者たちが「インデックスファイル」と呼ぶものを維持管理している。図書館の目録が本を探すのに役立つのと同じように、このインデックスは社員が業務に関連する文書、SOP(標準作業手順書)、リソースを見つけるのに役立つ。
どのようなフォーマットを使用するかは、その仕組みが機能しているかどうかに比べれば重要ではない。チームのメンバーが、必要な情報を見つけ、次のプロセスを理解し、誰かからの説明を待つことなく定常的な業務を遂行できるようになっているべきなのだ。
しかし、自身が現場を離れてみるまでは、それらの仕組みがどれほど強固であるかは本当の意味ではわからない。
筆者は最近、2カ月以上にわたってアジアを移動して過ごした。筆者の不在中も、チームはフランチャイズ支援、研修の実施、財務の検証、マーケティングの管理、新規拠点の立ち上げ支援を継続した。ありがたいことに、筆者が異なるタイムゾーンにいたからといって事業が停止することはなかった。
自社について考えてみてほしい。仮にあなたや主要な従業員が30日間にわたって不在となった場合、何が計画通りに機能し続け、どこにほころびが生じ始めるだろうか。その答えが、どの仕組みにまだ注意を向ける必要があるかを教えてくれるはずだ。
状況に迫られる前に責任を委譲する
創業者が権限の委譲を始めるのは、個人の危機に直面したときや、引退について本格的に考え始めたときに限られることが多い。しかし、そうした事態が生じた時点では、プレッシャーの中で長年積み重ねてきた責任を一度に譲渡しようとすることになりかねない。
効果的な引継ぎが一夜にして完了することはめったにない。権限の委譲は緊急対応ではなく、継続的なリーダーシップの実践であるべきなのだ。
まずは一つの責任から始めよう。リーダーの一人に、それを処理するための背景情報、ツール、権限を与える。指導できるよう待機しつつも、自分のやり方とは異なる方法で実行されたからといって、すぐに仕事を奪い返してはいけない。その責任の委譲が定着したら、次の責任を委譲する。
クロストレーニング(多能工化)もまた、自社の仕組みが本当に有効かどうかを明らかにする。従業員が異なる職務をローテーションしたり、本来の役割以外の業務を学んだりすることで、不足している情報や不明確な手順を特定するのに役立つ。同時に、企業はより有能で多角的なチームを育成することができる。
過去数年間にわたり、筆者は意図的に多くの日常業務から身を引いてきた。経営陣が責任を一つ引き受けるたびに、組織のレジリエンス(適応力・回復力)は高まっていく。
自身の責任を改めて精査してみてほしい。中には本当にあなたの関与を必要とするものもあるだろう。一方で、他に引き継ぐ準備ができていないというだけの理由で手元に残っているものもあるはずだ。その違いを認識することこそが、効果的な権限委譲の出発点となる。
自身がいなくても存続するものでレガシーを定義する
創業初期における課題は、多くの場合、生存と成長に関するものだ。どうやって収益を上げるか。どうやって顧客を増やすか。どうやって事業を拡大するか。
企業が成熟するにつれて、問いもともに成熟すべきである。次世代のリーダーをどう育てるか。どの責任を移管できるか。どのようにシステムを強化できるか。日常業務における自らの必要性をどのように下げていくか。
創業者のレガシーとは、単に会社の名前や規模、所有構造だけを指すのではない。育成された人材、守られた企業文化、そしてミッションとビジョンを未来へと推し進めるために構築されたシステムこそが、レガシーなのだ。
最終的に、リーダーシップとは、いずれ自分以上に組織をうまく率いることができる将来のリーダーたちを育成することだと筆者は考えている。どのような創業者であれ、いつか最後の日を迎えてオフィスを去るときが来る。その時に会社が動揺するのか、それとも確信を持って前進し続けるのかは、その日が訪れる前に完了させた取り組みに大きく依存する。
今日、会社が自分を必要としているかどうかを考えるのではなく、自身のリーダーシップが「自分がいない明日」の成功に向けて準備を整えられているかどうかに意識を向けることをお勧めしたい。



